講演テーマTitle of Presentation
「パワー半導体デバイス -電気エネルギー有効利用の主役-」
半導体デバイスは、20世紀半ばのトランジスタ発明を契機に、エレクトロニクスの中核となり、コンピュータ、ネットワークを核とする情報化社会へと大きなパラダイムシフトをもたらした。社会の発展には多くのエネルギーを要し、特に、情報化社会への急速な移行によって、使いやすい電気エネルギーの消費量は増加の一途をたどっている。地球環境保全の重要性を考えれば、この解決を単純に電力供給源の増加に求めることは明らかに好ましくない。いま求められているのは、エネルギー利用の節減と電気エネルギー利用の高効率化であり、特に、後者は著しいエネルギー節減効果をもたらすので極めて重要である。パワー半導体デバイスはこれら電気エネルギーの有効利用を図るために必須のデバイスであり、近年、その進歩に大きな関心が集まっている。
講演では、パワー半導体デバイスと、電気エネルギー変換に使われるパワーエレクトロニクスシステムの概略を述べ、それに使われる半導体材料を紹介する。従来から半導体シリコン(Si)が主役の座を保ってきたが、電気エネルギー利用の高効率化の観点から、新しい材料としてシリコンカーバイド(SiC)が台頭し、性能を大きく改善しつつある。各種の電気・電子装置、家庭電化製品、産業用機器、非常用電源、列車、送配電装置、自動車へ、小型、高効率、簡易冷却のパワーエレクトロニクスデバイスを適用した実用例を紹介する。さらに、ガリウムナイトライド(GaN)系材料が研究開発の対象となりつつある。これらの現状を分かりやすく紹介し、最新の情報を含めて、将来展望を述べる。
プロフィールProfile
- 簡単な履歴
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1964年 京都大学工学研究科電子工学専攻修士課程修了、同大学工学部助手 1970年 京都大学工学博士 1971年 京都大学助教授 1976年-1977年 アメリカ合衆国ノースカロライナ州立大学客員准教授 1983年 京都大学工学部教授 1996年 同大学大学院工学研究科教授 2003年 同大学定年退官、同大学名誉教授 2004年-2012年 独立行政法人科学技術振興機構(JST)イノベーションプラザ京都館長 - 主な受賞・栄誉等
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1. 第1回山崎貞一賞
「半導体シリコンカーバイドの高品質エピタキシャル成長とパワーデバイスの先駆的研究」2001.11.262. 文部科学大臣賞(研究功績賞)
「電力変換用炭化珪素ショットキーダイオードの研究」2002.4.173. 応用物理学会業績賞(第4回)
「SiC半導体・デバイスの先駆的研究」2003.3.284. 電子情報通信学会業績賞
「半導体シリコンカーバイドの高品質エピタキシャル成長と次世代電子デバイスに関する基礎研究」2003.5.295. SSDM2005
「Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures, SSDM 1987.8.22-24」2005.9.136.朝日賞2012
「パワー半導体シリコンカーバイドの先駆的研究」2013.1.31 - 主な論文・著作等
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著書
1. ワイドギャップ半導体-あけぼのから最前線へ-(培風館、2013)編著
2. 半導体SiC技術と応用第2版(日刊工業新聞社、2011)編著
3. 半導体SiC技術と応用(日刊工業新聞社、2003)編著
4. Silicon Carbide -Recent Major Advances- (Springer、2003)共編著
5. Silicon Carbide Vol.I,II (Akademie Verlag、1997) 共編著
論文
6. Technological Breakthroughs in Growth Control of Silicon Carbide for High Power Electronic Devices
H. Matsunami
Jpn. J. Appl. Phys., 43, 6835-6847 (2004).7. Hetero-Interface Properties of SiO2/4H-SiC on Various Crystal Orientations
H. Matsunami, T. Kimoto, and H. Yano
IEICE Trans, Electron., E86-C, 1943-1948 (2003).8. Present Status and Future Prospects of SiC Crystal Growth and Device Technology
H. Matsunami and T. Kimoto
Trans. IEICE of Japan, J-85, 409-415 (2002) (in Japanese).9. Epitaxial Growth of SiC on Non-Typical Orientations and MOS Interfaces
H. Matsunami, T. Kimoto, and H. Yano
Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 640, H3.4.1-H3.4.10 (2001).10. High channel mobility in inversion layers of 4H-SiC MOSFETs by utilizing (11-20) face
H. Yano, T. Hirao, T. Kimoto, H. Matsunami, K. Asano, and Y. Sugawara
IEEE Electron Device Lett. 20, 611-613 (1999).11. Single crystal growth of SiC and electronic devices
A. Itoh and H. Matsunami
Crit. Rev. in Solid State and Mat. Sci. 22, 111-197 (1997).12. Step-controlled epitaxial growth of SiC: high quality homoepitaxy
H. Matsunami and T. Kimoto
Mat. Sci. & Eng. R20, 125-166 (1997).13. High-Performance of High-Voltage 4H-SiC Schottky Barrier Diodes
A. Itoh, T. Kimoto, and H. Matsunami
IEEE Electron Device Lett., 16, 280-282 (1995).14. Progress in Epitaxial Growth of SiC
H. Matsunami
Physica B, 185, 65-74 (1993).15. Step-Controlled VPE Growth of SiC Single Crystals at Low Temperatures
N.Kuroda, K.Shibahara, W-S. Yoo, S.Nishino and H.Matsunami
Ext. Abst. of the 19th Conference on Solid State Devices and Materials. Tokyo, 1987, 227-230