森 和俊Kazutoshi Mori

森 和俊
京都大学 理学研究科 教授
専門分野キーワード
小胞体、分子シャペロン、タンパク質の折りたたみ、タンパク質分解、細胞内情報伝達、遺伝子発現

講演テーマTitle of Presentation

「小胞体ストレス応答:タンパク質の品質を管理する細胞応答」

生き物の基本単位は細胞です。私達人間は60兆個もの細胞でできています。細胞の中はどうなっているでしょうか。私達の体の中には、いろんな臓器が入っていて、肺が呼吸をし、心臓が血液を循環させています。同じように、細胞の中にも小さな臓器がたくさん入っていて、それぞれが役割分担しています。私が研究している小胞体は、細胞の中に存在する小さな臓器(細胞内小器官)の一つで、タンパク質の製造工場という役割を果たしています。

タンパク質とは何でしょう。一般には、炭水化物、脂肪と合わせて3大栄養素の一つですが、細胞の中では水の次に多量に存在する重要物質です。タンパク質が働いているから我々は生きているといっても過言ではありません。

糖尿病を例に解説しましょう。尿中の糖濃度が高いことが原因で病気になるのではなく、血液中の糖濃度(血糖値)が高い状態が続くと、糖が尿に漏れだすと同時に血管にダメージを与えて、いろいろな症状が出ます。

しかし、食事後には誰でも血糖値があがります。でもしばらくすると血糖値が低くなるのは、膵臓が作っているインスリンというタンパク質が血液中に放出されるからです。このインスリン(鍵)が肝臓や筋肉の細胞に存在するインスリン受容体(鍵穴)に入って鍵穴を回すと、車のエンジンがかかったように、肝臓や筋肉の細胞が血液中から糖を取り込むために、血糖値が下がるのです。

鍵と鍵穴は1対1で対応するように形が決まっています。タンパク質が働く時にはその形が重要なのです。タンパク質の原料はアミノ酸が数珠つながりで並んだ紐(ひも)です。ですから、この紐を針金細工で、鍵の形に作り上げているのです。この針金細工を細胞内でしているのが、小胞体という言わば工場です。この工場はかなり優秀で、よく働くのですが、それでも時にうまく機能しなくなり、不良品がいつも以上にできてしまうことがあります。この状態を小胞体ストレスと呼んでいますが、このとき、この悪くなった状況を元に戻そうとする復元力が細胞に備わっていることを私の米国テキサス大学でのボス2人が発見しました。私は彼らの指導の下、29年前からこの復元力(小胞体ストレス応答)の仕組み解明に取り組み、小胞体の中の状況が悪化していることを感知するセンサー分子を世界で初めて発見しました。帰国後もこの驚異の復元力が働く仕組みを解明してきました。その成果と意義をやさしく解説します。

プロフィールProfile

ホームページ URL
http://www.upr.biophys.kyoto-u.ac.jp/
簡単な履歴
学歴
昭和56年3月 京都大学薬学部卒業
昭和56年4月 京都大学大学院薬学研究科修士課程入学
昭和58年3月 同大学院修士課程修了
昭和58年4月 京都大学大学院薬学研究科博士後期課程進学
昭和60年3月 同大学院博士後期課程中途退学
昭和62年9月 京都大学薬学博士
職歴
昭和60年4月〜平成元年3月 岐阜薬科大学助手
平成元年4月〜平成5年9月 米国テキサス大学博士研究員
平成5年10月〜平成8年3月 株式会社エイチ・エス・ピー研究所副主任研究員
平成8年4月〜平成11年3月 株式会社エイチ・エス・ピー研究所主任研究員
平成11年4月〜平成15年10月 京都大学大学院生命科学研究科助教授
平成15年11月〜 京都大学大学院理学研究科教授
主な受賞・栄誉等
主な論文・著作等

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