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第2回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2015.7.11-12
テクノロジー・遺伝子・芸術 -進化の足跡を辿り、現代文明とその未来を考える-(終了)

第2回KUIP開催イメージ

2015年7月11、12日、百周年時計台記念館において、第2回「京都大学-稲盛財団合同京都賞シンポジウム」(KUIP:Kyoto University–Inamori Foundation Joint Kyoto Prize Symposium)を開催しました。

第2回目となる2015年は、一般市民、学生、研究者など2日間合わせて約650名の参加者のもと、「テクノロジー・遺伝子・芸術 ―進化の足跡を辿り、現代文明とその未来を考える―」を統一テーマに、それぞれの分野における12名の世界的トップランナーによって、学術界と社会の双方から注目されているテーマについて、研究者も満足できる内容を一般の方々にも興味深く聴講いただけるよう工夫された内容で語られました。

初日は「最先端エレクトロニクス」をテーマとして、ハリー・A.・アトウォーター(Harry A. Atwater)米国カリフォルニア工科大学教授、松波弘之京都大学名誉教授、小野崇人東北大学工学研究科教授、ルール・バーツ(Roel Baets)ベルギーゲント大学教授・Interuniversity Microelectronics Center教授、北村恭子京都工芸繊維大学大学戦略推進機構系グローバルエクセレンス講師(若手研究者)の5名の講師がエレクトロニクス分野に登壇しました。

2日目の午前は「人類進化研究の最前線:遺伝子・化石・認知」をテーマに、スバンテ・ペーボ(Svante Pääbo)ドイツマックス・プランク進化人類学研究所教授、エシュケ・ウィラースレフ(Eske Willerslev)デンマークコペンハーゲン大学教授・英国ケンブリッジ大学教授、諏訪元東京大学総合研究博物館教授、平田聡京都大学野生動物研究センター教授の4名の講師が生物科学分野に登壇、午後の音楽分野では「音楽の20世紀、そして21世紀」をテーマに、近藤譲お茶の水女子大学名誉教授・作曲家、三輪眞弘情報科学芸術大学院大学教授・作曲家、中川俊郎日本現代音楽協会副会長・日本作曲家協議会常務理事・お茶の水女子大学非常勤講師・作曲家・ピアニストの3名の講師、ヘルマン・ゴチェフスキ(Hermann Gottschewski)東京大学総合文化研究科教授がコメンテータとして登場したほか、3名の演奏家によるデモンストレーションも行われました。

その後、クロージング・セッションでは、「シンポジウムの総括と将来展望 ―統一テーマの視点から―」と題して、各分野を代表する登壇者と本シンポジウムの企画を行った本学教員に加えて、山極壽一京都大学総長が進行役として登壇しました。山極総長のシンポジウム全体を通じての感想と問題提起を基に、人類の遠い将来について、互いの講演を踏まえながらそれぞれの専門分野を超えたディスカッションが行われました。

聴講者からは、「このシンポジウムについて今まで知らず、もったいないことをしました。音楽分野のコンサート素敵でした」、「非常に詳しい内容の話を一般人が理解できるよう説明されていたことに感謝します」、「生物科学のセッションは山極総長の質問と登壇者の応答がエキサイティングだった」、「素晴らしい企画に感謝しています」といった感想が寄せられました。

1日目2015.07.11

オープニング・セレモニー

「テクノロジー・遺伝子・芸術
-進化の足跡を辿り、現代文明とその未来を考える-」

オープニング・セレモニー

先端技術部門「エレクトロニクス」

高効率太陽光発電技術、パワーエレクトロニクス、微小機械(マイクロマシーニング)、さらには光と電子の融合技術(シリコンフォトニクス)や最先端レーザーなど、エレクトロニクスの最先端技術を俯瞰します。

「エレクトロニクス」

登壇講師

ハリー A.アトウォーター (Harry A. Atwater) 米国 カリフォルニア工科大学 教授
「高効率太陽光発電のためのフォトニック設計」
松波 弘之 (京都大学 名誉教授)
「パワー半導体デバイス -電気エネルギー有効利用の主役-」
小野 崇人(東北大学 工学研究科 教授)
「融合マイクロシステム -小さな機械で感じる,見る,測る-」
ルール バーツ (Roel Baets)
(ベルギー ゲント大学 教授/ Interuniversity Microelectronics Center(imec) 教授)
「フォトニック集積回路 -インターネットとライフサイエンスの飛躍的発展に向けて-」
北村 恭子 (京都工芸繊維大学 大学戦略推進機構系グローバルエクセレンス 講師)
「フォトニック結晶レーザによる新奇ビームの発生」

2日目2015.07.12

基礎科学部門「生物科学」

最先端の遺伝子研究から見えてきた現生人類とネアンデルタール人の関係やアメリカ先住民の起源、新たな古人類化石の発見や類人猿との比較認知研究など、最前線の研究成果から人類進化を考えます。

「生物科学」

登壇講師

スバンテ ペーボ (Svante Pääbo) ドイツ マックス・プランク進化人類学研究所 教授
「古DNA研究 -つつましい始まりから高品質ゲノムの復元まで-」
エシュケ ウィラースレフ (Eske Willerslev)
デンマーク コペンハーゲン大学 教授/英国 ケンブリッジ大学 教授
「人類はどのように世界に広まり文化的・生物学的多様性を形成したのか?」
諏訪 元 (東京大学 総合研究博物館 教授)
「化石の記録から人類の起源に迫る -仮説構築と検証を重ね-」
平田 聡 (京都大学 野生動物研究センター 教授)
「チンパンジーとボノボの社会的知性 -人間の心の進化的起源の探求-」

思想・芸術部門「音楽」

京都賞は科学の諸部門ならびに思想と並び、芸術/音楽の分野を設けている点で、世界に例を見ない学術賞です。これはすなわち、音楽を単なる娯楽ではなく、科学や思想と同じく一つの「知」の営み、つまり「認識の営為」と見做すことを意味します。このシンポジウムでは現代の音楽創作の最先端にいる音楽家たちを招き、講演、デモンストレーション、演奏、討議を通して、音楽の20世紀とは何であったかをふりかえり、そして21世紀を考えます。

「音楽」

音楽部門では、まず作曲家の近藤譲氏より、従来の(19世紀的な意味での)「音楽」概念が、20世紀に入って解体されていくプロセスが、実演を交えて示された。伝統的に音楽は宗教儀礼などに伴うものであり、その「意味」は他律的に外部より与えられてきたが、19世紀を中心とする近代において音楽は、外部の何物にも頼ることなくして、それ自身にそれ自身で意味を与える自律的な構造を追求するようになった。その際の最も重要な手段が調性であった。しかしながら20世紀の作曲家たち、とりわけ第二次大戦後のいわゆるトータル・セリーのそれは、極めて厳格な方法論により、意図的に中心音が生じない(調性感が生まれない)作品を追求するようになる。結果として音楽は再びその意味を外部に、他律的に求めるようになり始めた。いわゆる現代音楽の作品がしばしば、それ自体が自立した狭義の「作品」というよりも、特定の理論の「サンプル」のような性格を帯びるのは、その一例であろう。

次いで作曲家の三輪眞弘氏の講演では、宗教からいったん近代において自律した音楽が、現代において再び自律性を失いつつある今日にあって、いかに音楽創作に単なる作曲家の主観ではないような客観性を担保することが出来るかという問題意識を出発点として、再び広義の意味での「宗教」にその拠り所を探ることの可能性が論じられた。それに際しては、実演を交えつつ、二つの試みが示された。一つは「数」にある種の宗教的ともいえる客観性の保証を模索するアルゴリズミック・コンポジション(セルフフィードバック・システムによって自動生成されたピアノ曲の実演映像を伴う)。もう一つは、三輪氏が「電気文明」と呼ぶテクノロジーの総体を、現代におけるある種の宗教儀礼と捉える方向の示唆。後者の例として、MIDIアコーディオンによって人工合成される歌によるG・B・ペルゴレージの宗教曲が実演された。

中川俊郎氏は作曲家であると同時に卓越したピアニストでもあるという立場から、20世紀の音楽を実演リサイタルを通して俯瞰する試みがなされた。ただし冒頭では敢えて18世紀前半に生きたバッハの『14のカノン』からの抜粋が演奏され、それによって20世紀以後の「人間」の変貌が鮮やかに逆照射された。バッハ作品においては作曲家という「個人」の「表現」としての音楽はまったく問題にならない。そこでの音楽は(三輪氏も強調していたよう)神への進物であり、「数」的なものが表現の客観性を担保し、そして数は神が創造した調和して美しいものであるはずだということが前提とされている。バッハに続いて演奏されたのはJ.ケージ(第五回京都賞受賞)、O.メシアン(第一回京都賞受賞)、近藤譲および中川氏自身の作品が演奏された。中川氏の作品は二曲あり、最新作は一種のダダイズムともいうべき騒音なども駆使したもの、もう一曲は骨髄バンクのCMとしても使われた『ひまわり』という調性による「美しい」作品。この対照により、もはや美しくはない世界において、それをそのままに認識するか、それとも敢えてなお何らかの美しさを希求するか、という困難な二者択一の前に立たされている現代の作曲家の状況が浮き彫りにされた。

ヘルマン・ゴチェフスキ氏は、時間/音楽/人間の生という問題が中世以来のヨーロッパにおいても再三さまざまな図像や建築などにおいて主題化されていたことを、ハインリッヒ・ゾイゼの『HorologiumSapientiae』ストラスブール大聖堂の時計やなどを例に示した。人間集団の知の中心(教会や大学など)には常に時計があり、それは音楽を伴って時間を人間に告知し、生と死のリズムを作り出すものであった。このコメントによって、大学の時計台という場に集まり音楽を通して世界と人間について思考を巡らすという営みの意味と普遍性が、オーディエンスには強く印象づけられた。

登壇講師

近藤 譲 お茶の水女子大学 名誉教授/作曲家
「現代音楽における自律的芸術作品の解体、又は、音楽言語の外在化」
三輪 眞弘 情報科学芸術大学院大学 教授/作曲家
「新しい宗教音楽 -電気文明における芸術の可能性-」
中川 俊郎
(日本現代音楽協会 副会長/日本作曲家協議会 常務理事/お茶の水女子大学 非常勤講師/作曲家・ピアニスト)
「新しい宗教音楽 -電気文明における芸術の可能性-」

クロージング・セッション

「シンポジウムの総括と将来展望
-統一テーマの視点から-」

クロージング・セッション

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