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第1回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2014.7.12-13
統一テーマ 「人類の叡智の最前線 -生命科学、思想・倫理、情報科学の共振-」 (終了)

先端技術部門「情報科学」

アレックス 'サンディ' ペントランド

アレックス ‘サンディ’ ペントランド

米国マサチューセッツ工科大学 メディアラボ 教授

講演テーマ

「ウェアラブル・インテリジェンス」2014年7月12日

講演概要 講演概要

携帯電話,心臓ペースメーカー,およびGoogle Glass,スマートウォッチ,「自己定量化」(quantified self)リストバンドなどのウェアラブル・コンピューターでは,コンピューターやセンサーを身に付けて移動するほか,体内に埋め込んで移動することもある。これらのツールのおかげで,我々はこれまでより容易に情報にアクセスし,コミュニケーションを取ることができるようになったが,これらのツールの最も重要な点は,おそらく,我々の生活に関してこれまでにはなかった視点を提供し,これまでより詳細で広範な情報が得られることである。我々はこれらのツールを利用して,毎日のリズムを把握したり,最適な人生の過ごし方を学んだりすることができる。私が気付いたことは,例えば,自ら問題に気付く前でも,精神的なストレスや落ち込みを診断し,身体的疾患につながる症状を早期に警告できることである。

こうしたウェアラブル・デバイスがその驚異的な力を最大限に発揮するのは,多くの人々からのデータを収集したときである。さまざまな人からのデータを集めて分析することで,最適な企業の経営方法や,より快適な都市の構築方法,さらには,より優れた政府方針の策定方法を知ることができる。私が発見した例を挙げると,企業においても都市においても,生産性や創造性のある成果を決定付ける最も重要な要素はコミュニケーションのパターンであり,これらのパターンを変えることによってパフォーマンスを大きく向上できる。また,携帯電話や同種のウェアラブル・デバイスからのデータを匿名で集めることで,貧困や疾患のレベルをリアルタイムにマッピングし,犯罪率の高い地域を予測し,学校を改善できることも発見した。

このようなウェアラブル・インテリジェンスを利用すれば,我々の生活や社会をこれまでにない方法で向上することができるが,同時に危険もはらんでいる。独裁政権や非人道的企業が我々を抑圧するために利用する可能性があるからだ。したがって,このようなウェアラブル・インテリジェンスを作る場合,個人のプライバシーと自由が絶対確実に保持されるような設計にする必要がある。これを実現するため,私は世界経済フォーラムで「新データ協定」(New Deal on Data)を提案し議論を共同で進め,これは欧米両地域におけるプライバシーおよび保護ポリシーの指針となっている。また,欧米のフレームワーク内のベストプラクティスを取り込んだOpenPDS(オープンパーソナルデータストア)というプライバシー保護アーキテクチャを構築し,これは3大陸で試験的に導入されている。OpenPDSはすべての個人に対し,安定的で調和のとれたウェアラブル・インテリジェンスの基礎となる,安全な「デジタルアイデンティティ」(電子ID)を提供する。

「アイデアマシン」2014年7月13日

講演概要 講演概要

携帯電話や、ソーシャルメディア、クレジットカード、同種のメディアから収集された人間の行動に関するきめ細かいデータと、物理学と機械学習から導き出される高度な数学を組み合わせることで、現実の状況における社会的学習と意思決定のネットワークの動きの様子を定量化することができる。この分析から導き出されるモデルは、企業内や社会内のアイデアの流れが生産性と革新にどのように帰結するかを示すものであるため、私はこのモデルを「アイデアマシン」と呼んでいる。このアイデアマシンに関する主な観察として、企業においても都市においても、生産性や創造性のある成果を決定付ける最も重要な要素はコミュニケーションのパターンであり、これらのパターンを変えることでパフォーマンスを大きく向上できることが挙げられる。

このアイデアマシンモデルにより、財務上の決定から健康に関わる行動、消費行動にいたる領域で、人間の行動を正確にモデル化することができる。また、私はこのアイデアマシンの行動を強力に形成するネットワーク活性化メカニズムを開発した。このメカニズムは、コモンズ(共有地)の悲劇の問題など、社会の「大課題」に対処するための新しいアプローチを提供し、さらに、このメカニズムによるアイデアマシンの行動形成によって、組織、そしておそらくは都市全体の生産性を高めることもできる。私は「アイデアマシン」モデルの力を説明するため、数百人から数百万人規模の実験について述べる予定である。

ただし、行動を予測したり、行動に影響を及ぼしたりする力は、個人のプライバシーと自由によって制限される必要がある。これを実現するため、私は世界経済フォーラムで「新データ協定」(New Deal on Data)を提案し議論を共同で進め、これは欧米両地域におけるプライバシーおよび保護ポリシーの指針となっている。また、欧米のフレームワーク内のベストプラクティスを取り込んだOpenPDS(オープンパーソナルデータストア)というプライバシー保護アーキテクチャを構築し、これは3大陸で試験的に導入されている。OpenPDSはすべての個人に対し、安定的で調和のとれたウェアラブル・インテリジェンスの基礎となる、安全な「デジタルアイデンティティ」(電子ID)を提供する。

プロフィール

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簡単な履歴

アレックス サンディ ペントランド(Alex `Sandy’ Pentland)教授はマサチューセッツ工科大学(MIT)のヒューマン・ダイナミクス研究所と同大学メディアラボの起業家プログラムの責任者であり,世界経済フォーラムのビッグデータと個人データ イニシャティブのリーダの一人である。また,日産,モトローラモビリティ,テレフォニカ,そして多くの創業間もない企業のアドバイザリーボードの創設メンバーでもある。これまでMITのメディアラボ,インド工科大学のメディアラボ・アジア研究所,ストロング病院の未来健康センターの創設や指導にもかかわってきた。

2012年に Forbes誌はペントランド教授を,米国グーグル創業者・CTO (最高技術責任者)とともに,世界で最も影響力のある7人のデータサイエンティストの一人に選んだ。また,2013年にはハーバード・ビジネス・レビューよりマッキンゼー賞を授与された。世界で最もよく取り上げられる計算科学者の一人であり,計算社会科学,組織工学,ウエアラブル・コンピューティング(グーグル・グラス),画像理解そしてバイオメトリックスの先駆者である。ペントランド教授の研究はテレビ放送BBC World,ディスカバリーチャネル,サイエンスチャネルで特集されただけでなく,ネイチャ,サイエンス,ハーバード・ビジネス・レビューでも取り上げられている。彼の最新の著書はペンギン・プレスより出版された「社会物理学:良い考えはどのように拡がるか–ニューサイエンスからの教訓」である。

ペントランド教授はこれまで50人以上の博士学生を指導してきた。そのうち約半数はトップレベルの大学や研究所で教授職(終身身分保証付)に就いているほか,約1/4はトップレベルの企業の研究部門に所属し,残りの約1/4は自ら起業している。

ペントランド教授の研究室と起業プログラムの成果により,これまで30社以上の企業が誕生した。そのうち3社は上場しており,数社はアフリカや南アジアの何百万という貧困層のために役立っている。ごく最近誕生した企業は国際的な開発機構から様々な賞を受賞しただけでなく,エコノミストやニューヨークタイムズなどに取り上げられた。

主な受賞・栄誉等
主要論文リスト

Pentland, A. (2014) Social Physics, Penguin Press NY NY

Pickard, G., Pan, W., Rahwan, I., Cebrian, M.,Crane, R., Madan, A., Pentland, A., `Time-

Critical Social Mobilization.’ Science 28: Vol. 334 no. 6055 pp. 509-512, (2011)

Woolley, A.W., Chabris, C.F., Pentland, A., Hashmi, N., & Malone, T.W. Evidence for a Collective Intelligence Factor in the Performance of Human Groups, Sept. 30, 2010 Science, Vol. 330 no. 6004 pp. 686-68

Pentland, A., (2010) To Signal Is Human, American Scientist, Vol. 98, pp. 204-210

Eagle, N., Pentland, A., and Lazer, D. (2009), “Inferring Social Network Structure using Mobile Phone Data”, Proceedings of the National Academy of Sciences

Pentland, A., (2008) Honest Signals: how they shape our world, MIT Press, Cambridge, MA

Pentland,A., (2007) “Automatic Mapping and Modeling of Human Networks,” Physica A: Statistical Mechanics and Its Applications 378 (1): 59-67.

Sung, M., Marci, C., Pentland, A., (2005) Wearable feedback systems for rehabilitation, Journal of Neuroengineering and Rehabilitation, 2:2-17

Pentland, A., (2005) Socially Aware Computation and Communication, IEEE Computer, March 2005, pp. 63-70

Pentland, A., (2004) HealthWear: Medical Technology Becomes Wearable (2004) IEEE Computer, May, 2004, 37(5), pp. 42-49

Kumar VS, Wentzell KJ, Mikkelsen T, Pentland A, Laffel LM. (2004) The DAILY (Daily Automated Intensive Log for Youth) Trial: A Wireless, Portable System to Improve Adherence and Glycemic Control in Youth with Diabetes. Diabetes Technology and Therapy. 2004 Aug;6(4):445-53.

Roy, D., and Pentland, A., (2002) Learning words from sights and sounds: A computational model, Cognitive Science, 26 113-146.

Weng, J., McClelland, J., Pentland, A., Sporns, O., Stockman, I., Sur, M., Thelen, E., (2001) Automonous Mental Development by Robots and Animals, Science, V291 No. 5504, Jan 26, 2001

Pentland, A., (2000) Looking at People: Sensing for Ubiquitous and Wearable Computing IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 22(1), pp. 107-119, Jan. 2000.

Oliver, N., Rosario, B., and Pentland, A., (2000) A Bayesian Computer Vision System for Modeling Human Interaction, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 22(8), pp. 831-843

Pentland, A., and Liu, A., (1999) Modeling and Prediction of Human Behavior, Neural Computation, 11(1), pp. 229-242, Jan 1999 Pentland, A., (1998) Wearable Intelligence, Scientific American, Special Issue on Intelligence, pp. 90-95

Starner, T., and Pentland, A., (1998) Real-Time American Sign Language Recognition from Video Using Hidden Markov Models, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Vision, Nov. 1998.

Essa, I., Pentland, A., (1997), Coding, Analysis, Interpretation and Recognition of Facial Expressions, IEEE Trans. Pattern Analysis and Machine Vision}, Vol. 19, No. 7, pp. 757-763

Pentland, A. (1996) Smart Rooms, Smart Clothes, Scientific American, Vol. 274, No. 4, pp. 68-76, April 1996.

金出 武雄

金出 武雄

米国カーネギーメロン大学 ロボティクス研究所 ワイタカー記念全学教授

講演テーマ

「計算機視覚技術とその新たな可能性」2014年7月12日

講演概要 講演概要

計算機に「目」-画像を通じて外界を認識する機能― を持たせようという計算機視覚の研究は人工知能研究において最も初期の時代から試みられた問題であり,夢であった。ただ,人には易しい画像情報処理と認識もそれを計算機によって自動的に行うことは最初に考えられた以上にはるかに難しいことがわかってきた。しかし,今日,計算機視覚の技術は携帯のための視覚など日常生活分野から,医学・工業・科学分野において,まったく新たに考えられた問題,あるいは以前からの問題ではあるが格段に違う能力をもったものをふくめ,爆発的に応用が展開するパーフェクトストームの状態が起こりつつある。それは,膨大な処理能力のためのマイクロエレクトロニクス,微妙な画像信号をとらえるセンサー技術,そしてそのデータから意味を取り出す基本的なアルゴリズム,という三つの分野での最近の進歩が一点に集まることによっている。

この講演では,歴史的な視点から始めて,起こりつつある計算機視覚の新たな可能性を議論する。

「生活の質工学の研究と開発:ピッツバーグの経験」2014年7月13日

講演概要 講演概要

生活の質工学とは老齢者や障害を持つ人たちがなるべく自分で独立して生活するのを助けるために、ひとの体と心の機能をサポートする知能システム技術である。そのような技術は人口構成の老齢化が進む今日、社会的な重要性がある。生活の質システムには記憶などの認知機能をたすける携帯器具から、移動機能をたすける新しい知能的車椅子、家事を助ける台所ロボット、各所にセンサーとアクチュエーターが埋め込まれ見守りと補助をする家や環境老齢者の運転を安全にたすける車などがある。生活の質システムは知能的なシステムを目指すものではあるが、従来の自律ロボットと根本的にことなる点がある。それは従来の自律ロボットは宇宙・軍事・工場などで「より自律、自動」、つまり人の介在をなるべく減らす方向を見ていたのに対し、生活の質工学は逆に人の日常生活環境において人とともに働く共生システムを目標とすることである。そのための技術開発には新しい視点が要る。

カーネギーメロン大学のロボット研究所では、医学・リハビリ工学などで知られるピッツバーグ大学と共同で「生活の質工学研究センター(Quality of Life Technology Center)」を2006年に設立した。この講演では、生活の質工学研究センターの技術としての成果を紹介するとともに、それらがより社会に受け入れられるように開発するために、技術者と社会学・医学などの分野の研究者・実務者、ユーザ、そして産業界との共同作業を進めるしくみ、さらに、その方法を理解した新しい研究者を育てる教育についても議論する。

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

74 年京都大学電子工学科博士課程修了(工学博士)。同助教授を経て,80 年にカーネギーメロン大学ロボット研究所高等研究員に。同研究所准教授,教授を経て,92~2001 年所長。06 年生活の質工学研究センターを設立しセンター長。 日本でも01 年,産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センターを設立,01~09 年センター長を兼任,現在は同研究所特別フェロー。
自動運転車や自律ヘリコプター,アイビジョン,顔認識,仮想化現実,一人称ビジョンなど,ロボット工学・画像認識の世界的権威であり,現在も日米を往復して独創的な研究を続けている。

主な受賞・栄誉等

全米工学アカデミー会員,フランクリン財団バウアー賞,C&C 賞,大川賞,立石特別賞,IEEE ロボット工学パイオニア賞など受賞。

主要論文リスト

金出武雄 ”独創はひらめかない―「素人発想、玄人実行」の法則”, 日本経済新聞出版社, 2012年11月.

Takeo Kanade and Martial Hebert, “First-Person Vision,” Proceedings of the IEEE, Special Issue on Quality of Life Technology, Vol. 100, No. 8, p. 2442, August 2012.

Seungil Huh, Elmer Daifei Ker, Ryoma Bise, Mei Chen and Takeo Kanade, “Automated Mitosis Detection of Stem Cell Populations in Phase-Contrast Microscopy Images,” IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol.30, No. 3: pp586-96. March 2011.

Yan Li, Leon Gu and Takeo Kanade, “Robustly Aligning a Shape Model and Its Application to Car Alignment of Unknown Pose,” IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, September 2011 (vol. 33 no. 9),pp. 1860-1876.

Kang Li, Mei Chen, Takeo Kanade, Eric Miller, Lee Weiss, and Phil Campbell, “Cell Population Tracking and Lineage Construction with Spatiotemporal Context,” Medical Image Analysis, Vol. 12, , No. 5, October, 2008, pp. 546 – 566.

Takeo Kanade and P. J. Narayanan, “Virtualized Reality: Perspectives on 4D Digitization of Dynamic Events”, IEEE Computer Graphics and Applications, Vol. 27, No. 3, May/June 2007:32-40.

H. Schneiderman and T. Kanade, “Object Detection Using the Statistics of Parts,” International Journal of Computer Vision, Vol. 56 No. 3, February/March 2004: 151-177.

Y. Tian, T. Kanade, and J. Cohn, “Recognizing action units for facial expression analysis”, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 23, No. 2, February 2001, pp. 97 – 115.

V. Brajovic and T. Kanade, “A VLSI Sorting Image Sensor: Global Massively Intensity-to-Time Processing for Low-Latency, Adaptive Vision,” IEEE Trans. Robotics and Automation, Vol. 15, No. 1, pp. 67-75, February 1999.

C. Tomasi and T. Kanade, “Shape and Motion from Image Streams Under Orthography: A Factorization Method,” International Journal of Computer Vision, Vol. 9, No. 2, pp. 137-154, November 1992.

T. Kanade, “Recovery of the 3-Dimensional Shape of an Object from Its Single View,” Artificial Intelligence, Vol. 17, pp. 409-460, November 1981.

T. Kanade, “A Theory of Origami World,” Artificial Intelligence, Vol. 13, pp. 279-311, June 1980.

ヤン ルカン

ヤン ルカン

米国フェイスブック人工知能研究所 所長
米国ニューヨーク大学 教授

講演テーマ

「深層学習と人工知能の未来」2014年7月12日

講演概要 講演概要

過去2年にわたるAIの急速な進歩により、スマートフォン、ソーシャルネットワーク、および検索エンジンが、ユーザの声を理解し、顔を認識し、写真に写っている物体を非常に高い精度で識別できるようになった。これらの劇的な進歩は、深層学習として知られる新しい種類の機械学習手法の出現に負うところが大きい。

畳み込みネットワーク(ConvNet)と呼ばれる特殊なタイプの深層学習システムは、画像認識においてとりわけ大きな成果を上げた。ConvNetは人工ニューラルネットワークの一種で、そのアーキテクチャは、視覚野のアーキテクチャを参考にしている。これらのネットワークのルーツは、神経科学の古典的な研究および1970年代後半に福島邦彦博士がNHKで行った先駆的な活動にある。

現代のすべてのコンピュータ視覚・パターン認識システムには、例から学習する能力がある。つまり、コンピュータに物体の画像(例:自動車、テーブル、猫、人々など)を多数見せると、コンピュータは試行錯誤を経て物体カテゴリーを作り出すことを学習する。しかし、従来型のアプローチでは、学習はどちらかと言えば小さな役割を担い、システムの大半は技術者たちによって「手作り」されていた。ConvNetと他の深層学習システムを特徴づけているのは、その認識プロセス全体を端から端まで学習する能力である。深層学習システムは、学習プロセスの一環として、知覚世界の適切な表現を自動的に抽出できるようになる。

ConvNetは、顔認識、画像のタグ付け、画像分割、ロボット視覚、手書き文字認識、人物検出、性別・年齢認識など、ますます多くの用途に導入されている(その多くは日本において)。これらの用途の中には人間の能力に近づいているものもある。

深層学習の手法を自然言語理解に使用することは、学界および産業界において盛んに研究されているテーマであり、人間と対話可能なより知能の高いロボットや情報端末が現れる可能性がある。

「深層学習による機械認識」2014年7月13日

講演概要 講演概要

大規模データセット、並列コンピュータ、および新たな機械学習法の出現により、高精度の機械認識システムの導入が可能になり、広範囲にわたるAIシステム導入への扉が開きつつある。

AIシステムの主要な要素は、特徴抽出器とも呼ばれるモジュールで、生入力データを適切な内部表現に変換するものである。しかし、そのようなモジュールの設計と構築には、かなりの技術的努力と特定分野の専門知識が必要となる。

深層学習の手法は、ラベル付きまたはラベルなしサンプルから得られたデータの適切な表現を自動的に学習する方法を提供した。ディープアーキテクチャは多数のステージで構成されており、それらのステージでデータの表現は次第に包括的、抽象的になり、また入力の重要でない変化に対する不変性を持つようになる。深層学習により、これらのアーキテクチャの生入力データから最終的な出力に至るまでの一貫した学習が可能になる。

畳み込みネットワークモデル(ConvNet)は、生物学からヒントを得たディープアーキテクチャの一種で、非線形演算子が組み込まれたフィルターバンクと空間プーリングとからなる複数のステージで構成されている。ConvNetは、画像における物体検出、位置推定および認識、セマンティックセグメンテーションとラベリング、顔認識、音声認識のための音響モデリング、薬剤設計、手書き文字認識、生体画像セグメンテーションなど、多種多様なベンチマークの記録を保持している。

フェイスブック、グーグル、NEC、IBM、マイクロソフト、バイドゥ、ヤフー、およびその他の企業が導入している最新の音声認識および画像理解システムは、深層学習を使用している。こうしたシステムの多くは、教師ありモードで訓練された、数十億もの結合をもつ非常に大規模で層数の多いConvNetを使用している。しかし、新しい用途の多くでは、教師なし特徴学習の使用が必要となる。スパースオートエンコーダをベースにした特徴学習の手法をいくつか紹介する。

ビデオやライブデモを通して、いくつかの応用を提示する。これには、動作中に学習可能なカテゴリーレベル物体認識システム、画像内のすべてのピクセルにそれぞれが属する物体のカテゴリーをラベル付けできるシステム(シーンパーシング)、歩行者検出器、および大規模画像認識コンペティション(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)のデータで第1位となった物体位置推定・検出システムが含まれる。これらのシステムをリアルタイムで実行する専用のハードウェアアーキテクチャについても説明する。

プロフィール

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簡単な履歴

ヤン・ルカン博士はフェイスブックの人工知能研究所長であるとともに,ニューヨーク大学のデータ科学,計算機科学,神経科学,電気工学分野の特別教授(Silver Professor)であり,データサイエンスセンター,クーラン数理科学研究所,神経科学センター,電気計算機工学科も併任している。

ルカン博士は1983年にパリの電子電気工学技術高等学院(ESIEE)から学士号を取得し,1987年にはピエール・マリー・キュリー大学(パリ)から計算機科学で博士学位を取得した。トロント大学でポスドクを経験後,1988年に米国ニュージャージー州のホルムデルにあるAT&Tベル研究所に入社し,1996年には画像処理研究部門の責任者に就任した。そして,短期間プリンストンにあるNEC研究所に勤務後,2003年にニューヨーク大学の教授に着任した。2012年から2014年までニューヨーク大学のデータサイエンス分野のプロジェクトを主導し,データサイエンスセンターの初代所長に就任した。2013年の後半にフェイスブックの人工知能研究所長に任命されたが,今もニューヨーク大学での教授職 (常勤ではない)を継続している。

ルカン博士の現在の研究テーマは,人工知能,機械学習,計算機による知覚(認識),移動ロボット,計算神経科学である。これらの分野(一部他の関連分野を含む)において180以上の技術論文や本の章を執筆した。ベル研究所でルカン博士が開発した文字認識技術は世界中のいくつかの銀行で現在も小切手の文字認識に使われているが,かつて2000年代の初頭には米国のすべての小切手の10~20%の処理に使われていた。ルカン博士が開発したDjVu と呼ばれる画像圧縮技術は,数百のWebサイトや出版社で使われ,何百万人がウエブ上のスキャンされた書類を読む際に使っている。1980年代の半ばより彼は深層学習手法,特に畳み込みニューラルネットワークモデルについて研究を行った。その成果は,フェイスブック,グーグル,マイクロソフト,百度,IBM,NEC,AT&T 等の企業が開発した画像・ビデオ理解,書類認識,人間・計算機相互作用,音声認識分野の多くの製品やサービスの基礎技術となっている。

ヤン・ルカン博士は,学術誌IJCV, IEEE(米国電気電子学会) PAMI(論文誌)そしてIEEEニューラルネットワーク(論文誌)の編集委員を務めている。国際会議CVPR’06のプログラム委員長やICLR2013, 2014の委員長を務めた。純粋・応用数学研究所やカナダ高等研究所(CIFAR)の神経計算と適応知覚プログラムの科学アドバイザリボードを務めている。また,共同創業者を務めたスタートアップ企業を含む,機械学習技術に関する大小多くの企業にアドバイスを行ってきた。さらに,ムーア・スローン財団のデータサイエンス環境に関わる3,600万ドルのイニシャティブのニューヨーク大学代表研究者を務め,カリフォルニア大学バークレイ校やワシントン大学と共同で科学分野のデータ駆動手法の開発を進めている。ルカン博士は2014年IEEEニューラルネットワークパイオニア賞を受賞している。

主な受賞・栄誉等

IEEE Neural Network Pioneer Award, 2014

主要論文リスト

Y. LeCun, L. Bottou, Y. Bengio and P. Haffner: Gradient-Based Learning Applied to Document Recognition, Proceedings of the IEEE, 86(11):2278-2324, November 1998

Yoshua Bengio and Yann LeCun: Scaling learning algorithms towards AI, in Bottou, L. and Chapelle, O. and DeCoste D. and Weston, J. (Eds), Large-Scale Kernel Machines, MIT Press, 2007, \cite{bengio-lecun-07}

Yann LeCun, Sumit Chopra, Raia Hadsell, Marc’Aurelio Ranzato and Fu-Jie Huang: A Tutorial on Energy-Based Learning, in Bakir, G. and Hofman, T. and Schölkopf, B. and Smola, A. and Taskar, B. (Eds), Predicting Structured Data, MIT Press, 2006

Y. LeCun, B. Boser, J. S. Denker, D. Henderson, R. E. Howard, W. Hubbard and L. D. Jackel: Backpropagation Applied to Handwritten Zip Code Recognition, Neural Computation, 1(4):541-551, Winter 1989

Pierre Sermanet, David Eigen, Xiang Zhang, Michael Mathieu, Rob Fergus and Yann LeCun: OverFeat: Integrated Recognition, Localization and Detection using Convolutional Networks, International Conference on Learning Representations (ICLR2014), CBLS, (OpenReview), (Arxiv:1312.6229), April 2014

Clement Farabet, Camille Couprie, Laurent Najman and Yann LeCun: Learning Hierarchical Features for Scene Labeling, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, August 2013,

Yann LeCun: Learning Invariant Feature Hierarchies, in Fusiello, Andrea and Murino, Vittorio and Cucchiara, Rita (Eds), European Conference on Computer Vision (ECCV 2012), 7583:496-505, Lecture Notes in Computer Science Springer, ISBN:978-3-642-33862-5, Workshop on Biological and Computer Vision Interfaces (invited paper), 2012

Clement Farabet, Rafael Paz, Jose Perez-Carrasco, Carlos Zamarreno, Alejandro Linares-Barranco, Yann LeCun, Eugenio Culurciello, Teresa Serrano-Gotarredona and Bernabe Linares-Barranco: Comparison Between Frame-Constrained Fix-Pixel-Value and Frame-Free Spiking-Dynamic-Pixel ConvNets for Visual Processing, Frontiers in Neuroscience, 6(00032), DOI: 10.3389/fnins.2012.00032 (open access), 2012

Clement Farabet, Yann LeCun, Koray Kavukcuoglu, Eugenio Culurciello, Berin Martini, Polina Akselrod and Selcuk Talay: Large-Scale FPGA-based Convolutional Networks, in Bekkerman, Ron and Bilenko, Mikhail and Langford, John (Eds), Scaling up Machine Learning: Parallel and Distributed Approaches, Cambridge University Press, 2011

Koray Kavukcuoglu, Pierre Sermanet, Y-Lan Boureau, Karol Gregor, Michaël Mathieu and Yann LeCun: Learning Convolutional Feature Hierachies for Visual Recognition, Advances in Neural Information Processing Systems (NIPS 2010), 23, 2010

Koray Kavukcuoglu, Marc’Aurelio Ranzato, Rob Fergus and Yann LeCun: Learning Invariant Features through Topographic Filter Maps, Proc. International Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR’09), IEEE, 2009

Raia Hadsell, Pierre Sermanet, Marco Scoffier, Ayse Erkan, Koray Kavackuoglu, Urs Muller and Yann LeCun: Learning Long-Range Vision for Autonomous Off-Road Driving, Journal of Field Robotics, 26(2):120-144, February 2009

Marc’Aurelio Ranzato, Y-Lan Boureau and Yann LeCun: Sparse feature learning for deep belief networks, Advances in Neural Information Processing Systems (NIPS 2007), 20, 2007

M. Osadchy, Y. LeCun and M. Miller: Synergistic Face Detection and Pose Estimation with Energy-Based Models, Journal of Machine Learning Research, 8:1197-1215, May 2007

河原 達也

河原 達也

京都大学 学術情報メディアセンター 教授

講演テーマ

「音声認識における最近のパラダイムシフト」2014年7月13日

講演概要 講演概要

音声認識技術の歴史的変遷を概観し、今後の展望について述べる。特に、音声認識の統計モデル学習の方法論に関して、従来”常識”と考えられてきた枠組みが徐々に変遷していることを説明する。まず、学習に必要なデータが膨大になり、コーパスを人手で編纂するという方法論は限界に達し、自然に超大規模に集積するビッグデータパラダイムが近年の実用システム成功の鍵であることを述べる。次に、HMMやN-gramなどの生成モデルに代わって、最近研究コミュニティで主流になっている識別モデル、特にDNNについて概観する。その上で、従来の通信路モデル(情報理論)に基づく定式化が、より一般的な枠組みに置き換えられるべきであることを指摘する。

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

1987年 京都大学工学部情報工学科卒業.
1989年 同大学院修士課程修了.
1990年 同博士後期課程退学.
同年  京都大学工学部助手.
1995年 同助教授.
1998年 同大学情報学研究科助教授.
2003年 同大学学術情報メディアセンター教授.現在に至る.
この間,
1995年~1996年 米国・ベル研究所客員研究員.
1998年~2006年 ATR客員研究員.
1999年~2004年 国立国語研究所非常勤研究員.
2006年~ 情報通信研究機構短時間研究員・招へい専門員.
音声言語処理,特に音声認識及び対話システムに関する研究に従事.
IEEE SPS Speech TC委員,
IEEE ASRU 2007 General Chair,
INTERSPEECH 2010 Tutorial Chair,
IEEE ICASSP 2012 Local Arrangement Chair,
言語処理学会理事,
情報処理学会音声言語情報処理研究会主査,
APSIPA理事
情報処理学会理事
を歴任.
情報処理学会,日本音響学会,電子情報通信学会,人工知能学会,言語処理学会,IEEE,ISCA,APSIPA 各会員.

主な受賞・栄誉等

1997 日本音響学会 粟屋潔学術奨励賞

2000 情報処理学会 坂井記念特別賞

2011 情報処理学会 喜安記念業績賞

2012 情報処理学会 論文賞

2012 ドコモ・モバイル・サイエンス賞

2012 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞

主要論文リスト

●Spontaneous Speech Recognition
T. Kawahara.
Transcription system using automatic speech recognition for the Japanese Parliament (Diet).
In Proc. AAAI/IAAI, pp.2224–2228, 2012.
Y. Akita and T. Kawahara.
Statistical transformation of language and pronunciation models for spontaneous speech recognition.
IEEE Trans. Audio, Speech \& Language Process., Vol.18, No.6, pp.1539–1549, 2010.

●Indexing and Annotation of Lectures & Meetings
G. Neubig, Y. Akita, S.Mori, and T. Kawahara.
A monotonic statistical machine translation approach to speaking style transformation.
Computer Speech and Language, Vol.26, No.5, pp.349–370, 2012.
T. Kawahara, M. Hasegawa, K. Shitaoka, T. Kitade, and H. Nanjo.
Automatic indexing of lecture presentations using unsupervised learning of presumed discourse markers.
IEEE Trans. Speech \& Audio Process., Vol.12, No.4, pp. 409–419, 2004.
M. Nishida and T.Kawahara.
Speaker model selection based on Bayesian information criterion applied to unsupervised speaker indexing.
IEEE Trans. Speech \& Audio Process., Vol.13, No.4, pp. 583–592, 2005.

●Speech Understanding
I. R.Lane, T. Kawahara, T. Matsui, and S. Nakamura.
Out-of-domain utterance detection using classification confidences of multiple topics.
IEEE Trans. Audio, Speech \& Language Process., Vol.15, No.1, pp.150–161, 2007.
H. Nanjo and T. Kawahara.
A new ASR evaluation measure and minimum Bayes-risk decoding for open-domain speech understanding.
In Proc. IEEE-ICASSP, Vol.1, pp.1053–1056, 2005.
T. Kawahara, C.-H. Lee, and B.-H. Juang.
Flexible speech understanding based on combined key-phrase detection and verification.
IEEE Trans. Speech \& Audio Process., Vol.6, No.6, pp. 558–568, 1998.)

●Spoken Dialogue Systems
T. Misu and T. Kawahara.
Bayes risk-based dialogue management for document retrieval system with speech interface.
Speech Communication, Vol.52, No.1, pp.61–71, 2010.
T. Misu and T. Kawahara.
Dialogue strategy to clarify user’s queries for document retrieval system with speech interface.
Speech Communication, Vol.48, No.9, pp.1137–1150, 2006.
K. Komatani, S. Ueno, T. Kawahara, and H. G. Okuno.
User modeling in spoken dialogue systems to generate flexible guidance.
User Modeling and User-Adapted Interaction, Vol.15, No.1, pp. 169–183, 2005.

●Robust Speech Processing
D. Cournapeau, S. Watanabe, A. Nakamura, and T. Kawahara.
Online unsupervised classification with model comparison in the Variational Bayes framework for voice activity detection.
IEEE J. Selected Topics in Signal Processing, Vol.4, No.6, pp.1071–1083, 2010.
R. Gomez and T. Kawahara.
Robust speech recognition based on dereverberation parameter optimization using acoustic model likelihood.
IEEE Trans. Audio, Speech \& Language Process., Vol.18, No.7, pp.1708–1716, 2010.
Y. Kida and T. Kawahara.
Evaluation of voice activity detection by combining multiple features with weight adaptation.
In Proc. INTERSPEECH, pp.1966–1969, 2006.

●CALL (Computer Assisted Language Learning)
T. Kawahara and N. Minematsu.
Computer-Assisted Language Learning (CALL) Systems.
Tutorial at InterSpeech 2012.
H. Wang, C. J. Waple, and T. Kawahara.
Computer assisted language learning system based on dynamic question generation and error prediction for automatic speech recognition.
Speech Communication, Vol.51, No.10, pp.995–1005, 2009.
Y. Tsubota, T. Kawahara, and M. Dantsuji.
An English pronunciation learning system for Japanese students based on diagnosis of critical pronunciation errors.
ReCALL Journal, Vol.16, No.1, pp.173–188, 2004.

●Large Vocabulary Continuous Speech Recognition Platform
A. Lee and T. Kawahara.
Recent development of open-source speech recognition engine Julius.
In Proc. APSIPA ASC, pp.131–137, 2009.
T. Kawahara, A. Lee, K. Takeda, K. Itou, and K. Shikano.
Recent progress of open-source LVCSR engine Julius and Japanese model repository.
In Proc. ICSLP, pp.3069–3072, 2004.
A. Lee, T. Kawahara, and K. Shikano.
Julius — an open source real-time large vocabulary recognition engine.
In Proc. EUROSPEECH, pp.1691–1694, 2001.

●Multi-modal Conversation Analysis
T. Kawahara.
Multi-modal sensing and analysis of poster conversations toward smart posterboard.
In Proc. SIGdial Meeting Discourse \& Dialogue, pp.1–9 (keynote speech), 2012.

原田 達也

原田 達也

東京大学 情報理工学系研究科 教授

講演テーマ

「画像コンテンツと自然言語の相互理解」2014年7月13日

講演概要 講演概要

機械学習の発展や計算機ハードウェアの性能向上に伴い,対象物体が明確に映った画像であれば,近年の画像認識システムを用いることで多種多様な画像を適切に識別可能となりつつある.しかしながら,画像を単語のみで記述することは,画像に映るコンテンツを十分に表現しているとはいいがたく,画像内の物体やシーン間の関係性も考慮して,画像を文章で記述可能な技術が望まれている.この技術が実現すれば,膨大な動画像の自動要約や,環境を理解し人と言葉でコミュニケーションを行う知能ロボットなどの幅広い応用につながると考えられるが,画像の自然言語記述は画像のコンテキストを考慮する必要があるため,画像識別よりも困難な課題である.

本講演では,我々の研究室で進めてきた画像の認識手法,文章記述手法,さらに高次特徴から新規画像を生成する手法を解説し,画像コンテンツと自然言語とのギャップを橋渡す方策を紹介する.

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

2001年3月 博士(工学),東京大学 大学院工学系研究科
2001年4月~12月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2001年12月 東京大学 大学院情報理工学系研究科 助手
2006年4月 東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師
2009年4月 東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
2013年4月 東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授.現在に至る.

主な受賞・栄誉等

① ACM Multimedia 2011 で行われた Grand Challenge において,Best Application of a Theory Framework Special Prize を受賞(2011年11月30日

② 日本ロボット学会論文賞受賞(2009年9月16日)

③ ECCV2012で行われた大規模画像認識コンテスト(ILSVRC2012)において,1位(Fine-Grained Classification)と2位(Classification)を受賞(2012年10月12日)

主要論文リスト

(1) Hiroharu Kato, Tatsuya Harada. Image Reconstruction from Bag-of-Visual-Words. In The Twenty-Seventh IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR 2014), accepted, 2014.

(2) Yoshitaka Ushiku, Tatsuya Harada. Three Guidelines of Online Learning for Large-Scale Visual Recognition. In The Twenty-Seventh IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR 2014), accepted, 2014.

(3) Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Graphical Gaussian Vector for Image Categorization. the Twenty-Sixth Annual Conference on Neural Information Processing Systems (NIPS 2012), pp.1556-1564, 2012.

(4) Yoshitaka Ushiku, Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Efficient Image Annotation for Automatic Sentence Generation. the 20th Annual ACM International Conference on Multimedia (ACM MM 2012), pp.549-558, 2012.

(5) Yuya Yamashita, Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Causal Flow. IEEE Transactions on Multimedia, Vol.3, No.3, pp.619-629, 2012.

(6) Takashi Shibuya, Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Reliable index for measuring information flow. Phys. Rev. E 84, 061109 (2011)

(7) Tatsuya Harada, Yoshitaka Ushiku, Yuya Yamashita, and Yasuo Kuniyoshi. Discriminative Spatial Pyramid. In The Twenty-Forth IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR 2011), pp.1617-1624, 2011.

(8) Tatsuya Harada, Hideki Nakayama, and Yasuo Kuniyoshi. Improving Local Descriptors by Embedding Global and Local Spatial Information. In The 11th European Conference on Computer Vision (ECCV 2010), 2010.

(9) Hideki Nakayama, Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Global Gaussian Approach for Scene Categorization Using Information Geometry. In The Twenty-Third IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR 2010), 2010.

(10) Takashi Shibuya, Tatsuya Harada, and Yasuo Kuniyoshi. Causality Quantification and its Applications: Structuring and Modeling of Multivariate Time Series. Proc. of the 15th ACM SIGKDD International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD 2009), pp.787-795, 2009.

(11) Rie Matsumoto, Hideki Nakayama, Tatsuya Harada and Yasuo Kuniyoshi. Journalist Robot: Robot System Making News Articles from Real World. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS 2007), pp.1234-1241, 2007.

石黒 浩

石黒 浩

大阪大学 基礎工学研究科 特別教授
ATR 石黒浩特別研究所 客員所長(ATRフェロー)

講演テーマ

「人間,アンドロイド,メディア」2014年7月13日

講演概要 講演概要

我々人間は,人間を認識するための生まれながらの脳の機能を持つ.それ故に,人間に酷似したロボット,すなわちアンドロイドは,人間とロボットやコンピュータとの関わりにおける理想的な情報メディアになる.

講演者は,これまでに様々な人と関わるロボットやアンドロイドロイドを開発してきた.ジェミノイドは実在の人間をモデルにした遠隔操作アンドロイドであり,操作者の存在を遠くの地に転送することができる.操作者はジェミノイドを通して誰かと話しをすると,そのアンドロイドの体を自分の体であるかのように認識し,誰かがジェミノイドに触ると,自分の体に触られたかのような感覚を持つ.しかしながら,ジェミノイドは,万人に理想的な情報メディアではない.たとえば,高齢者は,成人や成人型のアンドロイドを話すことに,しばしばためらいを感じる.

問題は万人に理想的なメディアとは何であるかである.そのことを調べるために,講演者は,人と関わる人間型ロボットのミニマルデザインを提案している.そのロボットはテレノイドと呼ぶ.ジェミノイドは実在人間の完全なコピーであり,いわば人と関わる人間型ロボットのマキシマムデザインというべきものである.一方で,ミニマルデザインは人間のように見えるが年齢や性別を判定することができないデザインである.高齢者はこのテレノイドとの対話を大変楽しむ.本講演では,これらロボットの設計原理と人間との対話における影響について議論する.

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

1991 年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了.工学博士.
その後,京都大学情報学研究科助教授,大阪大学工学研究科教授等を経て,2009 年より大阪大学基礎工学研究科教授.
2013 年大阪大学特別教授。ATR 石黒浩特別研究室室長(ATR フェロー).専門は,ロボット学,アンドロイドサイエンス,センサネットワーク等.
2011 年大阪文化賞受賞.

主な受賞・栄誉等

2011 年,大阪文化賞を受賞

2010 年より, ATR フェロー

2013 年より, 大阪大学 特別教授

主要論文リスト

1. H. Sumioka, A. Nakae, R. Kanai and H. Ishiguro. Huggable communication medium decreases cortisol levels. Scientific Reports. 3034, pp. 1-6, 2013.

2. M. Alimardani, S. Nishio and H. Ishiguro. Humanlike robot hands controlled by brain activity arouse illusion of ownership in operators. Scientific Reports, 3(2396), 2013.

6. T. Kanda and H. Ishiguro. Human-robot interaction in social robotics. CRC Press, 2012.

13. H. Ishiguro, T. Minato, Y. Yoshikawa and M. Asada. Humanoid platform for cognitive developmental robotics. International Journal of Humanoid Robotics, 8(3), pp. 391-418, 2011.

43. H. Ishiguro. Scientific issues concerning androids. International Journal of Robotics Research, 26(1), pp. 105-117, 2007.

45. H. Ishiguro. Interactive Humanoids and Andoroids: Promise and Reality, Proceedings of the IEEE, 95 (4), pp. 699, 2007.

46. H. Ishiguro. Android Science: Conscious and subconscious recognition. Connection Science, 18(4), pp. 319-332, 2006.

基礎科学部門「生命科学」

竹市 雅俊

竹市 雅俊

理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター センター長

講演テーマ

「細胞が集まって体ができるしくみ」2014年7月12日

講演概要 講演概要

私達の体は細胞が集まってできている。これは細胞接着分子というタンパク質の作用のお陰である。様々な接着タンパク質が知られており,その中で,「カドヘリン」は細胞同士を結びつけるためにとくに重要である。細胞表面に突き出したカドヘリン分子が他の細胞のカドヘリンと結びつき,細胞を連結させる。カドヘリンは細胞をたんにくっつけるだけでなく,他の分子(とくにアクチン)と連携して細胞の並び方や接着の強度までも変えてしまう。この過程によって,細胞集団 (組織 )の形や構造が制御され,体のデザインに貢献する。

“Morphogenetic roles of cadherin superfamily members”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Cadherins are a group of transmembrane proteins, which have initially been identified as “adhesion molecules”. However, through genetic analysis, a number of related molecules, which share a unique Ca2+-binding motif at their extracellular domains, have been found. Although any of these molecules apparently function as homophilic or heterophilic adhesive receptors, their biological roles diverge. For example, they function as regulators of planar cell polarity, cell proliferation, intercellular repulsion, cell migration and so on. This diversification is brought about by the binding of distinct molecules to the intracellular domain of each member. I will discuss unique roles of these molecules in animal morphogenesis, focusing on particular superfamily members.

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

1943年,愛知県生まれ。66年名古屋大学理学部生物学科卒業,69年同大学大学院理学研究科博士課程退学。70年京都大学理学部生物物理学科助手。73 年京都大学理学博士。78年同大学理学部生物物理学科助教授,86−99年同大学同学科教授。この間,74-76年カーネギー研究所発生学部研究員,92-97年岡崎基礎生物学研究所客員教授,93-98年京都大学理学部付属分子発生生物学研究センターセンター長。99-02年京都大学大学院生命科学研究科教授。02年理化学研究所発生・再生科学総合研究センター センター長。

主な受賞・栄誉等

平成6年  朝日賞

平成8年  上原賞

平成8年  日本学士院賞

平成12年  日本学士院会員

平成13年  国際発生生物学会ロス・ハリソン賞

平成13年  慶應医学賞

平成16年  American Academy of Arts & Sciences 外国人名誉会員

平成16年  文化功労者

平成17年  日本国際賞

平成19年  米国科学アカデミー外国人会員

平成21年  ヨーロッパ分子生物学機構(EMBO)外国人会員

平成24年  トムソン・ロイター引用栄誉賞

主要論文リスト

(1) Takeichi, M. (1977) Functional correlation between cell adhesive properties and some cell surface proteins. J. Cell Biol. 75, 464-474.

(2) Yoshida, N. and Takeichi, M. (1982) Teratocarcinoma cell adhesion: Identification of a cell surface protein involved in calcium-dependent cell aggregation. Cell 28, 217-224.

(3) Yoshida-Noro, C., Suzuki, N. and Takeichi, M. (1984) Molecular nature of the calcium-dependent cell-cell adhesion system in mouse teratocarcinoma and embryonic cells studied with a monoclonal antibody. Develop. Biol. 101, 19-27.

(4) Hatta, K. and Takeichi, M. (1986) Expression of N-cadherin adhesion molecules associated with early morphogenetic events in chicken embryos. Nature 320, 447-449.

(5) Shirayoshi, Y., Hatta, K., Hosoda, M., Tsunasawa, S., Sakiyama, F. and Takeichi, M. (1986) Cadherin cell adhesion molecules with distinct binding specificities share a common structure. EMBO J. 5, 2485-2488.

(6) Nagafuchi, A., Shirayoshi, Y., Okazaki, K., Yasuda, K. and Takeichi, M. (1987) Transformation of cell adhesion properties by exogenously introduced E-cadherin cDNA. Nature 329, 341-343.

(7) Nose, A., Nagafuchi, A. and Takeichi, M. (1988) Expressed recombinant cadherins mediate cell sorting in model systems. Cell 54, 993-1001.

(8) Hirano, S., Kimoto, N., Shimoyama, Y., Hirohashi, S. and Takeichi, M. (1992) Identification of a neural-catenin as a key regulator of cadherin function and multicellular organization. Cell 70, 293-301.

(9) Oda, H., Uemura, T., Harada, Y., Iwai, Y. and Takeichi, M. (1994) A Drosophila homolog of cadherin associated with Armadillo and essential for embryonic cell-cell adhesion. Develop. Biol., 165, 716-726.

(10) Uchida, N., Honjo, Y., Johnson, K.R., Wheelock, M.J. and Takeichi, M. (1996) The catenin/cadherin adhesion system is localized in synaptic junctions, bordering the active zone. J. Cell Biol. 135, 767-779.

(11) Usui, T., Shima, Y., Shimada, Y., Hirano, S., Burgess, R.W., Schwarz, T.L., Takeichi, M., and Uemura, T. (1999) Flamingo, a seven-pass transmembrane cadherin, regulates planar cell polarity under the control of Frizzled. Cell 98, 585-595.

(12) Abe, K., Chisaka, O., van Roy, F., and Takeichi, M. (2004) Stability of dendritic spines and synaptic contacts is controlled by N-catenin. Nature Neuroscience 7, 357-363

(13) Meng, W., Mushika, Y., Ichii, T., and Takeichi, M. (2008) Anchorage of microtubule minus-ends to adherens junctions regulates epithelial cell-cell contacts. Cell 135, 948-959

(14) Nishimura, Y., Honda, and Takeichi. M. (2012) Planar cell polarity links axes of spatial dynamics in neural tube closure. Cell 25, 1084-1097.

ロナルド エヴァンス

ロナルド エヴァンス

米国ソーク研究所 教授
米国ハワード・ヒューズ医学研究所 主任研究員

講演テーマ

「核内受容体と運動模倣薬:人類の健康へのロードマップ」2014年7月12日

講演概要 講演概要

高脂肪,高カロリーの食事に加え,日常生活で身体を動かす機会がますます減ったことで,糖尿病や肥満が世界的に蔓延している。2014年には,糖尿病または糖尿病予備軍の患者は米国国内で1億人以上,世界全体では5億人以上にのぼり,今や肥満は世界的流行病(pandemic disease)に分類されている。「肥満による糖尿病(2型糖尿病)」では,失明,腎不全,脳卒中,がん,心疾患,神経障害,四肢の喪失,不妊症等の合併症が,連鎖的に起こり,最後は死に至る。この合併症連鎖により,2型糖尿病は近い将来,医療予算の最も大きな部分を占めるようになることが予想される。

運動不足は今や重要な健康ハザードのひとつとして認識されており,肥満や心血管疾患,2型糖尿病といったさまざまな生活習慣病の原因の一部にもなっている。では,どうすればこの運動不足という難題を乗り越えられるのだろうか。我々は,マウスの走行持久力を分子遺伝学的に解析することによって,「運動模倣薬(エクササイズピル)」と呼ぶ新しい種類の薬剤の開発に成功した。医学における大きな夢のひとつは,特に入院患者や車椅子生活者,肢切断者,身体虚弱者など,身体を動かす機会を奪われた人々に健康をもたらす錠剤を作ることである。このエクササイズピルは,PPARδと呼ばれる核内ホルモン受容体および代謝を制御するリン酸化酵素であるAMPキナーゼを標的とすることによって,身体を健康な状態に導けるように作られている。すなわち,これら各々を標的とする薬剤を服用することで,筋肉での糖や脂肪の燃焼が促進されるような遺伝子発現プログラムが動きだし,実際に運動したのと同じように全身の健康を高めることができる。今はまだ臨床試験段階だが,持久力を要する運動選手の間では,運動能力増強剤としていち早くこれらの薬剤が(違法に)使用され始めている。治療薬としてもさまざまな用途の可能性があり,例えば,筋ジストロフィー,肥満,糖尿病,末梢動脈疾患,アテローム性動脈硬化症,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療などが考えられる。もしもエクササイズピルが手に入るとしたら,あなたはそれを使わずにいられますか?

“Nuclear Receptors and Metabolism: From Feast to Famine”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Survival requires the ability to adapt to cycles of feast and famine, yet the underlying mechanisms to maintain metabolic balance during extremes of nutrient excess remain poorly understood. As part of a screen to identify genes that respond to feast and famine cues, we discovered that the classic growth factor FGF1 is induced in white adipose tissue (WAT) in response to high-fat-diet (HFD) and repressed during a fast, pointing to an unexpected metabolic function. Thus, FGF1 participates in both fed-state and fasted-state responses. In WAT, FGF1 is induced by HFD through a PPAR-gamma dependent mechanism and thus is also responsive to PPARg drugs such as Actos and Avandia. In contrast, on HFD, FGF1 knockout mice develop an aggressive diabetic phenotype, with adipose progressively becoming inflamed, fibrotic and necrotic and simply unable to adapt to nutrient stress.

As loss of FGF1 by knockout results in a diabetic phenotype, we speculated that increasing FGF1 levels by direct injection in diabetic mice, could potentially lower glucose. As a proteoglycan binding protein, endogenous FGF1 are locally restricted. Published studies with injected FGF1 show very rapid clearance and no known physiologic effect. Nonetheless, when we ‘endocrinize’ FGF1 by simple injection into the body of obese diabetic mice, potent glucose lowering effects are found. Thus, more that 30 years after its discovery as a growth factor, ‘endocrinization’ of FGF-1in a diabetic mouse, uncovers a potent yet hidden insulin sensitizing activity with great potential as a new therapy in the treatment of metabolic disease.

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

ロナルド エヴァンス博士は核内受容体とホルモンのシグナル伝達のメカニズムに関する研究で知られている。彼は,ステロイド,レチノイド,甲状腺ホルモンの受容体をコードする遺伝子のクローニングにより,すべての核内ホルモン受容体の構造が進化的に保存されていること明らかにした。これらのホルモンとその受容体は生殖生理学のみならず糖分,塩分,カルシウムや脂肪代謝の制御に関わる。さらに,これらの受容体は骨粗鬆症,炎症,喘息に加え,乳がん,前立腺がん,白血病の治療を行う際の主要な標的となる。

エヴァンス博士によるステロイド受容体の構造解明は,「オーファン(孤児)受容体」と呼ばれる一群の構造的によく似た蛋白質が存在するという驚くべき発見へと繋がった。そしてそれらに対する解析の結果,それまで知られていなかったコレステロール,胆汁酸,脂肪酸を介したシグナル伝達経路の存在が明らかとなり,健康維持と病気治療の見方を根本から変えた。

エヴァンス博士は米国ソーク生物学研究所の遺伝子発現研究室の教授であり,米国ハワード・ヒューズ医学研究所の主任研究員を兼務する。また,小児麻痺救済撲滅運動(March of Dimes)が支援するソーク研究所の発生・分子生物学部門の部門長に就いている。彼はアルバート・ラスカー基礎医学研究賞 (2004), ウルフ賞医学部門 (2012)を受賞したほか,全米科学アカデミーと米国医学研究所の会員である。

主な受賞・栄誉等

2014   Honorary Degree, University of Groningen, Netherlands

2013  Distinguished Leader in Insulin Resistance Award, World Congress in Insulin Resistance, Diabetes & Cardiovascular Disease

2013  Inaugural Lifetime Achievement Award, Samuel Waxman Cancer Research Foundation

2013  Dale Medal, Society for Endocrinology, UK

2012  Wolf Prize in Medicine, Wolf Foundation, Israel

2011  The Ellison Medical Foundation – Senior Scholar in Aging

2011  Rolf Sammet Guest Professorship Award, Goethe University, Frankfurt

2010  Heart Failure Association of America Award

2009  Ernst Knobil Award, UTHSCH

2009  Honorary Degree, Albany Medical College

2009  Honorary Degree, Mt. Sinai School of Medicine

2008  Endocrine Regulation Prize, IPSEN Foundation

2007  Albany Medical Center Prize in Medicine and Biomedical Research

2006  Harvey Prize, Technion University, Israel

2006  BIOCOM Life Sciences Heritage Award

2006  Gairdner Foundation International Award

2005  ”Grande Medaille d’Or” of the French Academy of Sciences

2005  Glen T. Seaborg Medal, UCLA

2004  Albert Lasker Basic Medical Research Awar

2004  Simon M. Shubitz Cancer Prize and Lectureship, The University of Chicago

2003  Institute of Medicine of the National Academies

2003  Keio Medical Science Prize

2003  General Motors Cancer Research Foundation Alfred P. Sloan Medal

2003  March of Dimes Prize in Developmental Biology

2002  City of Medicine Award, Duke University

2000  1st Bristol-Myers Squibb Award for Distinguished Achieve. in Metab. Research

1999  Fred Conrad Koch Award, The Endocrine Society

1997  Gerald Aurbach Memorial Award, Association for Bone & Mineral Research

1997  American Academy of Arts and Sciences, Fellow

1996  Morton Lecture and Award, Biochemical Society, Univ. of Liverpool

1994  Dickson Prize in Medicine 1994-95, University of Pittsburgh

1994  California Scientist of the Year, 1994, California Museum of Science and Industry and the California Museum Foundation

1994  Transatlantic Medal Society for Endocrinology

1993  Edwin B. Astwood Lectureship Award, The Endocrine Society

1993  Fellow, The American Academy of Microbiology

1993   Robert J. and Claire Pasarow Foundation Award for Cancer Research

1992  Osborne and Mendel Award, American Institute of Nutrition

1991  Rita Levi Montalcini Award, Fidia Research Foundation Neuroscience

1991  Gregory Pincus Memorial Award, Worcester Found. for Experimental Biology

1990  Eleventh C.P. Rhoads Memorial Award, American Assoc. for Cancer Research

1989  Van Meter/Rorer Pharmaceuticals Prize, American Thyroid Association

1989  National Academy of Sciences, Member

1988  The Louis S. Goodman and Alfred Gilman Award by the American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics

1988  Gregory Pincus Medal, Laurentian Society

1975-78  National Institutes of Health, Fellowship

1975  Cancer Research Comm. of California, Research Associate Fellowship

1974  University of California Alumni, Award for Academic Distinction

主要論文リスト

Primary structure and expression of a functional human glucocorticoid receptor cDNA.

Hollenberg SM, Weinberger C, Ong ES, Cerelli G, Oro A, Lebo R, Thompson EB, Rosenfeld MG, Evans RM. Nature. 1985 Dec 19-1986 Jan 1;318(6047):635-41. PMID: 2867473

The c-erb-A gene encodes a thyroid hormone receptor. Weinberger C, Thompson CC, Ong ES, Lebo R, Gruol DJ, Evans RM. Nature. 1986 Dec 18-31;324(6098):641-6. PMID: 2879243

Identification of a receptor for the morphogen retinoic acid. Giguere V, Ong ES, Segui P, Evans RM. Nature. 1987 Dec 17-23;330(6149):624-9. PMID: 2825036

The steroid and thyroid hormone receptor superfamily. Evans RM. Science. 1988 May 13;240(4854):889-95. Review. PMID: 3283939.

Nuclear receptor that identifies a novel retinoic acid response pathway. Mangelsdorf DJ, Ong ES, Dyck JA, Evans RM. Nature. 1990 May 17;345(6272):224-9. PMID: 2159111

9-cis retinoic acid is a high affinity ligand for the retinoid X receptor. Heyman RA, Mangelsdorf DJ, Dyck JA, Stein RB, Eichele G, Evans RM, Thaller C. Cell. 1992 68: 397-406, 1992 PMID: 1310260

Structural determinants of nuclear receptor assembly on DNA direct repeats. Rastinejad F, Perlmann T, Evans RM, Sigler PB. Nature. 1995 May 18;375(6528):203-11. PMID: 7746322

LXR, a nuclear receptor that defines a distinct retinoid response pathway. Willy PJ, Umesono K, Ong ES, Evans RM, Heyman RA, Mangelsdorf DJ. Genes Dev. 1995 May 1;9(9):1033-45. PMID: 7744246

15-Deoxy-delta 12, 14-prostaglandin J2 is a ligand for the adipocyte determination factor PPAR gamma. Forman BM, Tontonoz P, Chen J, Brun RP, Spiegelman BM, Evans RM. Cell. 1995 Dec 1;83(5):803-12. PMID: 8521497

Peroxisome-proliferator-activated receptor delta activates fat metabolism to prevent obesity.
Wang YX, Lee CH, Tiep S, Yu RT, Ham J, Kang H, Evans RM. Cell. 2003 Apr 18;113(2):159-70. PMID: 12705865

AMPK and PPARdelta agonists are exercise mimetics. Narkar VA, Downes M, Yu RT, Embler E, Wang YX, Banayo E, Mihaylova MM, Nelson MC, Zou Y, Juguilon H, Kang H, Shaw RJ, Evans RM. Cell. 2008 Aug 8;134(3):405-15. doi: 10.1016/j.cell.2008.06.051. Epub 2008 Jul 31. PMID: 1867480

Cryptochromes mediate rhythmic repression of the glucocorticoid receptor. Lamia KA, Papp SJ, Yu RT, Barish GD, Uhlenhaut NH, Jonker JW, Downes M, Evans RM. Nature. 2011 Dec 14;480(7378):552-6. doi: 10.1038/nature10700. PMID: 22170608

A PPARγ-FGF1 axis is required for adaptive adipose remodelling and metabolic homeostasis. Jonker JW, Suh JM, Atkins AR, Ahmadian M, Li P, Whyte J, He M, Juguilon H, Yin YQ, Phillips CT, Yu RT, Olefsky JM, Henry RR, Downes M, Evans RM. Nature. 2012 May 17;485(7398):391-4. doi: 10.1038/nature10998. PMID: 22522926

ロバート ワインバーグ

ロバート ワインバーグ

米国ホワイトヘッド研究所 主席研究員
米国マサチューセッツ工科大学 教授

講演テーマ

「癌はどのように拡がるのか」2014年7月12日

講演概要 講演概要

過去30年に及ぶ研究により,癌がどのように発生するかについて多くのことが明らかになってきた。だが,この絵には肝心な部分が欠けている。なかでも,最初の癌発生部位から全身の遠隔組織へと,癌細胞がどのようにして拡がっていくのかが描かれていない。癌細胞が全身に広がることによる転移性癌が,癌関連死の約90%の原因であることを考えると,これは全く残念なことだと言わざるを得ない。しかし,過去6~8年間に発生生物学を含む多様な研究領域のさまざまな研究によって,癌細胞が上皮間葉転換と呼ばれる細胞生物学的プログラムを活性化することで,転移のような悪性形質を獲得することが明らかになった。上皮間葉転換は正常胚の発生にきわめて重要な役割を果たしているが,癌細胞はそれまで沈黙していたこのプログラムを活性化することによって浸潤および転移の能力を獲得するのである。さらに,この上皮間葉転換プログラムは癌細胞に造腫瘍能,すなわち体内の遠隔部位で新たに腫瘍として成長を開始する能力をももたらす。これもまた癌が転移するために不可欠な能力である。

“Cancer Stem Cells and Metastasis”2014年7月13日

講演概要 講演概要

The epithelial-mesenchymal transition confers on both normal and neoplastic cancer cells an enhanced ability to move and, in the case of cancer cells, to actively invade. Moreover, some evidence indicates that activation of an EMT program in already-formed primary carcinoma cells is sufficient to enable such cells to disseminate from primary tumors to sites of distant metastasis. The mechanisms that are responsible for the activation of this program can be traced largely to heterotypic signals that the carcinoma cells receive from the adjacent recruited stroma, which carries both mesenchymal stem cells and macrophages, both of which respond to carcinoma cells by releasing reciprocally paracrine signals that either provoke or maintain expression of the EMT program. Among the other consequences of the EMT program, carcinoma cells may become poised to enter into the cancer stem cell (CSC) state, which confers on them tumor-initiating ability — a function that is crucial to the successful initiation of metastases. Recent work indicates that non-CSCs within tumors can enter into a CSC state, and that this ability to dedifferentiate differs in different types of primary carcinoma cells. Our recent research indicates that this CSC-forming ability, at least in the case of human breast cancers, may serve as an important determinant of future clinical behavior. The EMT program also appears to operate after carcinoma cells have disseminated and extravasated. Hence, this program operates at multiple stages of the invasion-metastasis cascade to drive carcinoma cells to form the growths that threaten the lives of many cancer patients.

プロフィール

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簡単な履歴

ロバート・A・ワイバーグ博士はヒト癌遺伝子の世界的権威として著名である。ホワイトヘッド生物医学研究所の創設者・主席研究員であり,また,マサチューセッツ工科大学(MIT)においては,ルートヴィヒ癌センター初代センター長を務め,現在はダニエル・ルートヴィヒ称号教授として,癌研究を行っている。

過去30年の間に,ワインバーグ博士は癌の分子生物学的・遺伝的基盤に関わるブレークスルーとなる数々の大発見を行ってきた。たとえば,博士の研究室は1982年に初めてヒトの癌遺伝子を発見し,1986年には初めてヒト癌抑制遺伝子を発見した。ごく最近では,ワインバーグ博士らは,人の正常細胞が癌細胞に変わるのに必須の遺伝子変化を初めて特定した。

ワインバーグ博士の研究室は,癌遺伝子,癌原遺伝子(プロトオンコジーン),そして腫瘍抑制遺伝子が,細胞増殖を制御する複雑な回路の中で,それぞれどのような役割をになっているのかに大きな関心を抱いている。博士の研究室は,遺伝的性質が完全に定義されたヒト癌細胞を作り出すことに,最近,初めて成功した。ワインバーグ博士はこの知見を特に乳癌の診断や治療方法の改善に応用したいと考えている。現在,彼の研究室は,癌幹細胞とも呼ばれる特に悪性度が高い細胞集団がどのようにして転移を誘導するのか,そして,この悪性度が高い細胞集団をどのようにしたら消滅させることができるのか理解しようと努めている。

6冊の著書と400件以上の著作の著者(あるいは編者)でもあるワインバーグ博士は,癌に関する包括的な教科書である「がんの生物学」(第2版)の著者として最も良く知られている。一方,一般人向けの著書もあり,「裏切り者の細胞がんの正体」,「がん研究レース―発がんの謎を解く」,アメリカ国立衛生研究所(NIH)前所長のヴァーマス博士と共著の「がんの遺伝子と生物学」などが知られている。

ワインバーグ博士は米国科学アカデミー会員,米国芸術・科学アカデミーのフェロー,そして米国哲学会や米国医学研究所の会員でもある。博士はまたアメリカ国家科学賞(1997),ウルフ賞医学部門(2007),オットバルブルク(Otto Warburg)メダル(2007),そして生命科学のブレークスルー賞(2013)を受賞している。

主な受賞・栄誉等

Discover Magazine Scientist of the Year, 1982

Warren Triennial Prize, Massachusetts General Hospital, 1983

Robert Koch Medal, Robert Koch Foundation, Germany, 1983

Hammer Cancer Foundation Award, 1984

National Academy of Sciences, U. S. Steel Foundation Award in Molecular Biology, 1984

Bristol-Myers Award for Distinguished Achievement in Cancer Research, 1984

Ph.D., honoris causa, Northwestern University, Evanston, Illinois, 1984

Antonio Feltrinelli Prize, Academia Nazionale dei Lincei, Rome, 1984

Member, U.S. National Academy of Sciences, 1985

Sloan Prize, General Motors Cancer Research Foundation, 1987

Ph.D., honoris causa, State University of New York, Stony Brook, 1988

Sc.D., honoris causa, Mount Sinai School of Medicine, City University of New York, 1989

Gairdner Foundation International Awards for Achievements in Medical Science, 1992

Charles Rodolphe Brupbacher Prize, 1995

G.H.A. Clowes Memorial Award, American Association for Cancer Research, 1996

Max Delbrück Medal of the Max-Delbrück Center, Berlin, 1996

Robert J. and Claire Pasarow Foundation, 1997

U.S. National Medal of Science, 1997

Keio Medical Science Foundation Prize, 1997

Killian Faculty Achievement Award, 1999

The Order Pour le Mérite for Sciences and the Arts, Berlin, 1999

Institute of Medicine, 2000

Wolf Foundation Prize, 2004

Prince of Asturias Science Award, Spain 2004

American Association for Cancer Research Landon Prize, 2006

Warren Alpert Prize, Harvard Medical School, 2007

MD. honoris causa, University of Uppsala, Sweden, 2007

InBev-Baillet Latour Health Prize, 2008

Breast Cancer Research Foundation, Jill Rose Award, 2008

Ph.D. honoris causa, Université Paris Descartes, 2008

ScD. honoris causa, Tufts University, 2009

La Grande Medaille, Academie des Sciences, Institut de France, 2009

MD. honoris causa, Helsinki University, 2010

Breakthrough Prize for Biomedical Research, 2013

主要論文リスト

1. Shih, C., Shilo, B., Goldfarb, M.P., Dannenberg, A., and Weinberg, R.A. (1979) Passage of Phenotypes of Chemically Transformed Cells via Transfection of DNA and Chromatin. Proc. Nat’l. Acad. Sci., USA, 76: 5714-5718.

2. Shih, C., Padhy, L.C., Murray, M., and Weinberg, R.A. (1981) Transforming Genes of Carcinomas and Neuroblastomas Introduced into Mouse Fibroblasts. Nature, 290: 261-264.

3. Shih, C. and Weinberg, R.A. (1982) Isolation of a Transforming Sequence from a Human Bladder Carcinoma Cell Line. Cell, 29: 161-169.

4. Parada, L.F., Tabin, C.J., Shih, C., and Weinberg, R.A. (1982) Human EJ Bladder Carcinoma Oncogene is Homologue of Harvey Sarcoma Virus ras Gene. Nature, 297: 474-478.

5. Tabin, C.J., Bradley, S.M., Bargmann, C.I., Weinberg, R.A., Papageorge, A.G., Scolnick, E.M., Dhar, R., Lowy, D.R., and Chang, E.H. (1982) Mechanism of Activation of a Human Oncogene. Nature, 300: 143-149.

6. Land, H., Parada, L.F., and Weinberg, R.A. (1983) Tumorigenic Conversion of Primary Embryo Fibroblasts Requires at Least Two Cooperating Oncogenes. Nature, 304: 596-602.

7. Friend, S.H., Bernards, R., Rogelj, S., Weinberg, R.A., Rapaport, J.M., Albert, D.M., and Dryja, T.P. (1986) A human DNA segment with properties of the gene that predisposes to retinoblastoma and osteosarcoma. Nature, 323: 643-646.

8. Hahn, W.C., Counter, C.M., Lundberg, A.S., Beijersbergen, R.L., Brooks, M.W., and Weinberg, R.A. (1999) Creation of human tumor cells with defined genetic elements. Nature, 400:464-468.

9. Yang, J., Mani, S.A., Liu Donaher, J., Richardson, A., Ramaswamy, S., Gitelman, I., and Weinberg, R.A. (2004) Twist, a master regulator of morphogenesis plays an essential role in tumor metastasis. Cell, 117:927-939.

10. Mani, S.A., Guo, W., Liao, M.J., Eaton, E.N., Ayyanan, A., Zhou, A.Y., Brooks, M., Reinhardt, F., Zhang, C.C., Shipitsin, M., Campbell, L.L., Polyak, K., Brisken, C., Yang, J. and Weinberg, R.A. (2008) The epithelial-mesenchymal transition generates cells with properties of stem cells. Cell, 133:704-715.

長田 重一

長田 重一

京都大学 医学研究科 教授

講演テーマ

“Exposure of phosphatidylserine, and engulfment of apoptotic cells”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Apoptotic cells are swiftly engulfed by macrophages, and digested in the lysosomes of the macrophages. If this process does not occurs properly, materials released from dead cells activate the immune system, leading to systemic lupus erythematosus (SLE)-type autoimmune disease. Macrophages recognize phosphatidylserine (PtdSer) exposed on the dead cell surface as an “eat me” signal. We recently identified two membrane proteins (TMEM16F and Xkr8) that are involved in scrambling of phospholipids on plasma membrane, thus exposing PtdSer. TMEM16F carries 8 transmembrane regions, and requires Ca2+ to mediate phospholipid scrambling. It plays an essential role in the PtdSer-exposure in activated platelets for blood clotting, and patients of Scott Syndrome who suffer bleeding disorder carry the loss-of function mutation in TMEM16F gene. Xkr8 is a protein carrying 6 transmembrane regions. Caspase 3 and 7, cysteine proteases that are activated during apoptosis, cleave off the C-terminal tail of Xkr8, and the cleaved Xkr8 promotes the PtdSer-exposure at plasma membrane. Here, I want to discuss how PdtSer is exposed during apoptotic cell death, and how dead cells are engulfed by macrophages.

プロフィール

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簡単な履歴

1972年   東京大学理学部生物化学科 卒業
1977年   東京大学大学院理学系研究科 博士課程修了
1977年   東京大学医科学研究所 助手
1977-1981年 チューリッヒ大学分子生物学研究所 研究員
1982-1987年 東京大学医科学研究所 助手
1987-1998年 大阪バイオサイエンス研究所 分子生物学部門 部長
1995-2007年 大阪大学大学院医学系研究科遺伝学 教授
2002-2007年 大阪大学大学院生命機能研究科時空生物学 教授
2007- 大阪大学 名誉教授
2007- 京都大学大学院医学研究科医化学 教授

主な受賞・栄誉等

1987年10月 日本生化学会奨励賞

1990年12月  第27回ベルツ賞

1992年10月  第9回持田記念学術賞

1993年 4月  日経BP技術賞,医療部門

1994年11月 ベーリング賞(ドイツ・マールブルグ大学)

1995年10月 コッホ賞(ドイツ・コッホ財団)

1995年10月 第13回大阪科学賞

1996年11月 ベーリング北里賞

1997年 1月  ラッカサーニュ賞(フランス癌連盟)

1997年 9月  メロン賞(アメリカ ピッツバーグ大学)

1998年 1月  朝日賞

1998年 2月  高松宮妃癌研究基金学術賞

1998年 3月 上原賞

2000年 6月 恩賜賞・学士院賞

2001年11月 文化功労者顕彰

2012年 4月 名誉博士号 (スイス・チューリッヒ大学)

2012年12月 デブレツェン賞 (ハンガリー・デブレツェン大学)

2013年 6月 京都大学孜孜賞

2013年11月 第18回慶應医学賞

主要論文リスト

(1) Nagata, S., Taira, H., Hall, A., Johnsrud, L., Streuli, M., Ecsodi, J., Boll, W., Cantell, K. & Weissmann, C. Synthesis in E. coli of a polypeptide with human leukocyte interferon activity. Nature 284, 316-320, 1980.

(2) Nagata, S., Mantei, N. & Weissmann, C. The structure of one of the eight or more distinct chromosomal genes for human interferon-. Nature 287, 401-408, 1980.

(3) Nagata, S., Tsuchiya, M., Asano, S., Kaziro, Y., Yamazaki, T., Yamamoto, O., Hirata, Y., Kubota, N., Oheda, M., Nomura, H. & Ono, M. Molecular cloning and expression of cDNA for human granuloctye colony-stimulating factor. Nature 319, 415-418, 1986.

(4) Fukunaga, R., Ishizaka-Ikeda, E., Seto, Y. & Nagata, S. Expression cloning of a receptor for murine granulocyte colony-stimulating factor. Cell 61, 341-350, 1990.

(5) Itoh, N., Yonehara, S., Ishii, A., Yonehara, M., Mizushima, S., Sameshima, M., Hase, A., Seto, Y. & Nagata, S. The polypeptide encoded by the cDNA for human cell surface antigen Fas can mediate apoptosis. Cell 66, 233-243, 1991.

(6) Watanabe-Fukunaga, R., Brannan, C.I., Copeland, N.G., Jenkins, N.A. & Nagata, S. Lymphoproliferation disorder in mice explained by defects in Fas antigen that mediates apoptosis. Nature 356, 314-317, 1992.

(7) Fukunaga, R., Ishizaka-Ikeda, E. & Nagata, S. Growth and differentiation signals mediated by two distinct regions in the cytoplasmic domain of G-CSF receptor. Cell 74, 1079-1087, 1993.

(8) Ogasawara, J., Watanabe-Fukunaga, R., Adachi, M., Matsuzawa, A., Kasugai, T., Kitamura, Y., Itoh, N., Suda, T. & Nagata, S. Lethal effect of the anti-Fas antibody in mice. Nature 364, 806-809, 1993.

(9) Suda, T., Takahashi, T., Golstein, P. & Nagata, S. Molecular cloning and expression of the Fas ligand: a novel member of the tumor necrosis factor family. Cell 75, 1169-1178, 1993.

(10) Takahashi, T., Tanaka, M., Brannan, C.I., Jenkins, N.A., Copeland, N.G., Suda, T. & Nagata, S. Generalized lymphoproliferative disease in mice, caused by a point mutation in the Fas ligand. Cell 76, 969-976, 1994.

(11) Enari, M., Hug, H. & Nagata, S. Involvement of an ICE-like protease in Fas-mediated apoptosis. Nature 375, 78-81, 1995.

(12) Nagata, S. & Golstein, P. The Fas death factor. Science 267, 1449-1456, 1995.

(13) Enari, M., Talanian, R.V., Wong, W.W. & Nagata, S. Sequential activation of ICE-like and CPP32-like proteases during Fas-mediated apoptosis. Nature 380, 723-726, 1996.

(14) Nagata, S. Apoptosis by death factor. Cell 88, 355-365, 1997.

(15) Enari, M., Sakahira, H., Yokoyama, H., Okawa, K., Iwamatsu, A. & Nagata, S. A caspase-activated DNase that degrades DNA during apoptosis and its inhibitor ICAD. Nature 391, 43-50, 1998.

(16) Sakahira, H., Enari, M. & Nagata, S. Cleavage of CAD inhibitor in CAD activation and DNA degradation during apoptosis. Nature 391, 96-99, 1998.

(17) Kawane, K., Fukuyama, H., Kondoh, G., Takeda, J., Ohsawa, Y., Uchiyama, Y. & Nagata, S. Requirement of DNase II for definitive erythropoiesis in the mouse fetal liver. Science 292, 1546-1549, 2001.

(18) Hanayama, R., Tanaka, M., Miwa, K., Shinohara, A., Iwamatsu, A. & Nagata, S. Identification of a factor that links apoptotic cells to phagocytes. Nature 417, 182-187, 2002.

(19) Nishimoto, S., Kawane, K., Watanabe-Fukunaga, R., Fukuyama, H., Ohsawa, Y., Uchiyama, Y., Hashida, N., Ohguro, N., Tano, Y., Morimoto, T., Fukuda, Y. & Nagata, S. Nuclear cataract caused by a lack of DNA degradation in the mouse eye lens. Nature 424, 1071-1074, 2003.

(20) Hanayama, R., Tanaka, M., Miyasaka, K., Aozasa, K., Koike, M., Uchiyama, Y. & Nagata, S. Autoimmune disease and impaired uptake of apoptotic cells in germinal centers of MFG-E8-deficient mice. Science 304, 1147-1150, 2004.

(21) Yoshida, H., Kawane, K., Koike, M., Mori, Y., Uchiyama, Y. & Nagata, S. Phosphatidylserine- dependent engulfment by macrophages of nuclei from erythroid precursor cells. Nature 437, 754-758, 2005

(22) Kawane, K., Ohtani, M., Miwa, K., Kizawa, T., Kanbara, Y., Yoshioka, Y., Yoshikawa, H., and Nagata, S.: Chronic polyarthritis caused by mammalian DNA that escapes from degradation in macrophages. Nature 443, 998-1002, 2006

(23) Miyanishi, M., Tada, K., Koike, M., Uchiyama, Y., Kitamura, T., and Nagata, S.: Identification of Tim-4 as a phosphatidylserine receptor. Nature 450: 435-439, 2007

(24) Kitano, M., Nakaya, M., Nakamura, T., Nagata, S. & Matsuda, M.: Imaging of Rab5 activity identifies essential regulators for phagosome maturation. Nature 453: 241-245, 2008

(25) Okabe, Y., Sano, T. & Nagata, S.: Regulation of the innate immune response by threonine phosphatase of Eyes absent. Nature 460: 520-524, 2009

(26) Nagata, S., Hanayama, R. & Kawane, K.: Autoimmunity and the Clearance of Dead Cells. Cell 140: 619-630, 2010

(27) Suzuki, J., Umeda, M., Sims JP. & Nagata, S.: Calcium-dependent phospholipid scrambling by TMEM16F. Nature 468: 834-838, 2010

(28) Suzuki, J., Denning, DP., Imanishi, E., Horvitz, HR. & Nagata, S.: Xk-related protein 8 and CED-8 promote phosphatidylserine exposure in apoptotic cells. Science 341: 403-406, 2013

稲葉 カヨ

稲葉 カヨ

京都大学 副学長
京都大学 生命科学研究科 教授

講演テーマ

“Initiation and Regulation of Immune Responses by Dendritic Cells”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Dendritic cells (DCs) are a member of leukocytes derived from hematopoietic stem cells and are known to play essential roles in the initiation and regulation of immune responses. They distribute not only in the body surface, such as the skin and various mucosal tissues, but also lymphoid as well as nonlymphoid organs. DCs patrol to find infectious and noninfectious agents in periphery and transport antigenic information to the draining lymphoid organs, where antigen specific lymphocytes are activated or inactivated by DCs. Crucial roles of antigen presenting cells in the induction of immune response were first revealed as adherent cells in spleen cell suspension at the time when in vitro culture system was established. In the beginning, macrophages were believed to be a responsible cell type, because of abundance in the body. Even after discovering DCs by Ralph Steinman, most of researchers in the immunology field were skeptical to accept the idea that DCs capture and process antigens for presentation. However, development of cell and molecular biology along with development of new methods and the increase in knowledge on immunological phenomena have cleared and solve such queries, issues and controversial points. The important steps for appreciation of DC functions in immunology are 1) the understanding of DC maturation, 2) the recognition of DC potency to evoke specific immune responses not only in vitro but also in situ, and 3) establishment of a method to generate a large number of DCs from precursor cells.

I will overview advancement of DC researches in the histological aspects and discuss present and future subjects in clinical therapy as well as basic researches.

プロフィール

講演概要 講演概要
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簡単な履歴

昭和48年 奈良女子大学理学部生物学科植物学専攻卒業
同     京都大学大学院理学研究科生物学系動物学専攻 修士課程入学
昭和50年 同 修了
同     同 博士課程進学
昭和53年 同 修了(京都大学理学博士)

昭和53年 京都大学理学部 助手
この間昭和57年10月 ~ 昭和59年12月 Rockefeller University に留学
平成4年 京都大学理学部 助教授
平成7年 京都大学大学院理学研究科 助教授
平成11年 京都大学大学院生命科学研究科 教授 (現在に至る)
平成15年 京都大学大学院生命科学研究科長 (平成17年まで)
平成19年 女性研究者支援センターセンター長 (現在に至る)
平成21年 京都大学理事補(総務:男女共同参画担当)(平成24年まで)
平成25年 京都大学副学長[男女共同参画担当] (現在に至る)

昭和57年10月~平成元年 ロックフェラー大学客員助教授
平成元年~平成12年 ロックフェラー大学客員准教授
平成12年~平成23年 ロックフェラー大学客員教授
平成23年~ ロックフェラー大学連携教授

主な受賞・栄誉等

ロレアル-ユネスコ女性科学賞 (2014)

主要論文リスト

Inaba, K; Metray, JP; Crowley, MT; Steinman, RM (1990) Dendritic cells pulsed with protein antigens in vitro can prime antigen-specific, MHC-restricted T cells in situ. J. Exp. Med. 172 (2): 631-640.

Inaba, K; Inaba, M; Romani, N; Aya, H; Deguchi, M; Ikehara, S; Muramatsu, S; Steinman, RM (1992) Generation of large numbers of dendritic cells from mouse bone-marrow cultures supplemented with granulocyte macrophage colony-stimulating factor. J. Exp. Med. 176 (6): 1693-1702.

Inaba, K; Witmer-Pack, M; Inaba, M; Hathcock, KS; Sakuta, H; Azuma, M; Yagita, H; Okumura, K; Linsley, PS; Ikehara, S; Muramatsu, S; Hodes, RJ; Steinman, RM (1994) The Tissue distribution of the B7-2 costimulator in mice – abundant expression of dendritic cells in situ and during maturation in vitro. J. Exp. Med. 180 (5): 1849-1860.

Inaba, K; Pack, M; Inaba, M; Sakuta, H; Isdell, F; Steinman, RM (1997) High levels of a major histocompatibility complex II self peptide complex on dendritic cells from the T cell areas of lymph nodes. J. Exp. Med. 186 (5): 665-672.

Inaba, K; Turley, S; Yamaide, F; Iyoda, T; Mahnke, K; Inaba, M; Pack, M; Subklewe, M; Sauter, B; Sheff, D; Albert, M; Bhardwaj, N; Mellman, I; Steinman, RM (1998) Efficient presentation of phagocytosed cellular fragments on the major histocompatibility complex class II products of dendritic cells. J. Exp. Med. 188 (11): 2163-2173.

Hawiger, D; Inaba, K; Dorsett, Y; Guo, M; Mahnke, K; Rivera, M; Ravetch, JV; Steinman, RM; Nussenzweig, MC (2001) Dendritic cells induce peripheral T cell unresponsiveness under steady state conditions in vivo. J. Exp. Med. 194 (6): 769-779.

yoda, T; Shimoyama, S; Liu, K; Omatsu, Y; Akiyama, Y; Maeda, Y; Takahara, K; Steinman, RM; Inaba, K (2002) The CD8+ dendritic cell subset selectively endocytoses dying cells in culture and in vivo. J. Exp. Med. 195 (10): 1289-1302.

Yamazaki, S; Iyoda, T; Tarbell, K; Olson, K; Velinzon, K; Inaba, K; Steinman, RM (2003) Direct expansion of functional CD25+CD4+ regulatory T cells by antigen-processing dendritic cells. J. Exp. Med. 198 (2): 235-247.

Nagaoka, K; Takahara, K; Yoshida, H; Steinman, RM; Saitoh, S; Akashi-Takamura, S; Miyake, K; Kang, YS; Park, CG; Inaba, K (2005) Association of SIGNR1 with TLR4-MD-2 enhances signal transduction by recognition of LPS in gram-negative bacteria. Int. Immunol. 17 (7): 827-836.

Onai, N; Kurabayashi, K; Hosoi-Amaike, M; Inaba, K; Ohteki, T (2013) A clonogenic progenitor with prominent plasmacytoid dendritic cell developmental potential. Immunity, 38(5):943-957.

Inaba, K (2012) A tribute to Ralph M. Steinman. Int. Immunol. 24 (1): 1-3.

審良 静男

審良 静男

大阪大学 WPI免疫学フロンティア研究センター 拠点長・教授

講演テーマ

“Regnase-1, a ribonuclease involved in the control of immune responses”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Immune responses are accompanied by dynamic changes in gene expression. Gene expression is controlled at multiple points, including signal transduction, transcription and mRNA stability. So far, transcriptional regulation has been extensively studied. Many transcription factors including NF-B and AP-1 are involved in induction of the genes involved in inflammatory and immune responses. However, recent studies have revealed that control of gene expression at the mRNA level is as important as transcriptional control in the immune response. Gene expression profiles obtained from human Jurkat T cells stimulated with PMA plus ionomycin revealed that regulation of mRNA stability may account for as much as 50% of all measurements of changes in total cellular polyA mRNA. We have recently identified a novel gene named Zc3h12a which has a CCCH-type zinc finger domain. The knockout mice developed spontaneous autoimmune diseases accompanied by splenomegaly and lymphadenopathy. Subsequent studies showed that Zc3h12a is a nuclease involved in destabilization of IL-6 and IL-12mRNA via the stem loop structure present in the 3’UTR of these genes. We renamed it Regulatory RNase-1 (Regnase-1) based on the function. I would like to discuss the role of Regnase-1 in the immune response.

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学歴 昭和52(1977)年3月 大阪大学医学部卒業
昭和55(1980)年4月 大阪大学大学院医学研究科(第3内科)入学
学位 昭和59(1984)年3月 医学博士学位取得
職歴 昭和52(1977)年6月~昭和53(1978)年5月
大阪大学附属病院内科 研修医
昭和53(1978)年6月~昭和55(1980)年3月
市立堺病院 内科医
昭和59(1984)年4月~昭和60(1985)年2月
大阪大学細胞工学センター免疫研究部門 日本学術振興会奨励研究員
昭和60(1985)年3月~昭和62(1987)年5月
米国カリフォルニア大学バークレー校免疫学部(坂野仁教授)博士研究員
昭和62(1987)年6月~平成7(1995)年4月
大阪大学細胞工学センター免疫研究部門(岸本忠三教授)助手
平成7(1995)年5月~平成7(1995)年12月
大阪大学細胞生体工学センター多細胞生体系研究部門 助教授
平成8(1996)年1月~平成11(1999)年3月
兵庫医科大学生化学講座 教授
平成11(1999)年4月~平成17(2005)年3月
大阪大学微生物病研究所癌抑制遺伝子研究分野 教授
平成19(2007)年10月~現在
大阪大学WPI免疫学フロンティア研究センター 拠点長
平成25(2013)年7月~現在(平成28(2016)年6月)
大阪大学 特別教授
主な受賞・栄誉等
平成13(2001)年1月 井上学術賞
平成13(2001)年11月 野口英世記念医学賞
平成14(2002)年11月 大阪科学賞
平成15(2003)年11月 武田医学賞
平成16(2004)年2月 高松宮妃癌研究基金学術賞
平成16(2004)年11月 Robert Koch Prize (Robert Koch Foundation, Germany)
平成17(2005)年4月 紫綬褒章
平成18(2006)年1月 朝日賞
平成18(2006)年6月 William B. Coley Award (Cancer Research Institute, USA)
平成19(2007)年3月 上原賞
平成19(2007)年3月 恩賜賞・日本学士院賞
平成21(2009)年9月 Milstein賞 (International Society for Interferon and Cytokine Research)
平成21(2009)年4月 米国科学アカデミー(NAS) 外国人会員
平成21(2009)年11月 平成21年 文化功労者
平成22(2010)年9月 慶應医学賞
平成22(2010)年9月 Avery-Landsteiner Prize(German Society for Immunology)
平成22(2010)年9月 EMBO外国人会員
平成23(2011)年3月 The 2011 Canada Gairdner International Awards
主要論文リスト

1)Hemmi, H., Takeuchi, O., Kawai, T., Kaisho, T., Sato, S., Sanjo, H., Matsumoto, M., Hoshino, K., Wagner, H., Takeda, K. and Akira, S. A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA. Nature, 408:740-745, 2000

2)Yamamoto, M., Sato, S., Hemmi, H., Sanjo, H., Uematsu, S., Kaisho, T., Hoshino, K., Takeuchi, O., Kobayashi, M., Fujita, T., Takeda, K. and Akira, S. Essential role for TIRAP in activation of the signalling cascade shared by TLR2 and TLR4. Nature. 420:324-329, 2002.

3)Yamamoto, M., Sato, S., Hemmi, H., Hoshino, K., Kaisho, T., Sanjo, H.,
Takeuchi, O., Sugiyama, M., Okabe, M., Takeda, K. and Akira, S. Role of
adaptor TRIF in the MyD88-independent Toll-like receptor signaling pathway.
Science 301:640-643, 2003.

4)Yamamoto, M., Yamazaki, S., Uematsu, S., Sato, S., Hemmi, H., Hoshino, K.,
Kaisho, T., Kuwata, H., Takeuchi, O., Takeshige, K., Saitoh, T., Yamaoka, S.,
Yamamoto, N., Yamamoto, S., Muta, T., Takeda, K. and Akira, S. Regulation
of Toll/IL-1-receptor-mediated gene expression by the inducible nuclear protein
IkBzeta. Nature 430: 218-222, 2004.

5)Akira, S., Uematsu, S. and Takeuchi, O. Pathogen recognition and innate
immunity. Cell. 24: 783-801, 2006.

6)Kato, H., Takeuchi, O., Sato, S., Yoneyama, M., Yamamoto, M., Matsui, K.,
Uematsu, S., Jung, A., Kawai, T., Ishii, K.J., Yamaguchi, O., Otsu, K., Tsujimura,
T., Koh, C.S., Reis e Sousa, C., Matsuura, Y., Fujita, T. and Akira, S.
Differential roles of MDA5 and RIG-I helicases in the recognition of RNA viruses.
Nature. 441: 101-105, 2006.

7)Saitoh T, Fujita N, Jang MH, Uematsu S, Yang BG, Satoh T, Omori H, Noda T,
Yamamoto N, Komatsu M, Tanaka K, Kawai T, Tsujimura T, Takeuchi O,
Yoshimori T, Akira S.
Loss of the autophagy protein Atg16L1 enhances endotoxin-induced IL-1beta
production. Nature. ;456:264-268, 2008

8)Ishii KJ, Kawagoe T, Koyama S, Matsui K, Kumar H, Kawai T, Uematsu S,
Takeuchi O, Takeshita F, Coban C, Akira S.
TANK-binding kinase-1 delineates innate and adaptive immune responses to
DNA vaccines. Nature.451:725-729, 2008.

9)Matsushita K, Takeuchi O, Standley DM, Kumagai Y, Kawagoe T, Miyake T,
Satoh T, Kato H, Tsujimura T, Nakamura H, Akira S.
Zc3h12a is an RNase essential for controlling immune responses by regulating
mRNA decay.
Nature. 458:1185-1190, 2009.

10)Satoh T, Takeuchi O, Vandenbon A, Yasuda K, Tanaka Y, Kumagai Y,
Miyake T, Matsushita K, Okazaki T, Saitoh T, Honma K, Matsuyama T, Yui K,
Tsujimura T, Standley DM, Nakanishi K, Nakai K, Akira S.
The Jmjd3-Irf4 axis regulates M2 macrophage polarization and host responses
against helminth infection.
Nat Immunol. 11:936-944, 2010.

11)Iwasaki H, Takeuchi O, Teraguchi S, Matsushita K, Uehata T, Kuniyoshi K, Satoh T, Saitoh T, Matsushita M, Standley DM, Akira S.
The IκB kinase complex regulates the stability of cytokine-encoding mRNA induced by TLR-IL-1R by controlling degradation of regnase-1.
Nat Immunol. 12:1167-1175, 2011.

12)Satoh T, Kidoya H, Naito H, Yamamoto M, Takemura N, Nakagawa K, Yoshioka Y, Morii E, Takakura N, Takeuchi O, Akira S.
Critical role of Trib1 in differentiation of tissue-resident M2-like macrophages.
Nature. 495:524-528, 2013.

13)Misawa T, Takahama M, Kozaki T, LeeH, Zou J, Saitoh T, Akira S.
Microtubule-driven spatial arrangement of mitochondria promotes activation of the NLRP3 inflammasome.
Nat Immunol. 14:454-460, 2013.

14)Uehata T, Iwasaki H, Vandenbon A, Matsushita K, Hernandez-Cuellar E, Kuniyoshi K, Satoh T, Mino T, Suzuki Y, Standley DM, Tsujimura T, Rakugi H, Isaka Y, Takeuchi O, Akira, S.
Malt1-induced cleavage of regnase-1 in CD4(+) helper T cells regulates immune activation.
Cell. 153:1036-1049, 2013.

15)Akira S.
Regnase-1, a Ribonuclease Involved in the Regulation of Immune Responses.
Cold Spring Harb Symp Quant Biol. (in press)

宮下 保司

宮下 保司

東京大学 医学系研究科 教授

講演テーマ

“Cognitive Memory System in the Primate: Local Cell-Assemblies and Brain-Wide Cortical Network”2014年7月13日

講演概要 講演概要

A brain-wide distributed network orchestrates cognitive memorizing and remembering of explicit memory (i.e., memory of facts and events), and it has been revealed that the primate temporal cortex and frontal cortex implement basic machineries for the internal representation of visual objects and its manipulation. We have previously identified neural correlates of some key elements of this memory system at the single neuron level. The present talk addresses a possibility that this knowledge of single neuron elements can be integrated into a brain-wide network-level understanding through our recent findings on organization and function of local memory-related cell-assemblies. My talk starts from the discovery of single neuron elements of associative memory representation, called “pair-coding neurons” and “pair-recall neurons”. I will then highlight findings related to: (1) Where in the temporal cortex is the mnemonic representation of visual objects localized? And how is it organized? (2) Which neural circuits enable the reactivation of image representations? (3) What is the neural basis of cognitive control in memory retrieval and in meta-memory judgment?

プロフィール

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簡単な履歴

1972年 東京大学理学部卒業
1978年 東京大学医学系大学院博士課程(生理学専攻)修了
1978年 東京大学医学部 (生理学第一講座) 助手
1989年~現在  東京大学医学部 (生理学第一講座) 教授
1996~2002年 岡崎研究機構生理学研究所 教授併任
1996~2013年 東京大学理学系研究科 教授併任

主な受賞・栄誉等

1992年 塚原仲晃記念賞

2000年 上原賞

2000年 時實利彦記念賞

2003年 慶應医学賞

2004年 朝日賞

2004年 紫綬褒章

2007年 日本学士院賞

2014年 藤原賞

主要論文リスト

Hirabayashi, T., Takeuchi, D., Tamura, K., and Miyashita, Y. :
Microcircuits for hierarchical elaboration of object coding across primate temporal areas. Science 341, 191-195, 2013.

Miyamoto, K., Osada, T., Adachi, Y., Matsui, T., Kimura, H.M., and Miyashita, Y.:
Functional differentiation of memory retrieval network in macaque posterior parietal cortex. Neuron 77, 787-799, 2013.

Hirabayashi, T., Takeuchi, D. and Tamura, K. and Miyashita, Y. :
Functional microcircuit recruited during retrieval of object association memory in monkey perirhinal cortex. Neuron 77, 192-203, 2013.

Takeuchi, D., Hirabayashi, T., Tamura, K., and Miyashita, Y. :
Reversal of interlaminar signal between sensory and memory processing in monkey temporal cortex. Science 331, 1443-1447, 2011.

Kamigaki, T., Fukushima, T., and Miyashita,Y. :
Cognitive set reconfiguration signaled by macaque posterior parietal neurons. Neuron 61, 941-951, 2009.

Matsui, T., Koyano, K.W., Koyama, M., Nakahara, K., Takeda, T., Ohashi, Y., Naya, Y. and Miyashita, Y. :
MRI-based localization of electrophysiological recording sites within the cerebral cortex at single-voxel accuracy. Nature methods 4, 161-168, 2007.

Takeda, M., Naya, Y., Fujimichi, R., Takeuchi, D. and Miyashita, Y. :
Active maintenance of associative mnemonic signal in monkey inferior temporal cortex.
Neuron 48, 839-848, 2005.

Miyashita, Y. :
Cognitive memory: cellular and network machineries and their top-down control.
Science 306, 435-440, 2004.

Koyama, M., Hasegawa, I., Osada, T., Adachi, Y., Nakahara, K. and Miyashita, Y.:
Functional magnetic resonance imaging of macaque monkeys performing visually guided saccade tasks: comparison of cortical eye fields with humans. Neuron 41, 795-807, 2004.

Ohbayashi, M., Ohki, K. and Miyashita, Y. :
Conversion of working memory to motor sequence in the monkey premotor cortex.
Science 301, 233-236, 2003.

Kikyo, H., Ohki, K. and Miyashita, Y. :
Neural correlates for “feeling-of-knowing”: an fMRI parametric analysis.
Neuron 36, 177-186, 2002.

Nakahara, K., Hayashi, T., Konishi, S. and Miyashita, Y. :
Functional MRI of macaque monkeys performing a cognitive set-shifting task.
Science 295, 1532-1536, 2002.

Naya, Y., Yoshida, M.and Miyashita, Y. :
Backward spreading of memory retrieval signal in the primate temporal cortex.
Science 291, 661-664, 2001.

Tokuyama,W., Okuno,H., Hashimoto, T., Li, Y.X. and Miyashita, Y. :
BDNF upregulation during declarative memory formation in monkey inferior temporal cortex. Nature neuroscience 3, 1134-1142, 2000.

Tomita, H., Ohbayashi, M., Nakahara, K., Hasegawa, I. and Miyashita, Y. :
Top-down signal originating from the prefrontal cortex for memory retrieval.
Nature 401,699-703, 1999.

Hasegawa, I., Fukushima, T., Ihara, T. and Miyashita, Y. :
Callosal window between prefrontal cortices : cognitive interaction to retrieve long-term memory. Science 281, 814-818, 1998.

Konishi, S., Nakajima, K., Uchida, I., Kameyama, M., Nakahara, K., Sekihara K. and Miyashita, Y. :
Transient activation of inferior prefrontal cortex during cognitive set shifting.
Nature neuroscience 1, 80-84, 1998.

Sakai, K. and Miyashita, Y. :
Neural organization for the long-term memory of paired associates.
Nature 354, 152-155, 1991.

Miyashita, Y. :
Neuronal correlate of visual associative long-term memory in the primate temporal cortex. Nature 335, 817-820, 1988.

Miyashita, Y. and Chang, H.S. :
Neuronal correlate of pictorial short-term memory in the primate temporal cortex.
Nature 331, 68-70, 1988.

柳田 敏雄

柳田 敏雄

大阪大学 生命機能研究科 特任教授
理化学研究所 生命システム研究センター センター長
情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター センター長

講演テーマ

“What is a biological principle to control complex systems with extremely low energy consumption and high robustness ?”2014年7月13日

講演概要 講演概要

Among cells in the human body, those in the brain are the least satiable, consuming a disproportionate amount of energy reaching a magnitude more than the cells of other organs. Yet, compared to other large-scale information processers like computers, we find a much small appetite. The human brain consumes 20 Watts when is at rest according to experimental data of brain temperature measurements using MRI(S). Yet the amount of power increases only 1 Watt when the brain is “on”. In comparison, the super-computer “Kei” in Kobe, one of the world’s fastest in 2012, uses 30,000,000 Watts, or the amount of electric power needed to supply energy about 40,000 houses. Moreover, despite the power demands, computers are inadequate compared to their biological counterparts for certain tasks. In fact, a computer designed to do the tasks of the human brain, according to our estimates, would require the energy generated from more than several hundred millions power plants. Thus, while the brain may be the envy of other parts of the body, it is actually an exceptionally energy-efficient machine when considering the tasks it is assigned. To explain this efficiency, we recently revealed a mechanism that explains how the brain uses noises to function with such relatively low energy consumption. Single-molecule imaging and nanoscience techniques have shown that biomolecules and cells do not filter thermal noise, but rather take advantage of this energy to fulfill their functions. The brain, it has been demonstrated, operates similarly for visual information processing. The result is not only low energy demands compared to artificial machines, but also better robustness. In my talk I will discuss this mechanism, its function in biomolecular machines and the brain taking, and its potential for designing a new generation of robotics and machines.

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学歴

1969年3月 大阪大学基礎工学部電気工学科卒業
1971年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科(電気工学)修士課程修了、工学修士(大阪大学)
1974年9月 大阪大学大学院基礎工学研究科(生物工学)博士課程中退
1976年4月 工学博士(大阪大学)

職歴

1974年10月 大阪大学基礎工学部生物工学科文部技官教務職員
1987年2月 大阪大学基礎工学部生物工学科助教授
1988年4月 大阪大学基礎工学部生物工学科教授
1996年5月 大阪大学医学部医学科第一生理学教授併任(1997年3月まで)
1997年4月 大阪大学医学部医学科第一生理学文部教官教授専任
2002年4月 大阪大学大学院生命機能研究科ナノ生体科学教授(2010年3月まで)
2002年4月 大阪大学大学院生命機能研究科研究科長併任(2004年3月まで)
2002年4月 大阪大学大学院医学系研究科 教授(兼任)(2010年3月まで)
2007年10月 世界トップレベル研究拠点(WPI)大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 副拠点長(~現在に至る)
2010年4月 大阪大学大学院生命機能研究科特任教授(常勤)(~現在に至る)
2010年4月 大阪大学名誉教授
2011年4月 理化学研究所 生命システム研究センター長(兼務)(~現在に至る)
2011年4月 理化学研究所HPCI計算生命科学推進プログラムディレター(兼務)(~現在に至る)
2011年4月 情報通信研究機構/大阪大学 脳情報通信融合研究センター長(~現在に至る)

学会活動など
(国内)
日本生物物理学会(2002年~2003年 会長)
日本物理学会
新技術事業団柳田生体運動子プロジェクト総括責任者(1992年10月~1997年9月)
新技術事業団1分子過程プロジェクト総括責任者(1998年1月~2002年12月)
独立行政法人情報通信研究機構柳田結集型特別グループリーダー(1998年4月~2003年3月)
文科省21世紀COE 拠点リーダー (2002年10月~2007年3月)
戦略創造「ソフトナノマシンプロジェクト」研究代表者 (2002年11月~2007年9月) 
戦略創造「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析・基盤技術」
研究総括(2004年7月〜2012年3月)
日本学術会議会員(2005年~)
文科省グローバルCOE 拠点リーダー(2007年10月~2012年3月)
独立行政法人 情報通信研究機構 プログラムコーディネーター(2008年7月1日~2011年3月)
独立行政法人理化学研究所 特任顧問 (2009年7月1日~2011年3月31日)
自然科学研究機構分子科学研究所研究顧問 (2011年4月1日〜)
最先端研究基盤事業(文科省) 「生命動態システム科学研究の推進に向けた研究基盤の整備」統括責任者(2010年~2013年)
独立行政法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所 主管研究員(2011年4月1日~2013年3月31日)

(国外)
米国生物物理学会(2006年〜2009年評議員)
ヒューマンフロンティア(HFSP)科学者会議副議長(2004~2006)
ゴードン会議(1分子生物物理)副議長(2012~2014)、議長(2014~2016)

ジャーナル編集委員

主な受賞・栄誉等

1989年10月  第7回大阪科学賞(大阪府,大阪市)

1990年5月  第4回塚原仲晃記念賞(ブレインサイエンス振興財団)

1992年8月  第1回Matsubara Lecture Award(Gordon Conference)

1994年3月  第25回内藤記念科学振興賞(内藤記念振興財団)

1998年4月  日本学士院賞 恩賜賞 (日本学士院)

1999年1月  朝日賞 (朝日新聞社)

2000年10月  The Fred Fay Lecture Award (U. Mass)

2003年9月  日本神経回路学会研究賞「視覚的意識の交替を引き起こす離散的確率ダイナミクスと脳内ネットワーク」(共同受賞)

2010年9月  The US Genomic Award for Outstanding Investigator in the Field of Single Molecule Biology (US Biophysical Society)

2011年7月  Fellow of the US Biophysical Society (US Biophysical Society)

2011年7月  平成25年 文化功労者

主要論文リスト

1.K. Fujita, M. Iwaki, A. H. Iwane, L. Marcucci, T. Yanagida “Switching of myosin-V motion between the lever-arm swing and Brownian search-and-catch”
Nat. Commun.,3:956 (2012)

2.S. Nishikawa, I. Arimoto, K. Ikezaki, M. Sugawa, H. Ueno, T. Komori, A. H Iwane, T. Yanagida. Switch between large hand-over-hand and small inchworm-like steps in myosin VI
Cell 142(6),879-88 (2010)

3.T. Fujii, A. H. Iwane, T. Yanagida, K. Namba. Direct visualization of secondary structures of F-actin by electron cryomicroscopy.
Nature 467(7316),724-8 (2010)

4.M. Iwaki, A. H. Iwane, T. Shimokawa, R. Cooke, T. Yanagida. Brownian search-and-catch mechanism for myosin-VI steps.
Nature Chem. Biol., 5(6), 403-405 (2009)

5.M. Nishikawa, H. Takagi, T. Shibata, A. H. Iwane, T. Yanagida, _Fluctuation Analysis of Mechanochemical Coupling Depending on the Type of Biomolecular Motors.
Phys. Rev. Lett., 101(12), 128103 (2008)

6.Y. Komori, A. Iwane and T.Yanagida: Myosin-V makes two Brownian 90o rotations per 36 nm step.
Nature Str. Mol. Biol. 14(10):968-973 (2007)

7.J. Kozuka, H. Yokota, Y. Arai, Y. Ishii, T. Yanagida, _Dynamic polymorphism of single actin molecules in the actin filament.
Nature Chem. Biology, 2, 83-86 (2006)

8.Y. Taniguchi, M. Nishiyama, Y. Ishii, T. Yanagida. Entropy rectifies the Brownian steps of kinesin.
Nature Chem. Biol., 1, 346-351 (2005)

9.M. Nishiyama, H. Higuchi, T. Yanagida, _Chemomechanical coupling of the ATPase cycle to the forward and backward movements of single kinesin molecules.
Nature Cell Biology, 4, 790-797 (2002)

10.H. Tanaka, K. Homma, A. H. Iwane, E. Katayama, R. Ikebe, J. Saito, T. Yanagida and M. Ikebe: The motor domain determines the large step of myosin-V.
Nature 415, 192-195 (2002)

11.M. Nishiyama, E. Muto, Y. Inoue, T. Yanagida, H. Higuchi, _Substeps within the 8-nm step of the ATPase cycle of single kinesin molecules.
Nature Cell Biology, 3, 425-428 (2001)

12.M. Ueda, Y. Sako, T. Tanaka, P. Devreotes and T. Yanagida: Single molecule analysis of chemotactic signaling in Dictyostelium cells.
Science 294, 864-867 (2001)

13.Y. Sako, S. Minoguchi and T. Yanagida: Single-molecule imaging of EGFR signaling on the surface of living cells.
Nature Cell Biology 2, 168-172 (2000)

14.Y. Sambongi , Y. Iko, M. Tanabe, H. Omote, A. Iwamoto-Kihara, I. Ueda, T. Yanagida, Y. Wada and M. Futai: Mechanical Rotation of the c Subunit Oligomer in the ATP Synthase (FoF1): Direct Observation.
Science. 286, 1722-1724 (1999)

15.K. Kitamura, M. Tokunaga, A. H. Iwane and T. Yanagida: A single myosin head moves along an actin filament with regular steps of ~5.3nm.
Nature. 397, 129-134 (1999)

16.A. Ishijima, H. Kojima, T. Funatsu, M. Tokunaga, H. Higuchi, H. Tanaka, T. Yanagida, Simultaneous observation of individual ATPase and mechanical events by a single myosin molecule during interaction with actin.
Cell, 92, 161-171 (1998)

17.H. Yokota, K. Saito, T. Yanagida, _Single molecule imaging of fluorescently-labeled proteins on metal by surface plasmons in aqueous solution.
Phys. Rev. Lett., 80(20), 4606-4609 (1998)

18.C. Shingyoji, H. Higuchi, M. Yoshimura, E. Katayama and T. Yanagida: Dynein arms are oscillating force generators.
Nature. 393, 711-714 (1998)

19.R. D. Vale, T. Funatsu, D. W. Pierce, L. Romberg, Y. Harada and T. Yanagida: Direct observation of single kinesin molecules moving along.
Nature. 380, 451-453 (1996)

20.T. Funatsu, Y. Harada, M. Tokunaga, K. Saito and T. Yanagida: Imaging of single fluorescent molecules and individual ATP turnovers by single myosin molecules in aqueous solution.
Nature. 374, 555-559 (1995)

21.A. Ishijima, T. Doi, K. Sakurada and T. Yanagida: Sub-piconewton force fluctuations of actomyosin in vitro.
Nature. 352, 301-306 (1991)

22.A. Kishino and T. Yanagida: Force measurements by micromanipulation of a single actin filament by glass needles.
Nature. 334, 74-76 (1988)

23.Y. Harada, A. Noguchi, A. Kishino and T. Yanagida: Sliding movement of single actin filaments on one-headed myosin filaments.
Nature. 326, 805-808 (1987)

24.T. Yanagida, T. Arata and F. Oosawa: Sliding distance of actin filament induced by a myosin crossbridge during one ATP hydrolysis cycle.
Nature. 316, 366-369 (1985)

25.T. Yanagida, M. Nakase, K. Nishiyama and F. Oosawa: Direct observation of motion of single F-actin filaments in the presence of myosin.
Nature. 307, 58-60 (1984)

他200編

思想・芸術部門「思想・倫理」

オーギュスタン ベルク

オーギュスタン ベルク

フランス国立社会科学高等研究院 元研究院長

講演テーマ

「地球の詩学―風土学的考察」2014年7月12日

講演概要 講演概要

近代の二元主義が,自然と文化とのあいだ,ひいては自然科学と人文科学とのあいだに作り上げた対立を,われわれは克服できるのだろうか。その過程はおそらく,歴史や進化の動きのなかで文化を再自然化し自然を再文化化するとともに,西洋及び東洋の思考法のそれぞれの限界を,この二つの偉大な伝統的思想のそれぞれの利点を統合することによって理性的に克服することになるであろう。その思想の一方,西洋におけるそれは,個人の意識に重点を置くものであったが,それに対して東洋におけるそれは,意識の,世界との連携を好むものであった。
ここで提案するように,この統合は,「通態」(trajection)の概念に重点を置いたもので,「通態連鎖」が歴史的に進行するなかで,主語の同一性についてのアリストテレス的論理(主語の論理)と,述語の同一性という西田哲学的論理(述語の論理)ないし場所の論理とを結びつけることを可能にする。この通態連鎖のなかでは,実体的な主語Sを非実体的な述語Pとして仮定するということ,また S/P という関係(つまりPとしてのS)を,新しい述語P’に対する新しい主語S’に,すなわち S’/P’ に,そしてS”/P” へと次々に実体化していくということが無限になされる。具体的には,この「通態」は,環境(environment)と環世界(milieu)とのあいだの可逆的な「通い」(passage)に相当する。すなわち,環境の生のデータ(ユクスキュルが環境と名づけ,和辻が自然環境と名づけたもの)と,ユクスキュル が環世界(Umwelt)と呼び,和辻が「風土」と呼んだ感受される現実(S/P)とのあいだの「通い」である。

通態連鎖の概念は,山内得立が区別したような二つの思考の通路,すなわちレンマ(lemma) の上に成立する東洋的な通路と,ロゴスに基礎を置く西洋的な通路の統合をも可能にする。ロゴスに特有の抽象化のみが,現代の自然科学に必要な客観化を可能にするが,他方,レンマに特有の具体性のみが,Aと非Aとの(A即非A,すなわち,Aは非Aでもあり/ない,又は,非AとしてのAという)「即の論理」(syllemma)(とくに象徴性においてそうであるが,Aと非Aとをとりまとめる論理)において,主体の存在と客体の存在の両方を考慮に入れることができる。このように通態連鎖が歴史的に進行することで,述語Pとしての主語S――具体的には,環世界としての環境,すなわち”Umgebung als Umwelt”,又は自然環境即風土――という明らかに不合理な現実を合理的に把握することが可能になる。

この統合により,近代の古典的な二元主義(デカルトやニュートンの二元主義)を超えて,ハイゼンベルグが示したような,現代物理学に調和した,客体としての自然ではなく自然との関係を扱うメソロジー(Umweltlehre, 風土学),また,最近,生物学が,単なるゲノムの識別よりもエピジェネティックな関係に重点をおいていることにも対応したメソロジーを,改めて創設することが可能になる。これらの根拠を踏まえて,進化論,とくにネオダーウィニズム正統主義 と今西錦司の自然学の対立を,私たちは再考しなければならない。21世紀における,あらゆる生物にとってのそれ自身の環世界の意味を考慮に入れた生物解釈学の発展の見通しについて,また,人間が,自然の働きと一体になって無限に生存し続ける可能性について述べることで,この講演を締めくくる。

「今西錦司の概念<種社会>には合理的な根拠があるか」2014年7月13日

講演概要 講演概要

本講演では,日本の自然学者・今西錦司(1902-1992)によって提唱された「種社会」の概念の正当性について論じる。今西は,霊長類学におけるパラダイムシフトの首唱者として国際的に知られているが,その霊長類学の本質は,動物の主体性,社会性及び文化性を認識することにある。しかし,彼は,霊長類学者という枠をはるかに越え,昆虫学者,生態学者,人類学者,そして偉大な登山家であり,基本的には,自然,生命,進化の思想家であった。彼は彼自身の認識論的な立場を,「自然科学」(natural science)に対抗して,簡潔に「自然学」という概念で表現した。

ロボット翻訳者は,この二つの言葉を区別しないかもしれないが,ここで問題になっているのは,要は,現実についての根本的に異なった二つの概念のあいだでの選択可能性である。その一つである「自然科学」では,古典的な近代の西洋的科学パラダイムに従って,自然は客体と見なされるが,他方の「自然学」では,科学者が自然の全体的な主体性に参与することにより,自然を解釈学的に知ることができる。つまり内側から,科学そのものを自然の全体的な動きのある特定の相としながら,自然を知ることができる。これが,私が「自然学」を〔natural science ではなく〕 “naturing science” と翻訳することを提案する理由である。いうまでもなく,第一の観点から見ると,これは全く異端で,非科学的な立場である。

この違いは進化論との関わりにおいてよく見てとれる。今西は,生涯を通じて,進化論に対して深い関心を寄せ,それについてきわめて多く本を出しているが,ネオダーウィニズムの定説には粘り強く異議をとなえた。『主体性の進化論』(1980)と題する彼の最後の本の一つは,このような問題に関して,「自然学」がどのようなものから成りたっているかを示すよい例である。今西の主張は学界から切り捨てられたが,それは驚くべきことではない(彼自身は京都大学の名高い講座の教授という肩書きをもっていたが)。しかしここでの私の見解はそれとは違っている。私は,自然学は,よくも悪くも高度に哲学的な問題であり,村八分といったものではなく,はるかに大きな注目を集める価値があると考えている。

今西の霊長類学は,西洋では一世代にもわたって,全く無視されたとは言わないまでも,少なくとも子供じみた擬人化として笑いの対象とされた。しかし,それが今や西洋の若い霊長類学者が,それこそ霊長類学の原点であると気づかないほど,ごく自然に模範とされるものになった。このことを私たちは記憶しておかなければならない。

今西の霊長類学は,彼の「自然学」ともまたその主要概念とも,とくに「種社会」の概念とも一致するものであったし,今もそうである。すべての問題は,基本的に主体と客体との近代的区別にかかっている。それとともに,それが一方では日本的な現実(言語,自然に対する姿勢など。これらは実際,「主体」よりも「周囲」を指し示している)に,他方では一般的な現実に適合したものであるかどうかにかかっている。これらの現実は,古典的な近代西洋科学のパラダイムを越えたところにある。

科学は自然科学の枠のなかにとどまり続けるのであろうか。あるいはわれわれは,科学それ自体の科学的な「再自然化」を思いつくことができるであろうか。

今西の「自然学」をユクスキュルの「環世界論」(Umweltlehre)に関連づけることは,「種社会」の概念を再考することにつながる。私はこの概念を新語である「種社会」(speciety)という言葉で表現し,それが単なる個体群ではなく,社会としての種であるという事実として定義することを提案する。それは主体性を与えられた社会であり,それゆえ,それ固有の世界をもつ。そして一般的な環境との関わりにおいてではなく,それ固有の世界との関わりにおいて進化する。視点はメソロジー(mesology)のそれである。すなわち環境とは異なる環世界の研究である。これこそ生態学の目的である。その意味でメソロジーはユクスキュルの言う意味での「環世界論」(Umweltlehre)にも相当するし,また和辻が言う意味での「風土学」にも相当する。

プロフィール

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簡単な履歴

パリ大学(1959-1963)、フランス国立東洋言語学校(1960-1963, 1965-1967)、オックスフォード大学ウェイダム・カレッジ(1963-1964)にて地理学、中国学、日本学を研究。
フランス国立東洋言語学校で学士号取得(1967)、パリ大学にて博士号(地理学)取得(1969)、パリ第4大学で国家博士号取得(1977)。
パリ美術学校助講師(1967-1969)、フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員(1977-1979)などを経て、1979年以来、フランス国立社会科学高等研究院教授(EHESS)、現代日本研究センター長を務める。2011年に定年退職。
その間にたびたび来日、滞在期間は通算17年以上になる。北海道大学講師(1970-1974)、東北大学招へい研究員(1975-1977)、東京日仏会館館長(1984-1988)、宮城大学教授(1999-2001)、国際日本文化研究センター客員外国人研究員(1993-1994, 2005-2006)などを務める。
福岡アジア文化大賞(2009)、国際交流基金賞(2011)、人間文化研究機構(NIHU)日本研究功労賞(2012)などを受賞。
主な日本語での出版物に『空間の日本文化』(筑摩書房、1985)、『風土の日本』(筑摩書房、1988)、『風土学序説』(筑摩書房、2002)、『風景という知』(世界思想社、2010)などがある。

主な受賞・栄誉等

*Lauréat de la Société de géographie pour Médiance, 1991/Prize of the French Geographical Society for his book Médiance, 1991 ;

*chevalier de l’Ordre du Mérite (ministère de l’Environnement), 1991/Chevalier of the Order of Merit (Ministry of Environment), 1991 ;

*élu membre de l’Academia europaea, 1991/Member of the Academia europaea, 1991 ;

*prix de la création culturelle japonaise 日本文化デザイン賞, 1995, pour ses travaux en théorie du paysage/Prize of the Japanese society for cultural design, for his works in the theory of landscape, 1995 ;

*prix Yamagata Bantô 山形蟠桃賞, 1997, pour ses travaux en japonologie/ Yamagata Bantô Prize for his works in Japanese studies, 1997 ;

*médaille d’argent du CNRS, 2000, pour ses travaux en géographie/Silver medal of the CNRS for his works in geography, 2000 ;

*prix culturel de la Société des architectes du Japon 日本建築学会文化賞, 2006, pour ses travaux sur l’habitat au Japon/Cultural prize of the Japanese society of architects, for his works on human settlements in Japan, 2006 ;

*Grand Prix de Fukuoka pour les cultures d’Asie 福岡アジア文化大賞 2009 [ce Grand Prix n’avait jusque-là jamais été décerné à un occidental] / Fukuoka Asian Culture Grand Prize, 2009 [this Grand Prize had until then never been awarded to a Westerner] ;

*Prix de la Fondation du Japon pour les études japonaises 国際交流基金賞, 2011 / Japan Foundation Award for Japanese studies, 2011 ;

*Membre d’honneur de la Société européenne des études japonaises, 2011 / Honorary member of the European Society for Japanese Studies, 2011 ;

*Prix des études japonaises (日本研究功労賞) 2012 des Instituts nationaux pour les humanités 人間文化研究機構/ NIHU Prize in Japanese studies 2012 ;

*Docteur honoris causa de l’Université Kwansei Gakuin (Japon, 1996) et de l’Université Laval (Québec, 2013) / Doctor Honoris causa, Kwansei Gakuin University (Japan, 1996) and Laval University(Quebec, 2013) ;

主要論文リスト

1. Le Japon, gestion de l’espace et changement social, Paris, Flammarion, 1976, 340 p. [Territorial policies and social change in Japan].

2. La Rizière et la banquise, colonisation et changement culturel à Hokkaidô, Paris, Publications orientalistes de France, 1980, 272 p. [Ricefield and icefield. Colonization and cultural change in Hokkaidô].

3. Vivre l’espace au Japon, Paris, Presses universitaires de France, 1982, 222 p. [A Phenomenology of space in Japan]. 日本語訳『空間の日本文化』、筑摩書房、1985.

4. Le Sauvage et l’artifice, les Japonais devant la nature, Paris, Gallimard, 1997 (1ère éd. 1986), 314 p. Translated as Nature, artifice and Japanese culture, Pilkington, 1997. 『風土の日本. 自然と文化の通態』、筑摩書房、1988.

5. (direction/ed.) Le Japon et son double, logiques d’un autoportrait, Paris, Masson, 1987, 165 p. [The Logics of Japan’s self-portrait].

6. (direction/ed.) La Qualité de la ville : urbanité française, urbanité nippone, Tokyo, Maison franco-japonaise, 1987, 327 p. [The Quality of the city : French and Japanese urbanity].

7. Médiance, de milieux en paysages, Paris, Belin/Reclus, 2000 (1ère éd. 1990), 161 p. [Mediance : from milieu to landscape]. 日本語訳『風土としての地球』、筑摩書房、1993.

8. 『日本の風景、西洋の景観、そして造景の時代』Nihon no fûkei, Seiô no keikan, soshite zôkei no jidai  (Le Paysage au Japon, en Europe, et à l’ère du paysagement), Tokyo, Kodansha, 1990, 190 p. [Landscape in Japan and in Europe].

9. Du Geste à la cité, formes urbaines et lien social au Japon, Paris, Gallimard, 1993, 247 p. 日本語訳『都市の日本』、筑摩書房、1995 . Translated as Japan : cities and social bonds, Pilkington, 1997.

10. 『都市のコスモロジー』 Toshi no kosumorojî, Nichi-Bei-Ou toshi hikaku (Cosmologie de la ville, comparaison des villes du Japon, des Etats-Unis et d’Europe), Tokyo, Kodansha, 1993, 236 p. [Comparing urbanity in Japan, Europe and North America].

11. (direction/ed.) Cinq propositions pour une théorie du paysage, Seyssel, Champ Vallon, 1994, 125 p. [Five proposals for landscape].

12. (direction/ed.) La Maîtrise de la ville : urbanité française, urbanité nippone, II, Paris, Éditions de l’EHESS, 1994, 595 p. [Mastering the city : French and Japanese urbanity, II].

13. (direction/ed.) Dictionnaire de la civilisation japonaise, Paris, Hazan, 1994, 537 p. in quarto. [Dictionary of the Japanese civilization].

14. Les Raisons du paysage, de la Chine antique aux environnements de synthèse, Paris, Hazan, 1995, 192 p. [The Reasons of landscape, from ancient China to synthetic environments].

15. 『日本の風土性』Nihon no fûdosei (La Médiance nippone), Tokyo, NHK Ningen Daigaku, 1995, 130 p. et 2 vidéo-cassettes (total 6 h) [Japanese mediance].

16. Être humains sur la Terre, principes d’éthique de l’écoumène, Paris, Gallimard, 1996, 212 p. 日本語訳『地球と存在の哲学』、筑摩書房、1995 [Being human on the earth : principles of ecumenal ethics].

17. (direction/ed., avec/with Philippe Nys) Logique du lieu et œuvre humaine, Bruxelles, Ousia, 1997, 276 p. [Logic of place and human work].

18. (avec/with Maurice Sauzet et/and Jean-Paul Ferrier) De Japon en Méditerranée, architecture et présence au monde, Paris, Massin, 1999, 189 p. [From Japan to the Mediterranean : architecture and presence in the world].

19. (direction/ed.) La Mouvance : du jardin au territoire, cinquante mots pour le paysage, Paris, Éditions de la Villette, 1999, 100 p. [Fifty words for landscape].

20. (direction/ed.) Logique du lieu et dépassement de la modernité, tome I : Nishida, la mouvance philosophique, 390 p ; tome II : Du lieu nishidien vers d’autres mondes, 294 p., Bruxelles, Ousia, 2000. [Logic of place and the overcoming of modernity, I. Nishida and his influence, II. From the Nishidian place to other worlds].

21. Écoumène, introduction à l’étude des milieux humains, Paris, Belin, 2000, 271 p. [Ecumene : an introduction to the study of human milieux]. 日本語訳『風土学序説』、筑摩書房, 2002.

22. Les Déserts de Jean Verame, Milan/Paris, Skira/Seuil, 2000, 180 p. [Jean Verame’s deserts].

23. (対談集entretiens/talks)『都市、建築空間の場所生』Toshi, kenchiku kûkan to bashosei (Ville, architecture et sens du lieu), Sendai, Miyagi Daigaku, 2001, 331 p. [City, architecture, sense of place].

24. (avec/with Maurice SAUZET) Le Sens de l’espace au Japon. Vivre, penser, bâtir, Paris, Arguments, 2004, 227 p. [The Sense of space in Japan].

25. (direction/ed., avec/with Philippe BONNIN et/and Cynthia GHORRA-GOBIN) La Ville insoutenable, Paris, Belin, 2006, 366 p. [Unsustainable city].

26. (direction/ed.) Mouvance II. Du jardin au territoire, soixante-dix mots pour le paysage, Paris, Éditions de la Villette, 2006, 120 p. [Seventy words for landscape].

27. (編著direction/ed.)『日本の住まいに於ける風土性と持続性』 Nihon no sumai ni okeru fûdosei to jizokusei (Médiance et soutenabilité dans l’habitation japonaise), Kyôto, Nichibunken, 2007 [Mediance and sustainability in Japanese habitation].

28. La Pensée paysagère, Paris, Archibooks, 2008. 日本語訳『風景という知』、世界思想社、2010. Translated as Thinking through landscape, Routledge, 2013.

29. (direction/ed., avec/with Philippe BONNIN et/and Alessia DE BIASE) L’Habiter dans sa poétique première, Paris, Donner lieu, 2008, 404 p. [The primary poetics of inhabiting].

30. (direction/ed.) Une ville se refait-elle ? Paris, L’Harmattan, 2009, 142 p. (Géographie et cultures n° 65, printemps 2008) [ Can cities be remade ?].

31. (co-direction / co-editor) Être vers la vie / 生への存在. Ontologie, biologie, éthique de l’existence humaine. Actes du colloque de Cerisy-la-Salle, Ebisu n°40-41, automne 2008-été 2009, 224 p. [Being toward life. Ontology, biology, ethics of human existence. Proceedings of the Cerisy-la-Salle symposium].

32. Histoire de l’habitat idéal. De l’Orient vers l’Occident, Paris, Le Félin, 2010, 399 p. [History of the ideal abode : from East to West].

33. Milieu et identité humaine. Notes pour un dépassement de la modernité, Paris, Donner lieu, 2010, 150 p. [Milieu and human identity, being notes for an overcoming of modernity].

34. (Traduction et glose de) WATSUJI Tetsurô, Fûdo. Le milieu humain, Paris, Éditions du CNRS, 2011, 330 p. [和辻哲郎著『風土』の仏訳(Translation and gloss of) Fûdo. The human milieu].

35. (co-direction / co-editor) Donner lieu au monde : la poétique de l’habiter Paris, Donner lieu, 2012, 402 p.

36. (direction/ed.) De chose en fait : la question du milieu. Articles issus du colloque de Shin-Hirayu [From thing to fact : the question of milieu. Proceedings of the Shin-Hirayu symposium], Ebisu, n° 49 (printemps-été 2013), p. 50-113 .

木村 敏

木村 敏

京都大学名誉教授
河合文化教育研究所 所長

講演テーマ

「統合失調症における自己の障碍」2014年7月12日

講演概要 講演概要

他の医学分野と同様に精神医学においても,症状は患者が原発的にこうむっている成因的障碍に対して示す自己防衛策であって,単純に除去すべきものではないだけでなく,最近の国際的診断基準に見られるように,病気の診断の最終的な根拠とすべきものでもない。

統合失調症schizophrenia(旧呼称「精神分裂病」,19世紀には「早発痴呆」dementia praecoxと呼ばれた)の代表的症状は自己と非自己の混乱である。自分の行為がいちいち他人に操作されているという「被影響体験」や,自分の考えが他人に筒抜けになっているという「思考伝播」などが見られる。これらの統合失調症状の背後に想定される,それ自体は対象化不可能な「個別化原理の危機」を見定めるのが現象学的精神病理学の課題である。

現象学的精神病理学の始祖であるL. Binswangerは,Heideggerが『存在と時間』で展開した現存在Daseinの思索に依拠して「現存在分析」Daseinsanalyseを標榜したが,彼は患者との間人間的な交わりを通じて患者の人格Personそのものを「直観的」に見て取る「感覚診断」を主張した。H.C. Rümkeは統合失調症患者が相手に与える不自然な感覚を「プレコックス感」と名付け,これは患者における「対人接触本能」の減弱によると考えた。W. Blankenburgは,統合失調症患者が相手に与える奇異の感Befremdung,は,患者が周囲の世界に対して抱く疎外感Entfremdung,に対応していると言う。

Blankenburgによると,統合失調症患者における自己の自立性の障碍と行動の不自然さ(経験の自明性の喪失)とは弁証法的相補性の関係にあり,自明性を否定して獲得しなければならない自己の自立性は逆に自明性に依拠していると言う。しかし私の考えでは,統合失調症で自己(みずから)と自然さ(おのずから)が共に障碍されるのは,両者に共通の根源的自発性(「自」は発出を意味する)の障碍に基づく等根源的な事態である。「みずから」は,一切の経験の根源をなす生命活動が「わが身」という個別的な場面に顕現する様態だし,「おのずから」はこの生命的自発性が個人の身体に限定される以前に示す非人称の根源的活動を指している。

統合失調症は,ホモ・サピエンスという特異な種の生物だけが経験する特殊人間的な病態と思われる。それは遍在的生命(ゾーエーzoé)が「身」を介して個別的生命(ビオスbios)にまで限定されることについての特殊人間的な自覚と無関係ではない。だとするとそれは,ゾーエー的生命の連帯を理想とする全体主義と,ビオス的生命の個別性を重視する個人主義との相克とも無関係ではない。統合失調症が広く西欧の世界に出現するようになったのは18世紀後半と言われるが,これは啓蒙思想が一世を風靡してこの相克が一般に浸透しはじめた時代と考えてよい。その後20世紀に入って個人主義がますます優勢となり,この「相克」が時代遅れとなるのと同時代的に,統合失調症の症状は次第に軽症となり,典型例の発生数も減少し始めた。統合失調症は,人間という種の「種の主体性」が患者個人における「個の主体性」へと限定される過程に関わる障碍であって,患者は「種の主体性」への埋没に逆らって不自然な仕方で「個の主体性」を実現しようとし,そのために私が「アンテ・フェストゥム」ante-festumと呼ぶ未来先取的な生き方をとらざるをえない。この必然性が最近では減退しつつあるのかもしれない。

「「自己」と「私」の概念をめぐって」2014年7月13日

講演概要 講演概要

精神医学は,「自己」が十全に「私自身」でありえないという病理的事態についての学である。「自己」や「私」を実体的・対象的に概念化しようとする思考法ではこの事態は十分に論じられない。私は精神科医になってから今日まで,もっぱら西田幾多郎の自己論を基盤にしてこの問題を考えてきた。

私の「自己」についての思索の出発点は離人症論だった。離人症患者は「自分というものが感じられない」,「ものを見たり聞いたりしてもそれが実在するという実感を伴わない」という。西田は「世界が自覚する時,我々の自己が自覚する。我々の自己が自覚する時,世界が自覚する」と言い,「物来って我を照す」と言う。私は離人症を,世界の知覚に伴う「自我クオリティ」Ich-Qualität(最近では「クオリア」qualiaと呼ばれる)が成立せず,そのために世界と自己の双方が現実性を失う状態であると考えた。

統合失調症は,対人関係の場面において自己が十全に自分自身ではありえず,その根底から他者性を帯びてしまうことを特徴とする。自分の行為がいちいち他人に操られているという「被影響体験」,自分の考えが他人に筒抜けになっているという「思考伝播」が代表的な症状で,その場合の「他者」はParanoiaの場合のように自己から空間的に分離した存在としてではなく,自己を主体的な自己として成立させるはずの「自己の根底」の位置に経験される。

Rümkeは,統合失調症者が診察者の心に生み出す不安感とよそよそしさの感覚を,両者の接近本能が通じ合わないためと考え,これを「プレコックス感」と呼んだ。Binswangerは,診察者がその本質直観能力に基づいて,患者の「経験の非一貫性」と疏通性の欠如を知覚する「感覚診断」について論じている。Blankenburgは,精神科医が統合失調症者から感じる「自然な自明性の喪失」の違和感と患者の側での周囲世界の疎外感が厳密に対応するという。統合失調症の自己障碍が表面化するのは,自己と他者との「あいだ」の感覚の不自然さとしてである。

西田は彼の論文「私と汝」に次のように書いている。「私と汝は絶対に他なるものである。……併し私は汝を認めることによって私であり,汝は私を認めることによって汝である。私の底に汝があり,汝の底に私がある。私は私の底を通じて汝へ,汝は汝の底を通じて私へ結合するのである。」「自己が自己自身の底に自己の根柢として絶対の他を見るといふことによって自己が他の内に没し去る。即ち私が他に於て私自身を失ふ。之と共に汝も亦この他に於て汝自身を失はなければならない。私はこの他に於て汝の呼聲を,汝はこの他に於て私の呼聲を聞くといふことができる。」

自己と他者,私と汝が出会うとき,二人の「あいだ」ではじめて開かれる双方の「底」,この「底」どうしの「通底」によってはじめて可能となる「絶対の他」という「自己の根柢」,そしてこの「自己の根柢」を基盤にしてその上に「絶対矛盾的自己同一」の実現として成立する「自己の自己性」──統合失調症において原理的に解体の危機に瀕しているのは,まさにこのような自己の構造であるにちがいない。

プロフィール

講演概要 講演概要
簡単な履歴

1955.3 京都大学医学部卒業
1961.10~1963.9 ミュンヘン大学精神科に留学
1969.2~1970.10 ハイデルベルク大学精神科客員講師
1970.10~1974.12 名古屋市立大学医学部助教授
1974.12~1986.5 同教授
1986.5~1994.3 京都大学医学部教授
1994.4~現在 社会福祉法人京都博愛会 京都博愛会病院顧問
1994.4~現在 河合文化教育研究所主任研究員(2008.4 より所長)
1994.4~1995.3 龍谷大学社会学部教授
1995.4~2001.3 龍谷大学国際文化学部教授
2002.5~現在 財団法人日独文化研究所常務理事(2013.5 より理事長)
2004.4~2005.9 立命館大学文学部哲学科客員教授

主な受賞・栄誉等

1981 第3回ジーボルト賞(ドイツ連邦共和国より)

1985 第1回エグネール賞(スイス・エグネール財団より)

2003 第15回和辻哲郎文化賞

2010 第64回毎日出版文化賞(著書『精神医学から臨床哲学へ』に対して)

2012 第30回京都府文化賞特別功労賞

主要論文リスト

著書(単著のみ)全35 冊:

1965~2001 の日本語論文・著書は、2001 年に『木村敏著作集』全8巻に収録(弘文堂)

2005 『関係としての自己』(みすず書房)

2008 『臨床哲学としての知──臨床としての精神病理学のために』(洋泉社)

2010 『精神医学から臨床哲学へ』(ミネルヴァ書房)

2012 『臨床哲学講義』(創元社)

1992 Écrits de Psychopathologie Phénoménologique (Presses Universitaires de France, Paris).

1995 Zwischen Mensch und Mensch. Strukturen japanischer Subjektivität ( Wissenschaftliche

Buchgesellschaft, Darmstadt).

2000 L’Entre. Une approche phénoménologique de la schizophrénie (Jérôme Millon, Grenoble).

2005 Scritti di psicopatologia fenomenologica (G. Fioriti, Roma).

2013 TRA per una fenomenologi dell’ incontro (Il Pozzo die Giacobbe, Roma).

訳書(共訳を含む)19冊

編著(共編を含む)27冊

欧文論文(単著のみ)47篇

邦文論文(単著)144篇

邦文論文(共著)14篇
アラステア キャンベル

アラステア キャンベル

シンガポール国立大学 生命医療倫理学センター センター長

講演テーマ

「医学と科学の核心にあるものとしての倫理」2014年7月12日

講演概要 講演概要

我々は経済成長と収益性を一番の価値とするポスト宗教・グローバル化時代に生きている。市場価値は日常生活のあらゆる側面に浸透し,我々がどこに住み,どのように暮らすか,子どもがどのような教育を受けるか,どのスポーツや娯楽が最も金銭的見返りが大きいか,若者が何を人生の目標とするか,老いと死をどのようにとらえるか,そして未来の世代へ何を遺すかに影響を及ぼしている。

この市場経済の浸透は,科学全般,特に医学に対して重大な影響を及ぼしてきた。科学の価値観は,物事の性質を偽りなく正確に説明することへの偏りなき探究と,人類の利益のための知識共有に対するコミットメントである。こうした価値観は,完全には放棄されていないにせよ大きく衰退しており,代わりに,科学における不正行為や,個人または組織の利益のため研究結果を保留・隠匿することが横行している。医学では,個人収入をアップすることが一番の原動力となり,「患者の健康を第一に考えるべし」という倫理的理想に代わって,美容術や科学的に効果が証明されていない治療法といった利益の多い活動が推進されている。

医学と科学の核心にあるものを取り戻すにはどうすればよいか? 必要なのは,ラディカルな形の倫理である。すなわちそれには,,人間より利益を優先させることで我々の真の人間性を脅かしている力に対する,してする鋭い社会政治学的批評批判へのコミットメントを行うことが必要とされているのだという,ラディカルな形の倫理が必要である。

「東洋と西洋との出会い-生命倫理の多文化的発展」2014年7月13日

講演概要 講演概要

このプレゼンテーションでは,まず,英国のブリストル大学とニュージーランドのダニーデンオタゴ大学での生命倫理学センター設立に続いて私がたずさわった,国立シンガポール国立大学医学部における生命倫理学生命医療倫理学センター設立の経験についてお話ししたい。その後,アジアにおける生命倫理の主要課題である,パンデミック・災害対策を含む公衆衛生の問題,脆弱社会的な弱者集団を対象とした臨床研究,臓器売買やその他の人体組織摘出に関する側面,生命倫理の文化的要素,そして医学と科学における生命倫理の能力開発について明らかにしていきたい。

第2部では,こうした問題の多くがアジア特有のものではなく,我々が直面している問題の大半がグローバルな性質のものであり,国際的な解決策が必要だということを提案したい。アジアの生命倫理に関する議論について手短に述べた後,我々が近い将来に直面するであろう問題に効果的かつ倫理的に対処するため,地域的にも国際的にも注目すべき,生命倫理における一連の価値観を提案したいと思う。

プロフィール

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簡単な履歴

アラステア・キャンベル教授はシンガポール国立大学の医学部(the Yong Loo Lin School of Medicine)にある生命医療倫理学センターのセンター長であり,国際生命倫理学会の前会長でもある。 H.K.ビーチャー賞を受賞。ニューヨークにあるヘイスティングズ・センターとオックスフォード大学のエソックス・センターの特別研究員であり,また,医療倫理協会の名誉副会長で,エジンバラ王立学院の客員特別研究員にも選ばれた。最近の著書は「Health as Liberation(解放としての健康)」 (1996年),「Medical Ethics(医療倫理)」(D.G. Jones氏,G. Gillet氏との共著 第3版 2005年), 「The Body in Bioethics(生命倫理における身体)」(2009年),「Bioethics: the Basics(生命倫理の基礎)」 (2013年5月)。 英国バイオバンクの倫理・ガバナンス評議会の元議長で,現在はシンガポール政府生命倫理諮問委員会とシンガポール保健省全国医療倫理委員会のメンバーである。

主な受賞・栄誉等

1) H.K. Beecher Award, Hastings Center, New York, 2000

2) Corresponding Fellow, Royal Society of Edinburgh, 2011

主要論文リスト

Books (or book chapters)

1) The Body in Bioethics, Routledge-Cavendish (February 2009)

2) Bioethics: the Basics (Routledge-Cavendish, 2013)

3) Campbell*, A V, Jacqueline J L CHIN* and T C VOO*, “Ethics and Attitudes”. In A Practical Guide for Medical
Teachers, 4 ed., 253. London: Elsevier, 2013. 413 pp.

4) Campbell, A V, “Why The Body Matters: reflections on John Harris’s Account of Organ Procurement”. In From
Theory to Practice in Bioethics: An Anthology Dedicated to the Works of John Harris. Manchester University Press, 2013.

Articles in referred journal

1) With Ang, A., Loke, P., Chong, S.A., Live or Let Die: Ethical Issues in a Psychiatric Patient with End-stage
Renal Failure Annals Academy of Medicine, Vol. 38 No. 4 pp. 370-373 (2009)

2) With SA Chong, Capps, B., Subramaniam, M., Voo, T.C Clinical Research in Time of Pandemics Public Health
Ethics,3(1): 35-38 (2010)

3) CHIN, Jacqueline J L and A V Campbell, “Transplant tourism or international transplant medicine? A case
for making the distinction”. American Journal of Transplantation, 12, no. 7 (2012)

4) Campbell, A V, Tan, C, Boujaoude, E, “The ethics of blood donation: Does altruism suffice?”. Biologicals,
40, no. 3 : 170 172 (2012)

5) Campbell, A V, “Can virtue prevail? Safeguarding integrity in medicine and science”. Indian Journal of
Medical Ethics, 10, no. 1 (2013): 11 13. (India).

6) Campbell, A V, “Why The Body Matters: reflections on John Harris’s Account of Organ Procurement”. In From
Theory to Practice in Bioethics: An Anthology Dedicated to the Works of John Harris. Manchester University Press, 2013.

加藤 尚武

加藤 尚武

京都大学名誉教授
人間総合科学大学 教授

講演テーマ

「徳倫理学と生命倫理」2014年7月13日

講演概要 講演概要

生命倫理学は,アメリカの州立大学で神学が廃止されることから,大量の哲学系研究者が職を失うことに対する防衛策として,ビーチャム(T.L.Beauchamp 1939-)らが人工的に作り上げた研究領域である。学説の集成としては『バイオエシックス百科事典』(1972-78)の成立が,社会的な認知が確立された記念碑であると言ってもいい。

多面的な内容を含むが,医師に対する患者の自己決定権を強く打ち出して,社会的にも大きな影響をうみだした。その中心概念は,自分の事柄は自分で決める権利があるという「自律」の尊重であった。20世紀初頭にアメリカで活躍した自由主義の法律家,ブランダイズ(L.D.Brandeis 1856-1941),ホームズ(O.W.Holms 1841-1935)らの主張を,医師対患者の関係に導入したものであった。

彼等の拠り所は,おおむねJ.S.ミルの「自由論」(1859)であったが,ミルの世俗主義的な功利主義(最大多数の最大幸福)と自由主義(政府は個人の行動が他者への危害をもたらさない限りでは,個人の行動に干渉すべきではない)が,生倫理学を通じて社会的な影響力を確定する結果になった。

現代では功利主義・自由主義にたいする批判があらゆる角度から噴出するという状況である。「自己決定は無駄である。最適の医療を患者に強制するパターナリズムだけが正当化可能である」(Sarah Conly:Against Autonomy,Cambridge 2013)「自由主義者は純粋なアトムのような個人と言う非現実的な想定をしている」(サンデル),「人生の目的を示すことができない」(B.Williams,MacIntyre)等の批判が寄せられている。

さまざまな生命倫理学批判の中で,「徳倫理学」の立場は,人間に幸福をもたらす特性は徳であるという観点から,新しい倫理学のシステムを作り始めた。その作業をはじめたのは,熱心なカトリック教徒であったアンスコム(G.E.M.Anscombe 1919-1974)であったが,それを引き継いだフット(Philippa Foot1920-2010)やハーストハウス(R,Hursthouse)は, カトリシズムのなかからアリストテレスの倫理学を切り出して生きたものとして残そうとしている。

カトリシズムは聖書(三位一体)+アリストテレス=トミズムという形で成立したが,今や,その複合体のなかから自然主義と一致する部分(リストテレス)を切り出して生かそうという動きとなってきている。徳倫理学は,アリストテレスの自然主義が現代的な生命科学とかなりな程度まで重なり合うという見込みを持っているが,しかし,アリストテレスが「身体から離れて働く霊魂」を認めていたように,アリストテレスのすべてが現代の自然科学と両立可能なのではない。

すべての宗教が,霊魂の不滅,来世,輪廻,最後の審判というような超自然的な教義をすてて,自然的に理解可能な人間の真実のみを残して再編成されるか否かを問われる可能性が見えてきている。生命倫理学と徳倫理学の接点から,巨大な思想的な転換の波が生まれる可能性がある。

プロフィール

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簡単な履歴

東京生まれ
1963年,東京大学文学部哲学科を卒業。東京大学文学部助手,山形大学教養部講師・助教授,東北大学文学部助教授,千葉大学文学部教授,京都大学文学部教授,鳥取環境大学学長,東京大学医学系研究科特任教授を歴任。元日本哲学会委員長。

主な受賞・栄誉等

哲学奨励山崎賞(1979年),和辻哲郎文化賞(1994年),紫綬褒章(2000年),建築協会文化賞(2002年),瑞宝中綬章(2012年)

主要論文リスト

『ヘーゲル哲学の形成と原理』1980(昭和55)年、未来社

『ジョーク哲学史』1983(昭和58)年河出書房新社初版、現在河出文庫)、

『バイオエシックスとは何か』1986(昭和61)年、未来社、

『21世紀への知的戦略』1987(昭和62)年、筑摩書房、

『ジョークの哲学』1987(昭和62)年、講談社現代新書

『人間通になるためのことわざ学入門』1988(昭和63)年、PHP研究所

『世紀末の思想』1990(平成2)年、PHP研究所

『形の哲学』1991(平成3)年、中央公論社、250頁

『環境倫理学のすすめ』1991(平成3)年、丸善、226頁

『哲学の使命』1992(平成4)年、未来社

『進歩の思想・成熟の思想』1993(平成5)年、PHP研究所

『倫理学の基礎』1993(平成5)年、放送大学教育振興会

『ヘーゲルの法哲学』1993(平成5)年、青土社

『ヒトと技術の倫理』1993年(平成5)、日本放送出版協会

『二十一世紀のエチカ』1993(平成5)年、未来社刊

『応用倫理学のすすめ』1994(平成6)年、丸善

『技術と人間の倫理』1996(平成8)年、日本放送出版協会

『倫理学で歴史を読む』清流出版、1996(平成8)年

『現代を読み解く倫理学』1996(平成8)年、丸善ライブラリー

『現代倫理学入門』1997(平成9)年、講談社学術文庫

『20世紀の思想』PHP新書、1998(平成9)年、

『進歩の思想 成熟の思想』講談社学術文庫1997年

『脳死・クローン・遺伝子治療』PHP新書、1999(平成11)年

『子育ての倫理学』丸善ライブラリー、2000(平成12)年、

『先端技術と人間』NHKライブラリー、2001(平成13)年

『価値観と科学/技術』岩波書店、2001年

『合意形成とルールの倫理学』丸善ライブラリー、2002(平成14)年

『戦争倫理学』ちくま新書、2003(平成15)年、

『新・環境倫理学のすすめ』、丸善ライブラリー、2005(平成17)年

『現代人の倫理学』、丸善、2006(平成18)年、

『教育の倫理学』、丸善、2006(平成18)年、

『資源クライシス』丸善、2008(平成20)年

『かたちの哲学』岩波現代文庫(再刊)、岩波書店、2008(平成20)年

『合意形成の倫理学』丸善、2009(平成21)年

『環境倫理学入門――持続可能性の設計――』お茶の水書房(平成22(2010)年

『災害論』平成23(2011)年世界思想社

『哲学原理の転換』平成24(2012)年未来社

清水 哲郎

清水 哲郎

東京大学 人文社会系研究科 死生学・応用倫理センター上廣講座
特任教授

講演テーマ

「同の倫理―異の倫理 臨床の倫理原則を理解するために」2014年7月13日

講演概要 講演概要

私は長年,哲学研究者として医療従事者たちと対話を重ね,理論的にまっとうで,実践的に医療現場で有用な臨床倫理のシステムを構築しようとしてきた。この経過で,私は西洋の一般倫理および医療倫理の諸理論から多くの益を得てきたが,時にしっくりこないこともあった。これは西洋と日本ないし東アジアの文化の差によるものかもしれない。私は同の倫理―異の倫理と呼ぶ倫理の理解を見出すに至っているが,これはヘルスケアにおけるケアという営みの起源,本質および倫理を説明するのに,また,文化の差を理解するのに有効であるように思われる。これを巡って以下の諸点を提示したい。

第一に,私たちの倫理的な考えや振舞いは,同の倫理および異の倫理――〈皆一緒〉と〈人それぞれ〉――との関係で説明される。前者には,私たちは同じ思いを共有する仲間であるという理解に基づく,互いの支え合いという特徴がある。後者には,私たちは互いに疎遠な者だという理解に基づく,相互不干渉という特徴がある。人々は互いの距離を測り,その距離に応じて二つの倫理をブレンドして,適切な振舞いを割り出している。二つの倫理にはそれぞれ陰の面があるが,それぞれの欠点は他方の利点によってカバーされる―両者は互いに補完しあっている。

第二に,二つの倫理についての以上の説明を前提すると,論理的な推測により,それらが群れのサバイバルという動機により発生し,発展し,かつ混ざり合ってきたという成立の歴史が示唆される。すなわち,同の倫理は群れ内部の人間関係に起源をもつ。群れの成員は群れのサバイバルを目指して生きており,成員同士の協働と支え合いは群れのサバイバルに不可欠であった。相互の支え合いを規定していたのは,個の尊重ではなく,群のサバイバルであった。他方,異の倫理は群れ同士の関係に起源がある。私たちの祖先は他の群れとの応対の経験を通して,(ことに勢力が拮抗している場合)縄張り争いを続けるより,縄張りを認め合い相互不可侵と相互不干渉により平和的共存を目指すほうが,各々のサバイバルに有効であるという智恵を獲得した。こうして,群れ内部では同の倫理,群れの間では異の倫理が成立した。やがて群れが割拠しているという原初的な状況から,次第に複雑な社会へと発展する過程で,両者が混じり合ってきたのである。

第三に,プリミティブなケアは人のプリミティブな群れにおいて行われていたが,そこでは同の倫理のみが支配的であった。そうしたケアに不可欠の諸要件は,同の倫理の下でのコミュニケーションのプロセスと与益である。これに対して,ヘルスケアは社会化した(つまり,社会的なシステムとなった)ケアであり,そこではケアが社会化したものであるために不可欠の諸要件が,異の倫理が入ってくることにより付け加わっている。不干渉の原則は自律原則の基礎であり,何が患者の利益であるかについて意見がさまざまであることが考慮に入れられる。そして社会的視点での適切さ(これは正義と関係するが)が,もう一つの不可欠の要素として導入された。かくして,次の三つの原則が社会化したケアに不可欠な諸条件から演繹される。そして,これらは同の倫理―異の倫理の下でこそ適切に理解される。

1)人間尊重:ヘルスケアにおいて,相手を人として遇せよ
2)与益:ヘルスケアを通して,相手のよいあり方を推進することを目指せ
3)社会的適切さ:現在している,ないしこれからしようとしているヘルスケアの活動について,社会的視点で適切さをチェックせよ。

プロフィール

講演概要 講演概要
簡単な履歴

東京大学理学部天文学科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位修得退学。文学博士。北海道大学助教授,東北大学教授等を経て,2007 年から現職。
この間,日本緩和医療学会,日本哲学会,日本倫理学会,日本生命倫理学会,日本医学哲学倫理学会等で理事等を歴任。

主要論文リスト

Shimizu T, The Ethics of Unity and Difference: Interpretations of Japanese Behaviour Surrounding 11 March 2011, Tetsuji Uehiro,ed. Ethics for the Future of Life: Proceedings of the 2012 Uehiro-Carnegie-Oxford Ethics Conference, The Oxford Uehiro Center for Practical Ethics, 2013: 134-143.

Shimizu T., Palliative Care, Encyclopedia of Applied Ethics, 2nd ed., vol.3: 328-337, Elsevier, 2012.2

Shimizu T. & Burnett C., eds., Words in medieval logic, theology and psychology. Brill, 2009

Shimizu T., Non-consequentialist Theory of Proportionality: with reference to the Ethical Controversy over Sedation in Terminal Stage, Journal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicine, 2 (2007): 4-25.

Shimizu T., “Word and Esse in Anselm and Abelard”,G.E.M.Gasper & H.Kohlenberger, eds., Anselm and Abelard: Investigations and Juxtapositions,pp.179-195,Pontifical Institute of Medieval Studies,2006.

Shimizu T., “The place of intellectus in the theory of signification by Abelard and ars meliduna”,Intellect et imagination dans la Philosophie Medievale: Actes du XIIe Congres International de Philosophie Medievale de la Societe Internationale pour l’Etude de la Philosophie Medievale( S.I.E.P.M.) Porto, du 26 au 31 aout 2002, pp.927-939,Brepols,2006.

Shimizu T.,”Words and Concepts in Anselm and Abelard”,J.Biard,ed.,Langage, sciences, philosophie au XIIe si`ecle,pp.177-197,Paris: Vrin,1999.

Shimizu T., “Alcuin’s Theory of Signification and System of Philosophy”, Didascalia 2,pp.1-18,(1996), 1998.

Shimizu T., “From Vocalism to Nominalism : Progression in Abaelard’s Theory of Signification”,Didascalia 1, pp.15-46, 1995.

Shimizu T., “Time and Eternity : Ockham’s Logical Point of View”,Franciscan Studies, 50(1990),pp.283-307, 1993.

小林 道夫

小林 道夫

京都大学名誉教授
龍谷大学 文学部 特任教授

講演テーマ

「科学・生・心」2014年7月13日

講演概要 講演概要

現代の文明・文化を論じる場合,まずもって取り上げ対象としなければならないのは,いうまでもなく,科学技術であり,その源である近現代の「科学」である。科学や科学技術がこれからも進展し,人類に対して数々の便宜や効用をもたらし続ける事に疑いの余地はない(もちろん科学技術が人間の生命にたいして極めて深刻な事態を引きおこすことは,最近の周知の事態からしても忘れてはならないが)。科学や科学技術の圧倒的な進展は,われわれに日常の「生」における言語活動やわれわれの「心」の存在や心的現象をも将来的には科学や科学技術によって説明し尽くしうるであろうという「自然主義」ないし「科学主義」を多少とも引き起こす。

本稿では,近現代の科学の活動と,われわれの日常の生活世界での活動および心の存在と心的活動とを対比させ,後者は前者に将来的に還元しうるかということを問題にする。そして還元しえないとすれば,それはどういう根拠に基づいてかということを問題にする。そのために,第一に,科学の基本的な条件・規範を取り上げることを試みる。現代科学は極めて多岐にわたり,一般に科学というもののイメージを把握できない状態にある。私は一介の哲学研究者であり,もちろん私も多岐にわたる現代科学をテクニカルに理解することなどできない。しかし,そうだからこそ認識論や世界観の検討を問題にする哲学研究者が,一七世紀に形成された「科学」というものの基本的条件や規範をとりあげ,科学というもののイメージを呈示する努力をしなければならないと考える。

第二に,以上の点を踏まえたうえで,われわれの日常の生活世界での活動を取り上げ,その特質を,科学的活動を念頭において,摘出する。日常の生活世界でのわれわれの活動では,まずわれわれは「五感」によって対象を直接とらえ,それについて「日常言語」によって説明したり,他人とのコミュニケーションをおこなう。日常の生活世界でのわれわれの活動は,それらの点で数理言語や抽象的モデルによる科学的活動と基本的に異なるのであり,科学的活動とは異質な独自の価値をもつのである。

最後に,われわれの「心」の存在を取り上げる。現代では,特にアメリカにおいて,「心の存在」の実在性を疑う風潮が強い。これに対して私は,とくにデカルトの「心の哲学」を参照し,「心の存在」の実体性を擁護する。デカルトにおいては「心=私」は,まずは,あらゆるものの存在を疑うという「普遍的懐疑」を通して,その存在は疑いえないとして定立された。デカルトにおいて「私の存在」は「普遍的懐疑」の行使による内的な「直観」によって与えられたのである。他方でデカルトは,日常の生活世界では,心は身体と合一して,「心身合一体」として活動するということを認める。そこで,「心」と「身体」という二つの異なる実体が合一するということは,科学や形而上学では理解できない,自ら体現して知る他のない「原始的事態」とみなしたのである。デカルトはいうまでもなく,当時の最先端の数学者であり物理学者であった。そのデカルトが,生活世界における活動は「心身合一」によるものであり,この二つの局面は全く異質なことであり,したがって両立すると考えたのである。私は,現代の科学時代にあってこのような見地がおおきな反省の題材となると考える。

プロフィール

講演概要 講演概要
簡単な履歴

京都大学文学部哲学科卒業,
同大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学後,
フランス政府給費留学生としてフランスに留学。
コレージュ・ド・フランス哲学講座助手,
大阪市立大学文学部講師,同大学大学院文学研究科教授,
京都大学大学院文学研究科教授。
現在龍谷大学文学部特任教授

主な受賞・栄誉等

和辻哲郎文化賞(学術部門)

日本学士院賞,

主要論文リスト

La philosophie naturelle de Descartes(Paris, Vrin),

『デカルト哲学の体系ー自然学・形而上学・道徳論』(勁草書房)、

『科学哲学』(産業図書)、

『デカルトの自然哲学』 (岩波書店)、

『デカルト哲学とその射程』(弘文堂)、

『科学の世界と心の哲学』(中公新書)

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