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第2回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2015.7.11-12
テクノロジー・遺伝子・芸術 -進化の足跡を辿り、現代文明とその未来を考える-(終了)

三輪 眞弘
音楽分野

三輪 眞弘 (Masahiro Miwa)

情報科学芸術大学院大学 教授
作曲家

専門分野キーワード
音楽、作曲、アルゴリズミック・コンポジション、メディア・アート、合成音声

講演テーマTitle of Presentation

「新しい宗教音楽 -電気文明における芸術の可能性-」

しばしば世俗音楽と対比される宗教音楽は、西洋であれば教会音楽と呼ばれ、作曲という概念もまたその歴史の中から生まれた。バロック以後、教会音楽に代わるものとして進展してきた「芸術音楽」がそれに続いたものの、現代社会においては「メディアによって媒介される音楽」の前でその作曲の歴史もまた事実上終わってしまったとぼくは感じている。そのような状況の中で、ぼく自身は自分の作品を再び、広い意味での「宗教音楽」として捉え直そうと考えている。それは特定の信仰に属するものではないが、その本質において有史以来続いてきた人類にとっての「芸術」の意味を宗教的営為のひとつとして再定義し、願わくばその営みを継承したいと望んでいるからだ。言いかえれば、ぼくにとっての芸術(音楽)はもはや「文化」の問題ではなく、ぼくたちが「人間であること」を続けるための、勝ち目のない「賭け」なのである。

その際、ぼくらは今、誰もが「未曾有の環境」の下に生きていることを忘れるわけにはいかない。すなわち、「いついかなる時でも電気が必ず供給され続けることを前提とし、みずからの責任と子供達の未来を考えることがそのまま、”今よりもさらにテクノロジーを進歩させること”へと回収される」*ような環境、つまり、高度なテクノロジーを前提とした人間世界のことである。ぼくはそのような世界を単純に「電気文明」と呼ぶことにした。

講演では、作曲/音楽という営みを巡って、そのような「電気文明における芸術の可能性」を模索してきたぼく自身の活動について解説を試みる。具体的には、作曲における見かけのまったく異なる2つの活動、すなわち「逆シミュレーション音楽」と「フォルマント兄弟」という、佐近田展康との創作ユニットについてである。アルゴリズミック・コンポジションと呼ばれる前者の例としてはセルフフィードバック・システムによって自動生成されたピアノ曲を、後者については、人工音声とその主体をめぐる思索の実践としてMIDIアコーディオンを用いた人工歌唱によるG・B・ペルゴレージの宗教曲を紹介できればと考えている。

[協力]

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プロフィールProfile

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簡単な履歴

1958年東京に生まれる。1974年都立国立高校入学以来友人と共に結成したロックバンドを中心に音楽活動始め1978年渡独。国立ベルリン芸術大学で作曲をイサン・ユンに、1985年より国立ロベルト・シューマン音楽大学でギュンター・ベッカーに師事する。卒業後は作曲家としてドイツを拠点に活動するかたわら、ロベルト・シューマン音楽大学、メディア芸術大学(ケルン)の非常勤講師を勤め、1996年、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)の創設メンバーのひとりとして帰国。2001年より情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授。
1980年代後半からコンピュータを用いた作曲の可能性を探求し、特にアルゴリズミック・コンポジションと呼ばれる手法で数多くの作品を発表。それらは国際コンピュータ会議(ICMC 88、 Cologne )や、アルス・エレクトロニカなど、世界的な舞台で高く評価されている。また、前田真二郎とのオペラ、小笠原則彰やマーチン・リッチズとの美術作品、佐近田展康とのパフォーマンスなど、数多くのアーティストとのコラボレーションに加え、CD制作、著作出版など、その活動は多岐に渡る。
旧「方法主義」同人。人工音声による創作ユニット「フォルマント兄弟」の兄。(社)日本作曲家協議会理事/日本電子音楽協会会長/先端芸術音楽創作学会、インターカレッジ・ソニックアーツ・フェスティバル運営委員会委員長。

主な受賞・栄誉等

・ハムバッヒャー作曲コンクール(西独)佳作入賞 (1985)
バイオリンのための「詩人でない人は・・」

・第10回入野賞第1位 (1989)
メゾ・ソプラノとコンピュータ制御による自動演奏ピアノのための
「赤ずきんちゃん伴奏器」

・第19回「今日の音楽」作曲賞第2位 (1991)
クラリネット、ホルン、ファゴット、弦楽五重奏とエンドレス・テープのための
「歌えよ、そしてパチャママに祈れ!」

・第14回ルイジ・ルッソロ作曲コンクール(伊)第1位 (1992)
テープのための「Dithyrambe」

・村松賞新人賞 (1995)

・芥川作曲賞 (2004)
オーケストラのための「村松ギヤ・エンジンによるボレロ」

・PRIX ARS ELECTRONICA(オーストリア)・ゴールデン・ニカ賞 (2007)
デジタルミュージック部門グランプリ「逆シミュレーション音楽」

・PRIX ARS ELECTRONICA佳作 (2008)
ハイブリッドアート部門「Thinking Machine」(共作)

・PRIX ARS ELECTRONICA佳作 (2009)
デジタルミュージック部門「フレディーの墓/インターナショナル」(共作)

・第61回芸術選奨文部科学大臣賞 (2010)

主な論文・著作等

音楽作品

・モノローグ・オペラ「新しい時代」(2000)

・オーケストラのための「村松ギヤ・エンジンによるボレロ」(2003)

・弦楽オーケストラのための「369 B氏へのオマージュ」(2006)

・オーケストラのための「永遠の光」”Lux aeterna luceat eis, Machina” (2011)

・舞楽 算命楽(雅楽)(2011)

・MIDIアコーディオンと管弦合奏のための「万葉集の一節を主題とする変奏曲」(2013)

美術作品

・「またりさま人形」(2003 小笠原則彰との共同制作)

・「Thinking Machine」(2007 マーチン・リッチズとの共同制作)

著書(単著)

・「コンピュータ・エイジの音楽理論」(1995 ジャストシステム)

・「三輪眞弘音楽藝術 全思考一九九八ー二〇一〇」
(2010 アルテスパブリッシング)

– その他、数多くの楽譜がマザーアースより出版されている

CD(作品集)

・「赤ずきんちゃん伴奏器」(1995 フォンテック)

・「東の唄」(1998 フォンテック)

・「新しい時代信徒歌曲集」、「言葉の影、またはアレルヤ」(2001)

・「村松ギヤ(春の祭典)」(2012フォンテック)

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