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第4回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2017.7.1-2
夢とロマンをはぐくむ芸術および科学・技術(終了)

平田 オリザ
映画・演劇分野

平田 オリザ

劇作家・演出家
大阪大学COデザインセンター 特任教授

専門分野キーワード
劇作、演出、劇場、教育、文化行政、まちづくり

講演テーマTitle of Presentation

「コミュニケーションの装置としての演劇」

おそらく原生人類と同じくらいの歴史を持つ演劇、ダンスといった舞台芸術には、それ自体の楽しみの他に、様々な社会的機能が付随している。

ここでは特に、その中でも、舞台芸術が持つコミュニティ形成や維持、あるいは再生のための役割について、大きく二つの観点から考えてみたい。

一つはコミュニケーションの問題である。あらゆる生物の中でヒトだけが、「家族」という集団と「群れ」という集団の両方に所属する。ゴリラは家族単位で行動し、チンパンジーは群れ単位で行動するが、ヒトは、その両者を往還する。そのために我々は、何かを伝えるという必要性に迫られた。

共同体の成員が常に同じような経験をしているのなら、そのような必要はないのだが、「今日狩りで誰が活躍したか」「いま、家庭内でどんな問題が起こっているか」を、我々人類だけは、他者に伝えなければならない。当然そこには、伝え方の優劣が生まれてくる。どんな獲物が獲れたかを、色や形は音にして伝えることから始まり、やがてそれは抽象化されて芸術へと昇華していく。

もう一点は、合意形成の問題である。異なる価値観を持った人間が共同体を構成したり、複数の家族が集団を形成する場合、我々は常に何らかの合意形成を行わなければならない。村祭りのような芸能は、多くの場合、そのための通過儀礼であったろう。一定年齢以上になると、一ヶ月、二ヶ月とかかる祭りの準備に加わり、家族以外の大人との共同作業を経験する。それらは、学校教育がなかった時代の、共同体維持のための大切な教育機関でもあった。

本講演では、こうした舞台芸術の社会的役割を考察した上で、現状の日本のコミュニケーション教育の最先端の状況についても報告を行う。

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プロフィールProfile

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簡単な履歴

劇作家・演出家・青年団主宰

こまばアゴラ劇場芸術総監督・城崎国際アートセンター芸術監督、埼玉県富士見市民文化会館キラリ☆ふじみマネージャー

1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業

桜美林大学教授、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授などを経て、現在は、大阪大学COデザイン・センター特任教授

東京藝術大学COI研究推進機構 特任教授、四国学院大学客員教授・学長特別補佐、京都文教大学客員教授

(公財)舞台芸術財団演劇人会議理事長、兵庫県豊岡市文化政策担当参与、岡山県奈義町教育・文化の町づくり監、埼玉県富士見市市政アドバイザー、日本演劇学会理事、(財)地域創造理事

主な受賞・栄誉等
1995年 『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞
1998年 『月の岬』で第5回読売演劇大賞優秀演出家賞、最優秀作品賞受賞
2002年 『上野動物園再々々襲撃』(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞受賞
2002年 『芸術立国論』(集英社新書)で、AICT評論家賞受賞
2003年 『その河をこえて、五月』(2002年日韓国民交流記念事業)で、
第2回朝日舞台芸術賞グランプリ受賞
2006年 モンブラン国際文化賞受賞
2011年 フランス国文化省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲
主な論文・著作等

『現代口語演劇のために』(晩聲社)

『都市に祝祭はいらない』(晩聲社)

『演劇入門』(講談社現代新書)

『演技と演出』(講談社現代新書)

『芸術立国論』(集英社新書)

『地図を作る旅』(白水社)

『世界とわたりあうために』(徳間書店)

『新しい広場を作る -市民芸術概論綱要-』(岩波書店)

『わかりあえないことから』(講談社現代新書)

『下り坂をそろそろと下る』(講談社現代新書)

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