村上 正晃Masaaki Murakami

北海道大学遺伝子病制御研究所 教授 / 量子科学技術研究開発機構量子生命科学研究所 グループリーダー / 自然科学研究機構 生理学研究所 分子神経免疫研究部門 教授
専門分野キーワード
免疫学、神経免疫学、組織特異的炎症性疾患、自己反応性CD4+ T細胞、ゲートウェイ反射、IL-6アンプ

講演テーマTitle of Presentation

「ゲートウェイ反射による組織特異的炎症性疾患の誘導機構」

近年、分子的にも免疫系と脳神経系の相互連関の実態が明らかになってきた。私たちは、2012年に、その1つである「ゲートウェイ反射」を発見した。重力に特異的な神経回路の活性化により第5腰髄の背側部分の血管でミエリン分子を認識する自己反応性CD4+ T細胞の侵入口(血管ゲート)が形成され組織特異的な炎症性疾患が生じる「重力ゲートウェイ反射」である。その誘導のための分子機構の解析から、最大の抗重力筋であるヒラメ筋を起点とする感覚神経―交感神経のクロストークがノルアドレナリン依存性に当該部位に血管ゲートを形成していた。2019年には、本発見をもとに、世界で初めて病態モデルマウスをJAXAとNASAとの共同研究にて国際宇宙ステーションに送り無重力状態でのゲートウェイ反射病態の制御機構を解析している。

重力以外の刺激を起点とする新規ゲートウェイ反射に関しては、その後、痛み、ストレス、光、遠隔炎症、人為的な電気刺激などで、それぞれ別の部位に血管ゲートができ、血中の自己反応性CD4+ T細胞の存在下に、組織特異的な炎症性の病態が誘導、あるいは抑制されることがわかった。特にストレスゲートウェイ反射では、ミエリン特異的な自己反応性CD4+ T細胞が血液中に一定数以上存在した時に、脳の特定血管2箇所にてゲートウェイ反射が生じ、微小炎症が生じること、さらにその後、当該微小炎症部位から産生されるATPが神経伝達物質として作用し、新たな神経回路を活性化して最終的に上部消化管に分布する迷走神経が過剰に活性化、胃、十二指腸の炎症から心臓の機能不全を引き起こして突然死を引き起こすことがわかった。今回の講演では、重力ゲートウェイ反射の発見からその後の発展と現在ムーンショットプログラムとして実施しているゲートウェイ反射を用いた神経モジュレーションによる新規治療法開発の可能性を議論したい。

プロフィールProfile

ホームページ URL
http://www.igm.hokudai.ac.jp/neuroimmune/index.html
簡単な履歴(2021年8月1日現在)
1989年3月 北海道大学獣医学部 卒業
1993年3月 大阪大学大学院医学研究科 博士課程 修了
1993年4月 北海道大学免疫科学研究所 助手
2000年4月 Howard Hughes Medical Institute, National Jewish Medical and Research Center 博士研究員(日本学術振興会 海外特別研究員)
2002年4月 コロラド大学 准教授
2003年4月 大阪大学大学院医学系研究科 助教授
2007年4月 大阪大学大学院生命機能研究科 准教授
2014年4月ー現在 北海道大学遺伝子病制御研究所・大学院医学院 教授
2016年4月-2020年3月 北海道大学遺伝子病制御研究所 所長
2017年4月-2018年3月 文部科学省国立大学共同利用・共同研究拠点協議会 会長
2021年6月-現在 量子技術研究開発機構量子生命研究所 グループリーダー
2021年11月-現在 自然科学研究機構 生理学研究所 分子神経免疫研究部門 教授
主な受賞・栄誉等
主な論文・著作等

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