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第3回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2016.7.9-10
未来への窓 -バイオ・メディカルテクノロジー、数学、美術の眼を通して-(終了)

石内 都
美術分野

石内 都

写真家

専門分野キーワード
現代写真、写真表現

講演テーマTitle of Presentation

「写真の現在/遺された物たちの今を撮る」

写真は目の前にある現在する風景や人物や事物を記録するために発明された。

印画紙の上に写された事柄すべてはそれを写した人だけでなく、そこにいなかった多くの人達の為に存在し、目にしたことのない、行ったことのない、見知らぬ世界と出合うことの出来る特別の装置でもあった。写真に写しとられた対象はそれら現物の情報をはるかに越え、限りないイメージに向けて放たれたひとつの光になっていた。

写真はそんな幻想をふまえながらも時代と共に情報の多種多様な中で大きく変化し、今や写真に写されたものが真実であると思う人はほとんどいない。写真は世界を四角いフレームで切りとり、操作し、捏造し、誘導する画像となり、一見みて来たようなリアリティーが、創作するには最適なメディウムとして、その特性を把握すれば何でも出来るアートの表現となったのである。

私は2000年から遺されたもの達の撮影をしている。亡くなった人が生前、身につけていた下着や衣服、装飾品など、それを使っていた人がいなくなってもなお遺されている物たち。その最たる遺品が「ひろしま」である。

1945年8月6日から行方不明になっている少女が着ていたブラウスがある。そのブラウスを写真に撮ることによって、記録でもなく、真実でもなく、私が目の前にしている現実として、70年間の時間をまとった衣服として、何よりも行方不明の彼女がいつ帰ってきてもいいように、美しくととのえ、仕立ておろしの時に着た、うきうきした気分を創り出す。そして毎年新しく遺品が広島の原爆資料館に寄贈されている事実を知る人はすくない。あの日からどれほどの変化があったのだろうか。今年も又、世界に向けて「ひろしま」を発信する。

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プロフィールProfile

簡単な履歴

群馬県桐生市生まれ。初期三部作で街の匂い、気配、空気をとらえ、同い年生まれの女性の手と足の作品「1・9・4・7」以降、身体にのこる傷跡シリーズを展開。1999年東京国立近代美術館「時の器」個展。2005年母の遺品シリーズ「Mother’s 2000-2005 未来の刻印」ヴェネチア・ビエンナーレ日本代表展示。2008年広島市現代美術館で広島原爆資料館に収蔵されている遺品を作品化した個展「ひろしま-Strings of Time」発表。2012年丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にて銘仙きものを撮影した個展「絹の夢」を開催。メキシコのフリーダ・カーロ博物館に保管されているフリーダ・カーロの遺品の撮影をする。2013年ロンドン,テートモダンにて収蔵展「絶唱、横須賀ストーリー」、2014年ロンドン、マイケル・ホッペンギャラリーにて「Frida by Ishiuchi Miyako」個展。2015年ロサンゼルス、J・ポール・ゲッティ美術館、「横須賀」から「ひろしま」まで個展「Postwar Shadows」。2016年個展「幼き衣へ」島根県立石見美術館。「Frida is」銀座・資生堂ギャラリーにて個展。

主な受賞・栄誉等
主な論文・著作等

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