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第3回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム2016.7.9-10
未来への窓

第3回KUIP開催イメージ

百周年時計台記念館において、第3回「京都大学-稲盛財団合同京都賞シンポジウム」(KUIP:Kyoto University-Inamori Foundation Joint Kyoto Prize Symposium)を開催しました。

第3回目となる2016年は、2年後の京都賞授賞対象分野である「バイオテクノロジーおよびメディカルテクノロジー」、「数理科学」、「美術」の3分野を取りあげ、「未来への窓 -バイオ・メディカルテクノロジー、数学、美術の眼を通して-」の統一テーマのもと、2日間にわたって開催しました。シンポジウムでは、世界の最先端で活躍中の11名の専門家(うち美術分野の1名はビデオ講演による参加)が一堂に会し、一般市民、学生、研究者など2日間合わせて約740名の参加者に対し、学術界と社会の双方から注目されている最先端の話題や興味深いテーマについて熱く語りました。

初日のバイオテクノロジーおよびメディカルテクノロジー分野のセッションでは、「生命科学の技術革命」をテーマとして、宮脇敦史 理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長、クレイグ・ヴェンター(J. Craig Venter) JCVI会長・CEO、エマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier) マックス・プランク感染生物学研究所長、本庶佑 名誉教授の4名の講師が登壇し、蛍光バイオイメージング、ヒトゲノム科学応用、ゲノム編集(工学)技術、がん免疫治療など、生命科学で進行中の革命について語りました。

2日目午前の数理科学分野のセッションでは、「数学者の視線」をテーマに、クリスチアヌ・ルソー(Christiane Rousseau) モントリオール大学教授、森重文 高等研究院長、砂田利一 明治大学総合数理学部長、ジェフリー C. ラガリアス(Jeffrey C. Lagarias) ミシガン大学教授の4名の講師が登壇し、地球理解のための数学、数学研究の動機、数学の創造、数学と工学応用など、数学者ならではの視線で語りました。

午後の美術分野のセッションでは、「過酷な世界を切り抜けるアート」をテーマに、写真家の石内都氏、ゾフィア・クリク(Zofia Kulik)氏(ビデオ講演)、マリーナ・グルジニッチ(Marina Grzinic) スロベニア科学芸術アカデミー学術研究センター哲学研究所リサーチアドバイザーの3名の講師が講演し、社会の課題に対して、芸術はいかにして向き合い、それをどのように表象することができるのか、写真家ならではの視点や、芸術家ならではの考察などに基づいて語りました。

その後、クロージング・セッションでは、「シンポジウムの総括と将来展望 -統一テーマの視点から-」と題して、各分野登壇者と本シンポジウムの企画を行った教員に加えて、山極壽一 総長が進行役として登壇しました。山極総長のシンポジウム全体を通じての感想に加え、「世界が有限であると分かった今、専門家の皆さんは、現在取り組んでいる仕事やアートを通じて、私たちをどのような未来へといざなってくれるのでしょうか?」という問題提起などを基に、それぞれの専門分野を超えたディスカッションを行いました。

聴講者からは、「バイオ・メディカルテクノロジーの内容は興味深く、現段階の研究が把握できた」、「数学は面白いです。変に迎合せず、正面からありのままにその迫力や面白さをPRしていて良かった」、「アートが現実世界と密接につながっていることを感じた」、「山極総長の問題意識に深く共感しました」などの感想が寄せられました。

1日目2016.07.9

オープニング・セレモニー

「未来への窓 -バイオ・メディカルテクノロジー、数学、美術の眼を通して-」

先端技術部門
「バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジー分野」

21世紀は生命科学の世紀となると言われています。その端緒となったヒトゲノムを解読したVenter博士、ゲノム編集を可能にしたCharpentier博士、新しい癌免疫療法を開拓した本庶博士、生体内分子の動的変化を可視化する技術を発展させた宮脇博士など、生命科学の技術革命に大きく貢献した著名な研究者と一緒に、バイオテクノロジー及びメディカルテクノロジーの革命的進歩がもたらす明日の人間社会について考えてみましょう。

「エレクトロニクス」

2日目2016.07.10

基礎科学部門「数理科学分野」

数学は、抽象的な数や構造を対象とする科学です。そのため現実の世界との関わりが薄いと考えられがちですが、実際には社会を支える基盤技術として至る所で使われています。同時に数学は、あらゆる科学の深層に潜む構造を捉える手段であり、数千年の歴史を持つにも関わらず常に新しい領域が開拓され続けている活動的な科学でもあります。このような現代数学の最前線に立つ数学者は、どのようなことを考えて活動しているのでしょうか。数学を創り出す数学者の創造的思考とその現代の世界との関わりについて考えます。

「数理科学分野」

思想・芸術部門「美術分野」

直視にたえない過酷な現実に直面して、私たちは数値や事実を通して客観的に認識するだけではなく、主観的で感性的な経験としても解釈することによって、それを個的な生の文脈へと接続しなければなりません。その方法を真剣に探求することが、美術という活動の重要な役割のひとつであると言うことができます。このセッションでは戦争や原爆、巨大な暴力と破壊に対して芸術はいかにして向き合い、それをどのように表象することができるのかを、具体的な作品を通して考えてみたいと思います。

「美術分野」

登壇講師

石内 都(写真家)
「写真の現在/遺された物たちの今を撮る」
ゾフィア クリク(美術修士、写真家) ※ビデオ講演
「戦争から遠く離れて…私は戦慄する」
マリーナ グルジニッチ(スロべニア科学芸術アカデミー学術研究センター哲学研究所リサーチアドバイザー/ウィーン美術アカデミー教授)
「人間、そして生と死 ―科学、哲学、芸術の面から考える」

クロージング・セッション

「シンポジウムの総括と将来展望
-統一テーマの視点から-」

クロージング・セッション

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