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第4回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2017.7.1-2
未来への窓

第4回KUIP開催イメージ

百周年時計台記念館において、第4回「京都大学-稲盛財団合同京都賞シンポジウム」(KUIP: Kyoto University-Inamori Foundation Joint Kyoto Prize Symposium)を開催しました。

第4回目となる2017年は、2年後の京都賞授賞対象分野である「材料科学」、「地球科学・宇宙科学」、「映画・演劇」の3分野を取りあげ、「夢とロマンをはぐくむ芸術および科学・技術」の統一テーマのもと、2日間にわたって開催しました。シンポジウムでは、世界の最先端で活躍中の11名の専門家と1団体が一堂に会し、一般市民、学生、研究者など2日間合わせて約700名の参加者に対し、学術界と社会の双方から注目されている最先端の話題や興味深いテーマについて熱く語りました。

初日の映画・演劇分野のセッションでは、「人は何のために演じるのか-芸術の人間にとっての意味を考える-」をテーマとして、まず、横仙歌舞伎こども歌舞伎教室(岡山県奈義町教育委員会)の小中学生が「絵本太功記 尼崎の場」の歌舞伎公演を行いました。続いて、劇作家・演出家の平田オリザ 大阪大学COデザインセンター特任教授、人類学者の中沢新一 明治大学野生の科学研究所長、映画監督・脚本家の大森一樹 大阪芸術大学教授の3名の講師が講演し、最後に座長の鈴木晶子 教育学研究科教授を交えた全体討論を行い、コミュニティ、儀礼・儀式、映画等との関わりの中で演ずることの根源的意味、現代に生きる私たち人間にとっての演技や芸術の意味などについて示唆に富む講演・意見交換を行いました。

2日目午前の材料科学分野のセッションでは、「持続的未来のための新しい材料探索」をテーマに、北川進 高等研究院副院長(物質-細胞統合システム拠点長)、シャンフイ・ファン(Shanhui Fan)スタンフォード大学教授、十倉好紀 理化学研究所創発物性科学研究センター長、大野英男 東北大学電気通信研究所長の4名の講師が登壇し、化学とナノ空間との融合、ナノフォトニクスとそのトポロジーとの融合、強相関電子系と超伝導・磁性、半導体と磁性との融合といった、境界領域をまたぐ材料探索について、それぞれの分野で先進的な研究を進めてきた研究者ならではの視線で語りました。

午後の地球科学・宇宙科学分野のセッションでは、「地球・宇宙に対する新たな夢とロマン」をテーマに、平朝彦 海洋研究開発機構理事長、ティム・パーマー(Tim Palmer)オックスフォード大学王立協会(350周年記念)研究教授、小山勝二 名誉教授、ジョスリン・ベル・バーネル(Jocelyn Bell Burnell)オックスフォード大学教授の4名の講師が講演し、地球深部探査船、スーパーコンピュータといった最新のツールを駆使した地球深部観測や地上の気象予測に関する成果から、電波望遠鏡を駆使し、創意工夫を凝らすことにより発見した超新星やパルサーなど遠い宇宙の果ての出来事に至るまで、その有り様をつぶさに捉えることのできるようになった夢とロマンに溢れる世界について語りました。

その後、クロージング・セッション(3分野合同対話セッション)では、各分野登壇者と本シンポジウムの企画を行った教員に加えて、山極壽一 総長がコーディネータ役として登壇しました。3つの分野それぞれに興味深く、特に他分野の講演が刺激的であり、分野を超えた交流の重要性を再認識したとの意見が多く出ました。最後には、科学・技術は「妥協が許されない」が、芸術は「妥協を受け入れる」といった違いを指摘する意見や、日本の大学が世界のトップレベル入りを志向しても、欧米の大学では当たり前の美術館も劇場も持たない(芸術に対する理解が十分ではない)ようでは、それも難しいのではないかといった意見がでるなど、大変考えさせられる興味深いディスカッションとなりました。

聴講者からは、「映画・演劇分野のプログラムが変化に富み内容が豊かで面白かった」、「演劇に対する考え方が変わった」、「どのようにして現実から未来社会への可能性が開けていくのか、また、どのようにして夢だと思われていたような技術を現実のものとしていくことができるのかについて、大変参考になる話を聞くことができた」、「1日目の映画・演劇の内容も、2日目のナノの世界から宇宙の起源におよぶ広大な世界の研究も、まさに共通の基盤が人間の夢とロマンにあることがわかった」、などの感想が寄せられました。

1日目2017.07.1

オープニング・セレモニー

「夢とロマンをはぐくむ芸術および科学・技術」

思想・芸術部門「映画・演劇分野」

「エレクトロニクス」

「人は何のために演じるのか -芸術の人間にとっての意味を考える」
人は何のために演じるのでしょうか。古の昔から、人は儀礼や儀式のなかで、また互いの関わりのなかで、演ずるということをしてきました。人生の様々なステージで父となる、母となる、職業人となるという具合に、集団の暮らしのなかで求められる役割を演ずることも人間の営みです。シンポジウムでは、演ずることの根源的意味に立ち返るとともに、現代を生きる私たちにとっての演技、さらには広く芸術の人間にとっての意味について考えてみたいと思います。

登壇講師

[公演]横仙歌舞伎こども歌舞伎教室(岡山県奈義町教育委員会)
「絵本太功記十段目 尼崎の場」
平田 オリザ(劇作家・演出家/大阪大学COデザインセンター 特任教授)
「コミュニケーションの装置としての演劇」
中沢 新一(人類学者、明治大学野生の科学研究所 所長)
「芸術のロゴスとレンマ」
大森 一樹(映画監督、脚本家、大阪芸術大学 教授)
「人が演じることが、映画からなくなる時」

2日目2017.07.2

先端技術部門「材料科学分野」

「材料科学分野」

「持続的未来のための新しい材料探索」
未来に向けた新しい科学の進展は、時に、異なる学問分野の境界領域から生まれてきました。本セッションでは、ナノフォトニクスとそのトポロジーとの融合、強相関電子系と超伝導・磁性、半導体と磁性との融合、化学とナノ空間との融合といった、境界領域をまたぐ材料探索を取り上げます。それぞれの分野で先進的な研究を進めてこられた先生方に、夢やロマンを含めて語っていただきます。

登壇講師

北川 進(京都大学高等研究院 副院長、特別教授 物質-細胞統合システム拠点 拠点長)
「持続的未来のための気体の科学と技術」
シャンフィ ファン(スタンフォード大学 教授)
「ナノフォトニクスおよびそのトポロジカルサイエンスとの融合:光に対する人工ゲージポテンシャル」
十倉 好紀(国立研究開発法人理化学研究所 創発物性科学研究センター長、東京大学 教授)
「絡み合う物質の中の電気と磁気」
大野 英男(東北大学電気通信研究所 所長、教授)
「スピントロニクス -III-V族磁性半導体の創成から集積回路応用まで-」

基礎科学部門「地球科学・宇宙科学」

「地球科学・宇宙科学」

「地球・宇宙に対する新たな夢とロマン」
太古より人間は地球や宇宙と深く結びついてきました。それらは時には人間に災いをもたらすこともありますが、恵みや安らぎを与え、そして、夢とロマンをはぐくんできました。近年、科学・技術の飛躍的発展により、人間は地球や宇宙の有り様をつぶさに捉えることにより、より広く興味をもち、より深く理解できるようになりました。例えば、東北地方太平洋沖地震調査掘削による地震時に動いた断層のサンプル採取、1週間後の天気予報から100年後の気候予測までスーパーコンピュータを駆使した数値計算、また、地上あるいは人工衛星からの電波やX線による天体観測など、今回の講演者の皆さんは様々な創意工夫を凝らして、地球や宇宙の未知なる課題に挑んでこられました。そして、より広くより深く知ることで、さらに、我々の地球・宇宙に対する新たな夢とロマンが生まれています。

登壇講師

平 朝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構 理事長)
「プレートテクトニクス、日本列島、そして「ちきゅう」」
ティム パーマー(オックスフォード大学 王立協会 (350周年記念) 研究教授)
「決定論から確率論へ:気象および気候の予報におけるアンサンブル予報技術の開発」
小山 勝二(京都大学 名誉教授)
「京都千年の超新星のX線研究」
ジョスリン ベル バーネル(オックスフォード大学 教授)
「宇宙の花火-宇宙の突発事象を発見する」

クロージング・セッション

「地球科学・宇宙科学」

山極総長にご登壇いただき、3分野の招へい講師の先生方や企画を担当された先生方をまじえて、分野の垣根を超えた議論を行いました。

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