人工知能技術が急速に発展する今日において、人工知能が人間の知能を育んだり、人間の知能と人工知能が相互に補完し合ってより高度な知能を実現したりする方法を明らかにすることが、これまで以上に重要になりつつあります。そのような中、人生100年時代、多くの人が無縁ではいられないのは、知的機能が低下し日常生活に支障をきたす認知症です。認知症には、感染症と同様、基本的な対応策が知られています。特に、ものの見方や、行動の仕方に現れる、脳の使い方の長年にわたる生活習慣が、認知症発症率に影響を与えることが明らかになってきました。
本講演では、認知症予防の考え方と共に、それを日常生活で実践することを可能とする会話支援手法である共想法と、共想法に立脚し開発した会話支援ロボットの開発、そして、理化学研究所認知行動支援技術チームにおいて行った効果検証実験を通じて明らかにした、人間の認知機能、脳に与える影響について紹介します。さらに、会話支援ロボットの利用場面として、NPO法人ほのぼの研究所における実践研究活動を紹介し、認知症を防ぐ社会の実現に向けた展望を述べます。