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第3回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2016.7.9-10
未来への窓 -バイオ・メディカルテクノロジー、数学、美術の眼を通して-(終了)

本庶 佑
バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジー分野

本庶 佑

京都大学 客員教授

専門分野キーワード
がん免疫治療、抗体の多様化

講演テーマTitle of Presentation

「PD-1抗体によるがん治療」

PD-1は1992年石田らが胸腺における細胞死の際に誘導されるcDNAをサブトラクションハイブリダイゼーション法で単離したときに偶然発見された細胞膜受容体分子である。その後、西村らのPD-1遺伝子ノックアウトマウスの解析からPD-1が免疫反応の抑制分子であることを明らかにした。2002年岩井らはPD-1シグナルを阻害するモノクローナル抗体によって、免疫系が賦活化され、ウイルス感染症やがんの治療に効果があることを発見した。さらに我々は京都大学産婦人科学教室との共同研究で卵巣がんの予後とがんにおけるPD-1リガンドの発現との間に見事な相関関係があることが明らかとなった。すなわち、PD-1リガンドを発現しているがん腫は予後が悪く、キラーT細胞からの攻撃を避ける能力があるのではないかと想定された。これらの知見をもとに私はヒト型モノクローナル抗体を用いたがん治療法の開発を発案し、製薬企業を説得した。

こうして、2006年ヒト型抗体作製技術を利用したヒト型抗PD-1モノクローナル抗体の作製が行なわれた。この抗体を用いた治験(第一相)が、米国、日本で行なわれ、その結果、多くのがん腫症例において忍容性及び有効性が認められた。この知見に基づき、京都大学探索医療センターにおいて卵巣がんに特化した第ニ相治験が2011年冬から開始された。その後治験が進みPD-1抗体はメラノーマの治療薬として2014年6月にPMDAによって承認された。現在、世界中では200件近くのPD-1抗体による各種がん腫治療への治験が進行中であり、有効性が確認されつつある。今後は日本の企業が次のアカデミア由来のシーズ誕生にどのように貢献するか注目される。

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プロフィールProfile

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簡単な履歴

1942年生。医学博士。京大医学研究科博士課程終了後、米国のカーネギー研究所、NIHで客員研究員。1974年帰国、東大医学部助手、阪大医学部教授等を経て、1984年京大医学部教授。以降、京大遺伝子実験施設長、京大医学研究科長、医学部長に就任。2005年退官後に京大医学研究科客員教授に就任。その他、高等教育局科学官、日本学術振興会学術システム研究センター所長、内閣府総合科学技術会議議員を歴任。現在、静岡県公立大学法人理事長。財団法人先端医療振興財団理事長。日本学士院会員。

主な受賞・栄誉等
主な論文・著作等

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