山本 卓Takashi Yamamoto

広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター長、統合生命科学研究科 教授
専門分野キーワード
ゲノム編集、プラチナTALEN、クリスパー・キャス9、遺伝子ノックイン、品種改良、疾患モデル

講演テーマTitle of Presentation

「ゲノム編集技術の最前線」

近年、目的の遺伝子を自在に改変する技術として、人工DNA切断システムを基盤としたゲノム編集(Genome Editing)が注目されている。ゲノム編集は、切断されたDNAの修復過程を利用して遺伝子を改変する技術で、これまで改変が難しかった微生物や動物、植物においても遺伝子への変異導入(ノックアウト)や外来遺伝子の挿入(ノックイン)が可能である。人工DNA切断酵素としては、第一世代のZFNに加えて、標的配列選択の自由度が高い第2世代のTALENが2010年に開発され、様々な生物での標的遺伝子改変が報告されてきた。さらに2012年に、第三世代のCRISPR-Cas9システムが発表され、その簡便かつ効率の高さに多くの研究者が驚かされた。CRISPR-Cas9は細菌の獲得免疫システムを利用した方法で、短鎖のRNA (ガイドRNA)が標的配列に結合し、ガイドRNAと複合体を作るCas9ヌクレアーゼがDNAを切断する。CRISPR-Cas9の開発者のダウドナ博士とシャルパンティエ博士は2020年のノーベル化学賞に輝いている。

我々のグループでは、10年以上前からZFNの作製に取組み、ZFNを用いた動物胚での遺伝子発現の可視化を行ってきた。さらに、高活性型のTALEN(Platinum TALEN)を開発し、微生物や様々な動植物、培養細胞での遺伝子破壊や遺伝子ノックインを報告してきた。最近は、CRISPR-Cas9システムとMMEJ修復経路を利用した新規の遺伝子ノックイン法(PITCh法)の開発やiPS細胞での一塩基レベルでの改変技術(MhAX法)を共同開発し、さらにMMEJ経路のエフェクターを集積するLoADシステムによって、複数遺伝子座への同時遺伝子挿入に成功した。

本講演では、ゲノム編集の基本原理と発展技術の開発動向について紹介し、ゲノム編集技術の様々な分野での基礎研究と応用研究(バイオ燃料開発や品種改良、創薬や遺伝子治療)での可能性について議論する。

プロフィールProfile

ホームページ URL
http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/smg/index.html
簡単な履歴(2020年4月1日現在)
1989年3月 広島大学 理学部 卒業
1992年7月 広島大学 大学院理学研究科 中退
1992年8月 熊本大学 理学部 助手
2002年6月 広島大学 大学院理学研究科 講師
2003年11月 広島大学 大学院理学研究科 助教授
2004年4月 広島大学 大学院理学研究科 教授
2019年4月-現在 広島大学 大学院統合生命科学研究科 教授
2017年-現在 広島大学 次世代自動車技術共同研究講座 教授(併任)
2019年-現在 広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター長(併任)
2014年-現在 鳥取大学 染色体工学センター 客員教授
2014年-現在 熊本大学 生命資源研究支援センター 客員教授
2016年-現在 日本ゲノム編集学会長
主な受賞・栄誉等
主な論文・著作等

講師&講演概要へ戻る